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Apr.

2024

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11 Aug. 2021
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「自分らしさ」を発揮できる組織のつくり方とは?

鈴木陽子
ストラテジスト/PRプランナー
鈴木陽子

コロナ禍になって早くも1年半が経過した。未曽有の状況下に陥り、働き方を変える必要性に差し迫られた人も多くいる中、一部の企業においてはリモートワークの導入が進み、働く場所や時間の制限が緩やかになった会社員も増えていることだろう。

「1カ所に皆が集まって同じように働く」ことがノーマルで、ワークスタイルの選択肢が限られている場合と比較すると、多様な働き方が認められるようになることは、組織の中で多様な人たちが活躍できることにつながっていく。

多様な人たちが活躍できる環境を整え、異なる価値観を持つメンバーを1つのチームにまとめて組織のパフォーマンスを上げていくにはどんな仕組みや工夫が必要なのだろうか。6月26日(土)に実施されたMASHING UPによる「Women’s Well-being Updates 2021」で行われたセッションでは、クロスカルチャーの取り組みにおいて先進的な企業であるアクセンチュアとユニリーバ・ジャパンの取り組みについてお話を伺うことができた。


(写真左から、アクセンチュア株式会社のグイネス・ロイドジョーンズさん、モデレーターを務めた白河桃子さん、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社の河田瑶子さん)

 

行動することで意識の変化を起こしていく

まず冒頭で紹介されたのは、外資系の総合コンサルティング会社であるアクセンチュアの取り組みだ。あらゆる属性の社員に対して平等な職場環境になるために「インクルージョン&ダイバーシティ」へのコミットメントを実践していることでも有名なアクセンチュア。同社は、今年の5月に発表された『日経WOMAN』による「女性が活躍する会社BEST100」の総合ランキングでも初の1位を獲得し(*)、「女性が働きやすい会社」を目指す取り組みにおいても積極的な企業の1つである。

同社の「インクルージョン&ダイバーシティ」推進の取り組みの一つとして、グローバル全体で2025年までに社員の男女比率を50%に引き上げる数字目標を掲げている。それを各国のバックグラウンドに応じて目標を落とし込み、具体的に行動を起こしていくのだ。

なぜ、数字目標を掲げるのか?アクセンチュアのグイネス・ロイドジョーンズさんは次のように考える。

“意識を変えてそこから行動を変えていくのは、言うのは簡単なのですが、実際にはすごく難しくて、なかなか行動が伴わない。数値目標が後押しとなり、具体的なアクションを取る。そして実際に女性が増えていくことによって、私たちの意識も変わってきました。”

 

ロールモデルの多様化の重要性

アクセンチュアで女性活躍支援の取り組みが開始されたのは、約15年前にさかのぼる。最初は「女性特有の悩みについてどう取り組んでいくか」というところから始まった。

今では女性活躍だけではなくクロスカルチャーの試みも進んでおり、1年に1回「クロスカルチャーデイ」を設定し、外国籍のメンバーが困っていることを知って貰ったり、自分のプロジェクトにいる外国籍の社員に「もっとこうして欲しい」という内容を日本人の社員から発信したりするなどして、お互いの溝を埋めていく活動をおこなっている。

このような取り組みの成果の1つは、ロールモデルの多様化だ。女性や外国籍の社員が管理職となる例が増えていった結果、以前は男性の管理職が多かった職場に様々な管理職のタイプが存在するようになり、その中で自分がなりたいロールモデルが見つけやすくなっているとグイネスさんは語る。

また、社員の働き方という面でも、コンサルティング会社の特徴として捉えられていた長時間労働の改善に取り組み、効率的に働いて成果を出すということに会社としてシフトしつつある。

この残業時間の削減を目指していく取り組みにおいても、重要な気づきがあったという。誰もが時間の制限がある中で成果を出す必要がある条件下に置かれるようになり、時短勤務の社員が実践してきた「短時間で成果を出す方法」が他の社員の見本になったのだ。社内に様々なタイプの社員がいることで相互啓発が進んだことを、このエピソードは示しているように思う。

 

パーパスに基づいて、社員の「自分らしさ」を尊重する

続いて紹介されたのは、「サステナビリティを暮らしの“当たり前”に」というパーパスを掲げてESG経営やSDGsを積極的に推進してきたユニリーバ・ジャパンによる、多様性に関する取り組みだ。

ユニリーバ・ジャパンの河田瑶子さんは、企業にとっての「多様性の尊重」は、世の中の流れに押されて“やらなければいけないこと”ではなく、利益を出したり経営を拡大したりするための戦略の1つとして推進されているのではないかと感じている。

その背景にあるのは、ターゲットのニーズの多様化だ。ターゲットのニーズが細分化されている中で、企業としてどうやってそれらのニーズにもれなく対応し、商品・サービスを提供していけるのか。この課題に対応するためのキーとなるのが、「多様性の尊重」なのである。

具体的には、社員の多様性を尊重するために、働く場所や時間を社員が自由に選べる「Work from Anywhere and Anytime」という制度をコロナ禍以前から取り入れていた同社。現在では更に副業も可能になるなど、会社のハード面が変わりつつあり、社員の自由度はより一層増しているという話が紹介された。

このような状況において、「自分らしく働く」とは何を意味するのかを考えることは、会社員が新たに向き合うべき課題だと感じているという河田さん。

“今まで「会社ではこういう風に働いているのがノーマルだよね」という基準があったところから、柵が外れて「さぁ自分らしく働きなさい」となった時に、「自分らしくって何?」と迷子になってしまう人が多いのかなと感じています。個々人の中で改めて「私にとっての自分らしく働くって何なんだろう」ということを振り返るいいポイントにきていると思っています。”

 

「何のために働くのか」については、就職活動の時以外に考えることはそう多くないかもしれない。しかし、パーパス・ドリブンな企業として知られるユニリーバでは、企業やブランドのパーパスだけではなく、社員個人のパーパスも重要視し、「何のためにこれをやっているのか」「あなたはこの会社にいてハッピーなのか/やりたいことができているのか」を問われるカルチャーがあるという。

“パーパスがある人は成長する。個人としてのパーパスがないと結局会社に潰されちゃうと思うんです。自分がやりたくないことをやらされてモチベーションが下がっていって、心にも悪いし健康にも悪いしということになってしまう。”

パフォーマンスカルチャーで結果を出さなければならないからこそ、社員の自分らしさやパーパスを尊重することで、個人のポテンシャルをチームのために最大限引き出していく。ユニリーバ・ジャパンでは従業員に対してもパーパス・ドリブンなコミュニケーションを実践することによって、企業と個人の双方がハッピーになる関係を築くためのカルチャーが浸透していると言えそうだ。

 

社員の多様性を尊重したその先にあるもの

ここまでアクセンチュアとユニリーバ・ジャパンによる多様な人材に活躍してもらうための取り組みに触れてきたが、その多様な人材が持つ価値観の違いを、チームとしてまとめてポジティブな方向に活用していくために、両社ではどのような工夫がされているのだろうか。

アクセンチュアのグイネスさんは、多様性を尊重できるリーダーが、仕事の目的を達成するためにどの方法がいいのかをフラットに見て決めることが大切だと話す。

“何か一つが絶対というわけでもないし、悪いわけでもない。どちらかが否定されたとか正しくないということではなくて、公平にオープンに話していけば分かりあえるのではと思います。”

続いて、ユニリーバ・ジャパンの河田さんは、パーパスに繋がる部分で、目的や存在意義、「何のためそれをやるのか」がクリアであることの重要性を説いた。

“様々な意見がある中で、ジャッジする人が「この目的だからこの判断基準であり、それに合った手段はこうだ」というところを、オープンに話せば、そんなにネガティブな雰囲気になるというのはないのかなと思います。”

両社に共通しているのは、初めから「こうあるべき」と決めつけるのではなく、意見を出しやすいオープンな状況を作って様々な意見をメンバーで出し合った上で、組織の「目的」に照らし合わせた判断をしていくという点だと言うことができる。

 

自分らしさを発揮しながら組織に貢献することを目指して

社員の多様性を尊重する取り組みは、社員側だけにメリットをもたらすものではない。多様な人材が持つ多様な価値観を組織の中で活用していくことで、組織全体のパフォーマンス向上につなげていくためにおこなうものだ。企業が社員の多様性を尊重していく仕組みを整えて工夫を重ねていくことで、性別や国籍の違いにかかわらず、各々が属性に捉われずに自分らしさを発揮して組織に貢献できるようになり、結果として組織としても成果を上げていくことができるのだ。

組織のパフォーマンス向上という目的に対して、貢献する手段が一様だった時代と比較すると、決まったスタイルがないことは社員個人にとってはかえってやりにくいと思うこともあるかもしれない。ただ、あくまでも仕事の目的に対して自分なりの貢献の方法を考えて生み出していくことだと捉えれば、「自分らしく働く」という新たに直面した課題もやりがいのあるものだと感じられるようになるかもしれない。

社員一人ひとりは自分らしい働き方ができるようになり、組織にとっては多様な価値観を取り入れる機会が増えてチームのパフォーマンス向上につながっていく。そんな状態が実現すれば、個人と企業の間で相互にメリットのあるこれまでにない関係を築くことができるのではないだろうか。

(*)https://www.nikkeibp.co.jp/atcl/newsrelease/corp/20210507/

<イベント概要> 

Women’s Well-being Updates 2021
「チームの中で『自分らしく』はどう作る? クロスカルチャーが叶える豊かなチーム」

登壇者:
河田瑶子さん(ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング グローバル ブランドマネージャー)
グイネス・ロイドジョーンズさん(アクセンチュア株式会社 テクノロジー コンサルティング本部 マネジング・ディレクター)
白河桃子さん(相模女子大学大学院 特任教授、昭和女子大学 客員教授、東京大学 大学院情報学環客員研究員)

主催:MASHING UP実行委員会(株式会社メディアジーン、mash-inc. )
開催日時:2021年6月26日(土)
開催方式:オンライン開催(YouTube)
特集サイト:https://www.mashingup.jp/feature/womens-well-being-updates2021/

取材・文: 鈴木陽子
Reporting and Statement: yokosuzuki

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