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Oct.

2024

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21 Dec. 2020

【レポート】MASHING UP Conference vol.4『Well-being&Me』自分を大切にするってどういうこと?

國富友希愛
コミュニケーション・プランナー
國富友希愛

多様な人がそれぞれに幸福に生きられる「インクルーシブな社会づくり」について考えるプロジェクト、MASHING UP。

第4回カンファレンスでは、“Well-being”をテーマに、様々な分野で活躍するスピーカー陣による多彩なトークセッションが展開された。

cococolorでは、参加を通じて得た学びを、レポートとして記事化させていただく。

 

■自分を大切にするってどういうこと?

「自分を大切にしよう」というスローガンを見た時、あなたは何を考えるだろうか?

・自分のことばかり考えるのは、わがままなのでは?

・大切にしたいと思うが、多忙な生活の中でその状態を維持することは難しい。

・大切にするということがどういうことかわからない。

・自分を大切にすれば、何がどう変化するのか?

etc.

「自分を大切にするってどういうこと?」のセッションでは、そういった疑問を検証するべく、検証骨形成不全症という骨の折れやすい障害を持ち「ママは身長100cm」の著者でもあるコラムニストの伊是名夏子氏(写真右)、周囲の人や刺激に敏感な気質であるHSP(Highly Sensitive Person)専門カウンセラーの武田友紀氏(写真下)、Fermataの中村寛子氏(写真左上)をモデレーターにワークショップが開催された。はじめに、武田氏により「HSP」についての説明がなされた。

中村氏(左上)/伊是名氏(右上)/武田氏(下)

©MASHINGUP

 

■HSPとは?

HSPとは、Highly Sensitive Personの略であり、直訳すると「とても敏感な人」のことである。これは病気や発達障害ではなく生まれ持った「気質」で、5人に1人がHSPであると言われている。「繊細」という言葉を聞くと「おとなしい」というような印象を抱きやすいが、よくしゃべる人や活発な人など多様なHSPの人がいる。最近ではテレビ番組のテーマで取り上げられたり、芸能人でHSPを公表する人がいるなど、HSPが身近になりつつある。武田氏はHSPを「繊細さん」と呼んでいる。

 

■繊細さんの4つの性質

武田氏「繊細さんのことを、クッキーのお土産で例えてみたいと思います。クッキーのお土産が会社にあったとき、すぐに食べる人、食べない人、さまざまな反応があると思いますが、繊細さんは、クッキーを見たその瞬間に深く考えます。チョコ味が余りそうだからチョコ味を食べようかなとか、○○さんが今日居ないけどクッキーは日持ちするから○○さんの机にも置いておこう、というようなことです。」

HSPには、4つの性質があり、上記の「深く考える」他には、「過剰に刺激を受けやすい」「感情反応が強く、共感力が高い」「ささいな刺激を察知する」ことが挙げられる。それにより、光や音や環境から過剰に刺激を受け疲れやすかったり、ささいな刺激を察知し違いに気づく。他者の痛みや喜びにも、よく気づき共感しやすい。HSPは多くの人が感じていることを、人一倍感じて生きている。HSPがどのような人と共に過ごし、どのような職場で働くかということは、「自分を大切にする」という観点において重要である。

■心の声を封じると身体に出る

中村氏「HSPの書籍を読んでいて、自分がそういう気質であるとに気づいたものの、繊細さを弱さのように感じ、受け止めにくかったです。HSPが、がんばりすぎやすいということはありますか。」

武田氏「がんばりすぎによる不調は、身体に出ます。例えば肩こりがするとか。心と頭と体は“一体”なのですが、心は忙しいと言っているが頭が甘えるなと言っている、そして身体は無理して頑張るという場合、身体に症状がでることが止まらないんです。会社に行けないとか、肩がこって仕方ないとか。」

中村氏「PCを触る指が震える、という症状が出たことがあります。自分の心や体の辛さを自覚する方法はありますか。」

武田氏「身体に症状があるのは、心に異変があることが関係しているからではないかな、と意識すると変わってくると思います。『身体が動かない→動け』ではなく、どうしてそうなっているのかな?もうやめてというサインかな?と感じることです。」

■イヤがいえないと行き詰まる

中村氏「なるほど。障害の有無を抜きにして、伊是名さんはご自身を愛しているというイメージがあります。自分を愛することは難しいにも関わらず、伊是名さんはどのようにご自身と向き合われていますか。」

伊是名氏「私はまず、人はひとりでは幸せになれない、どんな人も関係性の中で幸せになる、と考えて人に頼るようにしています。過去に入退院を繰り返すなかで、家族以外の人や社会と断絶されることを経験したことで、誰かに『助けて』と言うことと、味方をもつことの大切さを実感しました。助けてくれる人は多ければ多い方がよい、様々な人とつながらなければと思う中で、味方が増えるようになっていきました。インターネット上ではバッシングを受けることもありますが、共感してくれる人や応援してくれる人ともつながることができると考えるようにすると、ネガティブにならずにいられます。」

中村氏 「味方をつくるときに、迷惑をかけたら嫌だな、わがままと思われる、裏切られるという感情はありませんか。」

伊是名氏「過去には、障害が面倒くさいと身近な人に言われ、落ち込むこともありましたが、もしもより多くの助けがあって、多くの設備が整っていたら面倒ではなくなることで、私のことが嫌いだからそう言っているわけではない、と思うようにしてきました。『頼る』とはある意味人をつなげるものであると思います。だからこそ、自分からこの人と一緒に行きたい、やりたいと選び、思いを伝えるようにしています。現代では電車の席を誰かに譲ることなどで、拒否されたらどうしよう、とためらいを感じる人がいると思いますが、一度声をかけてみてください。断られてもあなたの責任ではありませんから。」

中村氏「断ることの要因は、断られた人ではなく断る人の事情によるという発見があります。」

武田氏「日本では自分を蔑ろにしてまでも『周りの期待に応える』という風土があると思います。それでは人は行き詰ってしまいます。休んだほうがいいけど休めない…ということを繰り返し行き詰った際は、なんで行詰ったのかな?どんな背景があったのかな?自分の本音をどうすれば感じられるかな?と、カウンセリングなどを通して見つけながら、自分を大切にしていく道筋をみつけていくと良いと思います。社会に応える自分、自分を大切にする自分、を何度も行き来して経験しながら、相手に応えすぎず、自分のやりたいように生きられるようなバランスを見つけることが大切です。行き詰る背景の一つに、イヤの言えなさがあります。イヤだ!という自分の正直な気持ちをそのまま受け止めてみるのも大切かもしれません。」

 

■行き詰まったときは観察する

参加者質問「HSPの行き詰まりと鬱は何が違うのですか?」

武田氏「行き詰りの一つのパターンとしての鬱、というものはあると思います。HSPと鬱がどう違うのか?というと、繊細さと神経質は別物で、繊細さは自然にしてておこることで、神経質、不安障害、というのは後天的なものです。自然な状態でそれが起こっているのか?不安があって起こっているのか?で、二つを見分けることができると思います。」

参加者質問「5人に1人がHSPと言われていますが、私自身にその特性があり、我が子も繊細だと思ったときに、どんなサポートをすればいいのでしょうか。」

武田氏「ご自身もHSPということであれば、繊細なお子さんのお気持ちもわかりやすいと思います。その子の感じ方で良いのだと思います。繊細なお子さんの中には、服のタグを切ってほしいという特性があったり、大勢の前での発表が苦手だったり、周囲に『気にしい』という扱いをされることがあります。素の状態で感じていることを気にしすぎだと決めつけられると、自分が何を好きで、何を嫌いかがわからなくなってしまいます。自分ではなく、人の反応が判断基準になってしまうのです。自分の心を基準に、その子の感覚を当たり前のこととして受け止めるのが良いと思います。」

中村氏 「最後に、自分を大切にするヒントをお一人ずつお願いいたします。」

伊是名氏「失敗や挫折がある中で、寝る前に自分のことを、肯定的に、しっくりくるように褒めて、寝るようにしています。」

武田氏「身体の状態をよくみておくことです。人はどんな悪いときも良いことをみつけようとすることが多いです。肩が凝りストレスを感じているけど私は恵まれてる、ではなく、これが嫌だというところを見つめて、イヤを認めると、次はどうしようかな、に繋がります。すると、自然にいいところが見えてくる。イヤを怖がらないのが良いのではないでしょうか。」

 

■HSPチェックリスト

http://hspjk.life.coocan.jp/selftest-hsp.html

HSPの提唱者であるDrアーロンのセルフチェックテストを試してみると私もHSPであった。中村氏、伊是名氏、武田氏のお話はとても興味深く、今回のセッションでは“繊細さん”に限らず、WELLBEINGを自分事化するヒントを「自分を大切にする」という切り口で得られたのではないかと思う。自分ファーストを蔑ろにしすぎると、人は行き詰ってしまう。心の声を無視せずに、正直なイヤという気持ちを否定せずに受けとめ、自分をケアするのを後回しにしないようにしたい。

取材・文: 國富友希愛
Reporting and Statement: yukiekunitomi

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