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17

Dec.

2018

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24 Jul. 2018

「食べてみる」ことから知る世界の多様性 ~中華料理編~

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「食べてみる」ことから知る世界の多様性は、「食文化」を通じて世界の多様性に触れることをテーマとした連載シリーズです。第一弾は、ストラテジック・プランナーとしてダイバーシティ&インクルージョンの業務に関わる水越がお届けします。

日頃、多様性領域の業務に携わりながらも、実際の体験によって多様性を感じるプログラムとして、このシリーズをスタートさせることにしました。というのも、食文化は人々の生活と密着した関係があります。食文化と人間の誕生は同時に発生し、人類社会の発展によって食文化も発展してきました。食文化の研究に基づいて、国民性も探究できると言えると考えます。つまり、異国の食文化を体験することは、「多様性の理解する」といった意味で、深い意義をもっていると捉えています。


馴染みがなかった”虫”という食べ物との出会い

日本に暮らすなかでなかなか口にしないものから食べてみようと思い、周囲にヒアリングをした結果、個人的にややハードルの高い挑戦ではありましたが、中華料理で食されることのある“虫”を食べにいくことにしました。店舗は、食に詳しい方から教えて貰った「上海の人たちが、いつも食べている物をそのままの調理法で」といったコンセプトを持つ中華料理屋を選びました。

炒飯や麻婆豆腐、餃子や小籠包といった日本でも良く食卓に上がるメニューに加えお願いしたのは、「蜘蛛の揚げ物」、「蜂の幼虫」など昆虫を始めとする中華料理の数々です。

今回は、蜘蛛・豚の脳みそ・蜂の幼虫にチャレンジ

今回は、蜘蛛・豚の脳みそ・蜂の幼虫にチャレンジ

食べてみた感想としては、まず普段食卓で出会うことのない光景にたじろぎ、初めて味わう触感と味覚に驚きを隠せませんでした。同行したメンバーのなかには、中国在住経験のある者も2名いて、そのうち1名が全く驚きもせずに積極的に食べている様子を目の当たりにし再度驚き、食文化に対する先入観や慣習というものについて改めて考える機会となりました。

 

昆虫食は、世界のマイノリティなのか?という疑問

私自身には馴染みがなく経験してもなお、積極的に受け入れられない昆虫食でしたが、なぜ中国の一部で食用とされているのか疑問に思い、その背景や実態をリサーチしました。

結果、日本ではあまり耳にしない昆虫食は、海外ではむしろ食文化の一つとして肯定的に受け止めていることがわかりました。海外ではアジア、アフリカ、南米を中心に約20億人が1900種類以上の昆虫を食べていると言われており、昆虫は世界的に一般的食文化のようです。

そして、世界で多く消費されている昆虫は、多い順に甲虫(32%)、芋虫(18%)、ハチ、狩ハチ及び蟻(14%)、バッタ、イナゴ及びコオロギ(13%)などです。

出典 AGRI in ASI

出典 AGRI in ASIA

食用にしているエリアとしては、中国が目立ちますが(広東省においては「4本足、机以外は皆食べる」という言い回しがあるそうです)、世界各地で昔から食料資源に乏しい地域において昆虫を重要なタンパク源として食文化にインクルージョンしてきたようです。

 

今、再注目の昆虫食!

そして、今、世界では再び昆虫食が注目され始めています。

2013年、国連食糧農業機関(FAO)が昆虫食を推奨する報告書を発表しました。地球上には食用可能な昆虫が1900種以上存在し、既に数百種がさまざまな国の食卓に上がっているというデータがあります。

出典 FAO昆虫食報告書”Edible insects Future prospects for food and feed security”

出典 FAO昆虫食報告書”Edible insects Future prospects for food and feed security”

では、なぜ世界的に昆虫食が注目されており、国連までもが昆虫食を推奨しているのでしょうか? その最も大きな理由には経済的な食糧事情があるようです。

一般的に、食材となる動物や植物の育成はコスト(原価)とベネフィット(利益)の兼ね合いが大前提となります。育成が難しく出荷量が少なくなる食材は、コストが高くベネフィットが薄いと言えます。食べる機会が少なければ、売れる機会も少ないため利益に繋がらないのです。

その点において、昆虫は熟練した人ならば最小限のコストで量が揃えられ利益を最大限に確保することが出来ます。もちろん、昆虫食の対象になる昆虫にもコスト高でベネフィットが薄いものもあります。しかし、それでも昆虫食は充分に利益を出せる食品であることには変わりないのです。昆虫の種類にもよりますが、概ね昆虫肉1kgの生産に2kgの飼料が必要なのに対し,牛肉を1kg生産するためには8kgもの飼料が必要なのです。

飼育においても、昆虫は牛のようにメタンガスなどの温室効果ガスを排出せず、成長が速く、水や餌が少なくて済み、畜産ほどに場所を取りません。また、昆虫は人間が食べない生活廃棄物を餌にすることができ、家畜の飼料としても使用できます。

出典 NPO法人食用昆虫化学研究会

出典 NPO法人食用昆虫化学研究会

 

ますます広がりゆく昆虫食の市場規模

栄養価が高く、生産効率も良く、環境にもやさしいことから注目されつつある昆虫食は、市場規模としても成長しています。

フランスでは、ここ数年で昆虫食を製造する企業が140社以上設立されました。アメリカでの昆虫食品の市場は、今後5年で5000万ドル(約53億円)以上の市場規模に達すると見られています。さらに、韓国政府は、2020年には昆虫産業の市場規模を7000億ウォン(約721億円)に拡大し、このうち昆虫食品の市場規模を2000億ウォン(約206億円)以上に育成する計画だそうです。

最後にEUでは今年の2018年から「昆虫食」の取引が自由化されました。

食用昆虫、もしくはこれを原料に含む製品が、全EU加盟国で自由に取引できるようになるということです。これを受け、イタリアでは人々がどのくらい昆虫食を食べる準備ができているかを調査したようなのですが、調査を受けた人々の約半分、47%の人々は取引自由化に賛成し、昆虫を食べることに関しては、28%が「食べるつもりがある」と答えたそうです。

 

日本で昆虫食は受け入れられるのか

多様性の理解が進みつつある中、日本でも昆虫食が広がりを見せていくのも時間の問題なのかもしれません。

例えば、日本人も海外で暮らす方が驚くような食文化を持ちます。

タコやウニ、ナマコ、ワカメ、白子といった海産物や、鶏卵を生のまま食用する文化に驚かれることも少なくありません。しかし、日本食の世界的普及によって、これまで手を伸ばさなかった人たちも日本食の文化に触れ理解を示し、場合によっては好んで常食するようになる傾向もあります。

これまで、日本では一部地域を除いて、日常的な昆虫食はありませんでしたが、これは人口の大部分が昆虫から充分な栄養分をまかなえるだけの供給機構が構築されていないことと、他の食材が豊富であったためと考えられます。しかし、食料自給率の影響や、持続的環境配慮という点で昆虫食が議論される日が遠くないかもしれません。

そのときには、昆虫をそのままの姿で食卓にのせるのではなく、粉末やペーストにしてスープに入れるなど、一般の人達に受け入れられやすいように工夫していく必要があるかもしれません。

また、日本で最近、”COMP”という完全食が発売され、話題となりました。プロテインのような飲み物で一食分の栄養素すべてを摂取できるという商品です。クラウドファンディングで順調に資金調達を進め、一気に市場へ展開しています。

出典 COMP公式サイト

出典 COMP公式サイト

完全食は日本の忙しい現代人の「時間がないときでもしっかり栄養を摂取したい」ニーズをつかんだ成功例ですが、「栄養を摂るための義務としての食事」と「味わって食を楽しむための食事」といったように、目的に応じて食事の意味合いが変わっていくことも今後起きうるのではないかと思います。栄養的にメリットの大きい昆虫食は完全食のような立ち位置で日本文化に食い込んでいけるのではないでしょうか。

国内で多様性への理解が促進される現在、食文化についてもあらゆる可能性が検討される時代に向かうのだと感じています。個人の食卓の話に留まらず、国内の食品メーカーをはじめとして企業がはこのマーケットに注目する日も近いのかもしれません。

今回一緒に食文化体験に行ったメンバー。左から岸本、栗田、水越、半澤、江口

今回一緒に食文化体験に行ったメンバー。左から岸本、栗田、水越、半澤、江口

私も今回の食文化体験を通して、自分の食に対する価値観と改めて向き合っただけではなく、多様性を知って、マーケットの可能性にも気づかされました。

今後も様々な食文化を「食べてみる」「データを分析してみる」「行事に参加してみる」などあらゆる切り口からレポートしていく予定です!

取材・文: 水越寛文
Reporting and Statement: mizukoshi-2
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