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26 Jul. 2019

ビジネスに繋がるD&I推進:VRやってみたい!をきっかけに 下河原さん×東さん対談

石田温香
デジタルプランナー
石田温香

株式会社シルバーウッド 下河原忠道さん×アクセンチュア株式会社東由紀さん 対談
アンコンシャスバイアス・心理的安全性の社内実践セミナー
~ダイバーシティを感じ、インクルージョンを自分ごと化するには~

前回の『VRと考えるこれからのダイバーシティ。認知症がある人になりきってみて』で取材を行った株式会社シルバーウッドの代表取締役下河原忠道さんと、前職から長年ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)に関わってきたアクセンチュア株式会社人事部東由紀さんの対談型セミナーが6/20(木)に開催されました。

様々な業種の30社45名のD&I担当部署・人事部の担当者や社長が参加した本セミナー。

当事者目線を体験できるシルバーウッドのVR『VR Angel Shift』を既に社内で実施した担当者や、これからD&I研修を取り入れる担当者まで、D&I研修に対してそれぞれ課題を抱え、悩む方々が集まりました。

対談の前には下河原さん・東さんからのプレゼンや、VRを体験する時間が設けられるなど、セミナーのテーマを会場全体が十分に理解した状態で対談が始まりました。

対談では『VR Angel Shift』の活用法だけでなく、社員が安心して発言しやすい心理的安全性が確保された職場作りについてお二人の意見を伺いました。

株式会社シルバーウッド代表取締役 下河原忠道さん

アクセンチュア株式会社人事部シニア・マネージャー 東由紀さん

 

「やってみたい!」から自分ごと化するツール

本セミナーでは『発達障害 視覚過敏編』を体験した

本セミナーでも体験することができた『VR Angel Shift』。VRの装備を目の前にすると好奇心が湧き、思わず覗いてみたくなりました。

東さん「『それって何のためになるの?』と聞く人はある程度興味を示しています。だけど『自分と関係ない』と思っている人に自分ごと化してもらうことは難しい。

VRはまずやってみたいという気持ちになりますよね。
必須だと言われて研修に参加しても『その場にいればいい』と思っているだけで、内職をしている人が出てきます。しかしVRは目の前の映像に集中しなければなりません。だからこそ、無関心層へのアプローチにとても有用だと思います」

 

VRはあくまでも一つの手段

下河原さん「VRを見たからD&Iのことをわかったというのは絶対に嘘だと思います。VRを体験して、それぞれの人が感じたことを大切にしてほしいです」

『VR Angel Shift』は認知症がある人やレズビアンの人などの視点を体験でき、非常に没入感のあるクオリティの高いコンテンツです。VRでの一人称体験はD&Iを自分ごと化する一つのきっかけになるでしょう。

 

ビジネスを良くするキーワード『心理的安全性』

本セミナーにおける心理的安全性の定義は“考えや一次感情について、相手に気兼ねなく発言できる雰囲気があること”です。

企業内でD&I推進をする際に、『なぜD&Iの浸透が必要なのか?』を疑問視する声が挙がることがあります。ビジネスに直結することを説明できるかどうかはD&I推進担当者にとっては大きな課題です。

 

下河原さん「多様性が自然に生まれるように、畑違いの人間がチームを組むと心理的安全性が生まれると思います」

東さん「職場の心理的安全性が低いと、自分の考えを安心して発言することができないため、ビジネスの中で新しいアイデアが出て来にくくなります。アクセンチュアでは、ビジネスの場だけではなく、社内でデザインシンキングという手法を取り入れています。それぞれ様々な意見を持つ人たちが、平等に意見を出すことのできる仕組みです。例えばミーティングでアイデアを出すときに声高な人ばかりが話すと、他の人が意見を言いにくくなり、反対もしにくいということが起こります。それを回避するためにデザインシンキングの手法を使って、お互いを否定せずに色々な意見を出しながら、ミーティングを進めることができます。これにより、誰もが『言ってもいいんだ』と思える心理的安全性が保たれた場を意図的に作ることができます。
アクセンチュアでD&Iではなく、I&Dと言っています。職場に多様性があっても、インクルーシブな文化と環境がないと、多様性を価値にすることができない、だからインクルージョンを先に取り組むべき、という考えがあるからです。デザインシンキングの手法を取り入れるのも、そのような環境を作る工夫の一つです」

 

D&I研修はまず実践者から

社員全員に研修を導入するのは、予算や人的リソース等が障壁となり現実的ではありません。企業内にD&I研修を導入する際、どのレイヤーから始めると効率的なのでしょうか。

東さん「まずD&Iの実践者である、研修を導入する部署や人事制度を作り、運用する部署が第一だと思います。実践者がD&Iのそもそもの意味をちゃんと理解していないままで制度を作っても適切な運用ができません。さらに、関連部署や管理職に広げて行くと効果的です。
また、経営層の理解も重要ですね。その際、D&I の担当者自身が、なぜ当社にD&I が必要なのか、D&I はビジネスにどう影響するのかを理解し、説明できるようになる必要があります。それでも、D&I の重要性を説明しても、経営層がなかなか必要性を感じない、というケースもあるようです。そのような時に、『VRという面白いものがありますよ、体験しませんか?』といえば興味を持ってもらえかもしれません。そういう形でD&I について知るきっかけを作り、エンジンを回していくこともできると思います」

 

企業の現状に合った進め方を

最後に参加者同士で感想タイムが設けられました。

人事と別の部署でD&Iに取り組んでいる方は、「D&Iを広める順序を人事⇒管理職⇒現場というように人事から広めるということはしておらず、とても勉強になった」とおっしゃっていました。一方で、他の方からは「VRを体験してもらうまでの段階のゴール設定が難しい」という声も挙がり、企業ごとで現状抱える課題は様々でした。

今回はD&I研修における『VR Angel Shift』の活用法や、心理的安全性を確保することで誰もが発言しやすい環境に繋がるという学びがありました。心理的安全性については、ミーティングのような複数人の場所で発言する場合に有効なだけでなく、1対1のコミュニケーション(ex. 上司と部下との面談)の場で本音を引き出すためにも重要な考え方になると感じました。

D&Iを自分ごと化してもらうために『VR Angel Shift』などのツールを有効活用し、社員が多様性を理解した誰もが発言しやすい場作りをすることで、社内のビジネス環境を活性化していくことができるのではないでしょうか。

取材・文: 石田温香
Reporting and Statement: harukaishida

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