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Oct.

2018

interview
12 Oct. 2018

ゆるスポーツのできる過程を取材してみました! ~エモ鬼ができるまで~

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TECHNOLOGY MEETS DIVERSITYでは、「“新感覚テクノ防災訓練ゆるスポーツ”をやってきた」に続き、エモ鬼(EMO-ONI、以下エモ鬼)について取り上げてゆきます。今回は、その開発現場に迫りました。

 

日本の防災意識を高めるために、ゆるスポーツを

9月1日に発表されたエモ鬼は、「日本の防災意識が高まらない」という課題を解決する為に生まれたスポーツです。

はじまりは2016年末、「防災があたり前の世の中をつくる」ために活動をしている一般社団法人防災ガール(注2)の代表田中美咲さんと世界ゆるスポーツ協会の代表澤田智洋さんが「INSPIRE」というイノベーターカンファレンスで出会ったことでした。

 

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「あたらしい防災を提案するWebメディア」防災ガール

 

災害大国日本においては、日頃から個々人が防災の意識を持つ必要性がありますが、「防災」というワードを聞いても自分には無関係だと認識してしまう人が多いのが実情です。そこで、楽しみながら防災意識を高めるようなコンテンツ開発をしてはどうか?という声が上がりました。

また、防災ガールが根付かせたい意識として、「共助」に関する考えもありました。共助とは、その字の通り「共に助けること」。特に災害発生時に、子どもや妊婦さん・視覚障害者など逃げる事にハンデを持った人々をみんなで助け合うことを指します。

こうして、普段防災に関心が低い人も楽しんで共助の考え方を身に着けられるよう、ゆるスポーツ「エモ鬼」の構想が産まれました。

 

ゆるスポーツの作り方

ゆるスポーツ完成までの工程は、おおまかに下記のような流れとなります。

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ゆるスポーツの作り方

 

「みんなが楽しめる」ことを大切にしているゆるスポーツでは、ルールを分かりやすくする為、既存のスポーツや遊びをベースに作られたものが多くあります。エモ鬼でもどのスポーツをベースにするかの話合いから始まり、初期には「だるまさんが転んだ」を元にしたアイデアもありました。

tmd_6_3「エモ鬼」コンセプト画

 

このような話し合いを通じて、津波・地震を模したエモさんや、「避難地帯」に逃げるルールなど、随所で防災を意識できるよう工夫がされたゆるスポーツとなったエモ鬼。最初のアイデア出しから発表までは、およそ1年がかけられています。

「みんなが楽しめる」「課題を解決できる」というゆるスポーツの前提を達成する為、ひとつひとつ丁寧に考えられている事が分かります。

 

「完成のないスポーツ

世界ゆるスポーツ協会の大瀧篤さんに話を聞いたところ「ゆるスポーツに完成はない」と感じているそうです。

スポーツという形式ではあるものの、その目的は勝利ではなく、参加している人がみんなで楽しむこと。その為、事前にルールを確定させず、参加メンバーに合わせて柔軟に改編をすることもあります。

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ゆるスポーツクリエイター大瀧さん

また何度もプレイを重ねていくことで、新たな発見があり、競技をさらに面白くするためのルールの追加がなされることも。例えば穴のあいたラケットで卓球をする「ブラックホール卓球」では、とある参加者がラケットの穴にボールが通った際、「ナイスホール!」と叫んで笑いが起きたそうです。それからは球が穴に入ると「ナイスホール!」と褒めあう合うルールができました。

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ブラックホール卓球

「みんなが平等に楽しむことを目的とした」ゆるスポーツは、常に進化していくスポーツなのかもしれません。

 

体験会に参加してきました!

取材は会議室内に留まらず、今度は外に出て「エモ鬼」の体験会に参加しました!

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エモ鬼体験会の様子

ゆるスポーツを作る際は、ベースとなるアイデアができた後、実際に競技をプレイしながら、課題を発見しルールを調整していきます。

体験会では防災ガールの方も交えて「エモ鬼」の最終チェックを行いました。

 

「エモ鬼」では災害時の共助の考え方を体感してもらう為、目隠しや重石を持ってもらうなど参加者の一部にハンデが課されます。

ハンデを持つプレイヤーを他のプレイヤーが助け合う前提でのルールですが、想定以上にハンデを持った人がエモさんに捕まってしまう発見がありました。

その為、「エモさんは一度に一人までしか捕まえる事ができない」というルールを追加し、誰もが負荷なく楽しめるように調整されていきました。

 

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防災ガール代表の田中さん

併せて、実際の災害時にゆるスポーツでの体験を生かせるよう、防災ガールの方から災害時の課題を教えてもらいます。

例えば日本での災害発生時には子ども・障害者などの身体的ハンデを持つ方だけでなく、言葉が分からずコミュニケーションがとれない外国人も、避難先が分からない弱者となります。

「エモ鬼」では、大音量の音楽が流れるヘッドフォンをかぶることで、言葉によるコミュニケーションが取れない人の体験ができるようにしました。

 

「ゆるスポーツ」とテクノロジー

「エモ鬼」で鬼役のエモさんがLEDによって表情が変わる特殊なヘルメット「エモさんフェイス」をかぶるように、ゆるスポーツでは様々なテクノロジーを使ったスポーツが多く誕生しています。

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「エモさんフェイス」を開発した江國さん 

例えば、声を使って紙相撲力士を戦わせる「トントンボイス相撲」は、高齢者の「喉のリハビリ」をする機会が少ないという課題解決の為に生まれたゆるスポーツです。

参加者の声の大きさに合わせて土俵を振動させるテクノロジーを活用し、体力のない高齢者でも楽しみながらリハビリに取り組める工夫がなされています。

誰もが楽しめるゆるスポーツでは、運動神経や年齢といった垣根を越える為に様々な技術が活用されています。

 

また、ゆるスポーツ協会代表の澤田さん曰く、「優れていても利用シーンが限られる日本の技術は多く存在する為、それらを活用する場としても意欲的にゆるスポーツと掛け合わせていきたい」とのこと。

技術との組み合わせで、”楽しく”社会課題を解決する、ゆるスポーツの工夫が見受けられます。

 

笑顔になれるスポーツ

「エモ鬼」の開発背景を追う中で一番印象的だったのは、終始ほがらかな雰囲気の中、笑いながらエモ鬼についてアイデアを出すなど、開発者のみなさんが楽しんでゆるスポーツを作っている事でした。

オリンピック競技スポーツは選手の「早い・高い・強い」を重視していますが、ゆるスポーツでは「笑い」を重視しているとのこと。

楽しんでつくるからこそ、みんなで楽しめるゆるスポーツになるのかもしれません。

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注1:一般社団法人防災ガールとは

2011年の東日本大震災がきっかけで設立された「防災ガール」は、従来の避難訓練・防災グッズといった非日常の中での防災ではなく、「普段の生活」の中でできる防災を浸透させることを目標としてWEBメディアや商品プロデュースなどの活動をしています。

取材・文: Hirona
Reporting and Statement: hirona
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