cococolor cococolor

9

Dec.

2021

news
19 Nov. 2021

【国際男性デー】調査から見えてきた、男らしさのジレンマ

中川 紗佑里
プロデューサー
中川 紗佑里

今日、11月19日は国際男性デー

国際男性デーは1999年にトリニダード・トバゴで始まったと言われており、男性を祝福すると同時に、男性が抱えるさまざまな課題についての認知を上げることを目的としています。電通総研では、国際男性デーに合わせて「男らしさに関する意識調査」を実施しました。本調査は、ジェンダー平等の達成を目指して世界各地で活動をおこなうNGOのPROMUNDO(プロムンド)が2016年に実施した「The Man Box(マン・ボックス)」調査※1を、日本で実施したものです。マン・ボックス調査は、男性として生きることの意味や、男性が社会や周囲の人びとから感じる期待やプレッシャーなどを把握することを目的としています。

 

伝統的で覇権的な男らしさ、「マン・ボックス」

調査名に含まれる「マン・ボックス」とは、社会で広く受け入れられている、伝統的かつ覇権的な男らしいとされる行動や考え方を意味します。具体的には「男はタフであれ」「人に弱みを見せるな」「一家の大黒柱は男であるべき」といった、「男は○○であるべきだ」といった性別に基づく社会的な期待やプレッシャーのことです。

 

本調査では、プロムンドが開発した指標※2を用いて、回答者をマン・ボックス的な考え方に強く共感し、伝統的な男らしさを内面化した「マン・ボックスの中にいる男性」(IN)と、逆にマン・ボックスの考え方を拒否し、固定的な性役割に囚われない男性を「マン・ボックスの外にいる男性」(OUT)に分け、両者の意識や行動に違いがあるか分析を試みました。

 

米国、英国、メキシコの調査では、18~30歳の男性を対象におこなわれましたが、日本調査では回答者の年齢を広げ、18~70歳の男性3,000人から回答を回収しました。日本調査の年代別比較(18~30歳、31~50歳、51~70歳)や国際比較の結果は電通総研ウェブサイトで公開しているレポートに掲載しているため、この記事では、日本の18~30歳の若年男性に焦点を絞って調査結果の一部を紹介していきたいと思います。

 

マン・ボックスの中にいる男性の方が、ポジティブ感情や自己評価が高い

心理学的尺度「Positive and Negative Affect Scale」を用いて、ポジティブ感情を測定したところ、INの男性の方が、OUTの男性よりも高くなりました。また、自身の魅力について、1を「魅力的でない」、10を「非常に魅力的である」とする10段階で評価してもらったところ、魅力的である(6~10)を選んだ人の割合は、INで50.3%、OUTで36.2%と、INの方がOUTよりも14.1ポイント高い結果になりました。このことから、男らしさ規範を強く内面化している男性の方が、ポジティブな感情をもち、自己評価も高いことがわかります。

 

マン・ボックスの中にいる男性は、いじめや暴力の被害者にも加害者にもなりやすい

本調査では、直近1か月間におけるいじめや暴力の被害や加害の経験についても尋ねました。すると、INの男性の方が、OUTの男性よりも、リアルとオンラインの両方で、いじめや暴力の被害に遭遇していることがわかりました。しかし同時に、INの男性は、いじめや暴力の加害者になったことがある人の割合も、OUTに比べて顕著に高いこともわかりました。調査全体を通して、INとOUTで差があった項目は多くありますが、いじめや暴力についての項目は、その差が目立って大きくなりました。

 

 

マン・ボックスのジレンマ

これらの調査結果からは、伝統的で覇権的な男らしさ、いわゆるマン・ボックスのジレンマが垣間見られます。PROMUNDOのレポートでも、マン・ボックスの中にいることは、家族など周囲の人びとや社会の期待に応えているという満足感を与える一方で、いじめや暴力、そして孤独感ももたらすことが示唆されています。つまり、現在のジェンダー不平等な社会においては、いわゆる「男らしく」生きることの代償もあれば見返りもあり、それがマン・ボックスから出ることの難しさにつながっているのかもしれません。

 

マン・ボックスの外にいる男性は、ジェンダー平等に前向き

本調査では女性活躍推進施策への支持や、「性的同意」という言葉の認知についても聞いています。「女性活躍を推進するような施策を支持する」に対し、「そう思う」または「ややそう思う」と答えた人の割合は、OUTで72.3%、INで50.6%となり、OUTの方が21.7ポイント高い結果になりました。また、「性的同意という言葉を知っている」と答えた割合は、OUTで67.3%、INで58.1%の9.2ポイント差で、こちらもOUTの方が高くなりました。

もちろん性的同意は異性間だけではなく同性間の関係にも当てはまりますが、これらの結果からはマン・ボックスの外に出ている男性の方が、ジェンダー平等につながるような項目に対してポジティブな回答をする傾向にあることがわかりました。

 

男性のなかの多様性を無視して、INとOUTという2つのグループにカテゴライズするのは、やや乱暴な手法かもしれません。また、セクシュアリティの多様性を無視した、男女二元論的な議論になっているというご指摘も免れないでしょう。ただ、今回の調査結果から明らかになったように、伝統的で覇権的な男らしさ規範を内面化することが、さまざまなコストをもたらしうるということは注目に値します。

 

男性の解放は、女性の解放でもある

『Breaking Out of the “Man Box”』という本の著者であるトニー・ポーター氏は、「A call to men」というタイトルのTEDトークの中で次のように言います。

 

My liberation as a man is tied to your liberation as a woman.(男性としての私の解放は、女性としてのあなたの解放と結び付いている。)

 

ジェンダーは、男女の社会的・文化的な差異だけでなく、男女間の関係性のことも含みます。ポーター氏の言葉のように、男性が男らしさから自由になることは、女性が自由になることと表裏一体であると考えられるかもしれません。いわゆる「女性活躍」が女性の頑張りだけでは達成できないのと同じように、「マン・ボックス」も男性たちが自分の力だけで打ち破れるものではありません。ジェンダー平等を実現するためには、男らしさについての狭い見方を社会全体で変えていくことが重要です。

 

Photo by Tim Mossholder on Unsplash

 

※1:Heilman, B., Barker, G., and Harrison, A. (2017). The Man Box: A Study on Being a Young Man in the US, UK, and Mexico. Washington, DC and London: Promundo-US and Unilever.

※2:プロムンドでは、世界で共通して見られる代表的な男らしさの規範を、7つのテーマ(タフな振る舞い、固定的な性役割、攻撃性と支配など)と17のルールに分類。個々のルールにどの程度共感し、内面化しているかを測定して、スコア化する「マン・ボックス・スケール」と呼ばれる尺度を開発した。本調査でも同じ尺度を用いて、各回答者のマン・ボックス・スコアを算出し、回答者全体の平均より低い回答者を「マン・ボックスの中にいる男性」(IN)、高い回答者を「マン・ボックスの外にいる男性」(OUT)を分類している。

取材・文: 中川紗佑里
Reporting and Statement: nakagawasayuri

tag

関連記事

この人の記事