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Sep.

2021

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4 Jun. 2021

【ウェビナーレポート】最新フェムテック市場動向ご紹介! ~国内&海外フェムテック企業のビジネスモデル大解剖~

田中真輝
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
田中真輝

フェムテックをテーマにしたREMOTE engawa KYOTO。昨年9月に続いて2回目となる今回は、前回に引き続きPlug and Play Japan、そして新たに女性のウェルネスに関連した事業を展開するfermataを共催社として、幅広い事例紹介と熱い意見交換が行われました。非常に中身が濃く、すべてをここに網羅することが難しいので、今回は特に「フェムテックの歴史と国内外最新事例紹介(ビジネスモデル含む)」にフォーカスして、レポートさせて頂ければと考えています。

フェムテックの最先端では、「AI」「ビッグデータ」といったテクノロジーが、長くタブー視されてきた社会課題の解決に向かってドライブしていくための強力な武器となっています。その現状を目の当たりにして、改めてフェムテックとは、テクノロジーが、いかに社会全体の「幸福度」を高めていけるか、その検証が今まさに行われている熱すぎる現場なのだと感じました。

■フェムテックの歴史と市場概況

最新事例の紹介に先立って、まずはfermata株式会社の中村寛子氏より、その歴史と現在の市場概況について紹介がありました。

フェムテックという言葉は、女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決できる商品やサービス、を意味するだけではなく、女性の心身のタブー(固定観念や価値観)を変容させる「ムーブメント」でもある、と語る中村氏。

 

そもそもフェムテックという言葉は2012年、ドイツ人Ida Tinさんが月経管理アプリ“Clue”をつくるにあたって投資家たちを説得するために考え出したものだそう。そのスタートにあたっては、あたかもウェルネス産業の一分野であるかのような「カテゴリー感」を感じさせることが必要だったわけです。

そこから始まったClueが、今や190か国11億人が使用するアプリになっていることを一例として、フェムテック市場はその後、グローバルにおいても、日本国内においても著しい拡大を見せています。

 

(上記図中でグローバルが「社」、日本が「サービス」になっているのは、グローバルではスタートアップ企業が多いこと、日本国内では既存企業が自社の1事業として参入するケースが多いことを反映している)

 

フェムテック市場の成長に沿って、サービスの対象範囲も拡大。

 

大きく4つの波で拡大してきた経緯の一例として、2019年のCESの「アワード剥奪」事件が紹介されました。(出展されたセクシャルウェルネスのアイテムがイノベーションアワードを受賞したが、当時の運営団体がこれを取り消したことで議論が巻き起こった。最終的に運営は改めて受賞を認め、2020年にはセックステックスタートアップの出展と賞のエントリーを認める方針を発表した)

 

市場規模の拡大も目覚ましく、fermataが算出したフェムテックの国内予想市場規模は1.4兆円。(筆者追記:これは国内の靴の市場規模に匹敵する大きさ)

この市場拡大の理由の1つに挙げられるのが「生涯月経数の増加」。女性の社会進出が進む一方で、その「副作用」とも言える女性のウェルネスに関する問題が顕在化し始めたことが、フェムテック市場拡大の背景にあると中村氏は言います。

 

ただ、それでもいま顕在化されている問題は氷山の一角に過ぎないことも事実。

長くタブー視されてきた領域だからこそ、まだまだ多くのペインポイントが水面下に隠れている。ウェビナー中、電通奥田氏からも出た話ですが、女性のウェルネスについての問題は「我慢して自分の中にとどめておくべきこと」というタブー意識が根強く残っており、それを解消していくためにもフェムテックへの関係人口を増やし、市場を拡大していくことが重要だという発言がありました。

 

もう一つ、フェムテック市場拡大の背景にあるのが「フェミニズム」の動き。

2000年以降のフェミニズム4つめのウェーブとして「自分の心身に対するオーナーシップ意識」が高まっていることが、フェムテックムーブメントと呼応することで、市場への注目度や参入が拡大している、これは海外だけではなく、日本でも同じであるという話でした。

個人的に思ったのは「コロナ禍」によって、世界中の人々が一度立ち止まり、自分にとって本当に必要なものは何か?と考えることを余儀なくされている今、すべての人にとって「自分を改めて理解する」というモチベーションが高まっているのではないかということ。フェムテックムーブメントは、そうした世界的な機運とも呼応しあって、今後さらに大きなうねりになっていくのではないかと感じました。

 

■海外事例紹介とビジネスモデル大解剖!

続いて、電通でFemtech and Beyondチームを推進する奥田涼氏と中村氏による、事例とそのビジネスモデルについての紹介へ。

  • 月経周期アプリのマネタイズ:「Clue」「ルナルナ」の事例

https://helloclue.com/ より

 

まずは前出の「Clue」のような月経周期アプリについて。大きく分けて2つのビジネスモデルが存在しており、それが「完全フリーミアムモデル」と「広告型フリーミアムモデル」。簡単に言えば「広告があるか、ないか」。

完全フリーミアムモデルである「Clue」はシンプルに機能特化型のインターフェイスであるのに対し、広告型フリーミアムモデルである「ルナルナ」は記事・読み物が多い。

「広告型」の場合はメディアとしてPVを稼ぐことで、マネタイズを強くすることができる。もちろん利用者にとっても、自分のサイクルに合わせて有用な情報や商品・サービスを提供してくれるメリットが存在する。一方で「Clue」は完全フリーミアムモデル、つまり「広告なし」。この場合のマネタイズは、利用者からの「使用料」と利用者の「データ」を他社企業に販売して稼ぐといった「データビジネス」が考えられる、と奥田氏。

しかし「Clue」はポリシーとして、利用者のデータでビジネスをするといったマネタイズしないことを明確に示しているとのこと。

その明確な姿勢から鑑みるに「Clue」は純粋に有料アカウントからの収益だけでマネタイズしているようだ、という話でした。「Clue」は、国と地域によって利用料の設定が違うらしく、その絶妙な価格設定にそのマネタイズを存続させているポイントがあるのかもしれません。

 

 

  • AIが生理周期に合わせたエクササイズを提案するアプリ:WILD AI

https://wild.ai/より

生理周期によって女性の関節強度は変化するため、周期に合わせたトレーニングをしなければケガのリスクが高まるという研究結果に基づき、AIが適切なトレーニングを提案してくれるアプリ。

奥田氏曰く、無料で使用時に追加課金もないため、企業や研究機関からの共同研究に対するデータ提供とその見返りとしての協力金でマネタイズしているのではないか、という話でした。実際に、アディダスがこのアプリをアスリートに対して提供しているという事例もあるらしく、女性のウェルネスをサポートしながら、有用な研究データを取得し、さらにその結果をフィードバックしていくという意味では、まさに最前線にあるフェムテックのマネタイズケースと言えるのではないでしょうか。

 

  • 妊婦や胎児のバイタルなどを計測・モニタリングするデバイス:Bloomlife

https://bloomlife.com/ より

世界最初の「陣痛モニタリングデバイス」と言われているBloomlife。

初期のユーザー12000人から集めたビッグデータ×AIによって、早産や破水の傾向がつかめたことにより、このデータを使った第二期モデルをFDA申請中、とのこと。奥田氏も絶賛のこのデバイス、まさにフェムテックによるウェルネスの真骨頂だと感じました。

こちらのデバイスについては、基本となるユーザーに対するサブスクリプションモデルに加えて、パートナーが勤めている企業が福利厚生として契約、必要とする社員に提供するモデル(出産のタイミングがわかれば会議や出張の予定が効率的に立てられる!)そして、産院がサービスの一環として顧客に提供する、ということも考えられるのでは、といった複数のマネタイズモデルが奥田氏から提示されました。中村氏からは陣痛、出産のタイミングを助産師をはじめ、医療関係者やタクシー会社などに周知することによって、コミュニティ全体で安全な出産をサポートするような街づくりにも活かせるのではないか、という提案もありました。

 

  • ブレスレット型体温調整デバイス:Embr Wave Bracelet

https://embrlabs.com/ より

更年期症状のひとつであるホットフラッシュや、冷え性などに対応して装着者にとって快適な体温を保ってくれるデバイス。

奥田氏曰く、デバイスとアプリ、それぞれに異なるデータを取ることができるので、それらのデータを様々な研究機関や企業に提供、研究を重ねながら、デバイスの機能向上にフィードバックしていく、というサイクルを回しているのでは、という話でした。

 

  • どこでもゲーム感覚で骨盤底筋を鍛えることができる膣トレデバイス:Elvie Trainer

https://www.elvie.com/shop/elvie-trainerより

最後は、成人女性の約1/3が困っている尿失禁対策のための膣トレデバイス。2018年には、イギリスで国民保険サービスを提供するNHSのパートナー企業となり、尿失禁の可能性がある患者には無償で提供されているとのこと。日本でも同様のマネタイズモデルが考えられると奥田氏。国の保障制度に入るのはハードルが高いにしても、保険制度が適用されたり、企業の福利厚生の対象になっていく可能性はあるのではないか、という話でした。この考え方はこのデバイスに限ったことではなく、健康系のプロダクトのマネタイズとしては全般的にありえるのではないか、という話もありました。

 

■女性医療×AI「vivola株式会社」の紹介

後半では、Plug and Playのアクセラレーションプログラムで採択されたフェムテック企業「vivola」の紹介がなされました。

vivolaは、AIを使った不妊治療に関するデータ検索サービスを提供している企業。その事業内容について、CEOである角田夕香里氏から説明がありました。

多岐に渡るサービスの展望の中、印象的だったのは利用者に不妊治療に関する詳細なデータエビデンスを提供するアプリ。

vivolaが提供するアプリ「cocoromi」では、治療スケジュールや治療ログの管理や、情報交換に加えて、体外受精成功者の統計データや、自分と似た人の同質データが閲覧可能。さらに同質データの中から、詳細な治療カルテも閲覧できるといいます。

このデータドリブンなソリューション開発は、ご本人も現在進行形で不妊治療を受けられている角田氏の経験が背景になっているとのこと。様々な治療において、現場でのトライアンドエラーが繰り返され、モニタリングデータがあまり活かされていないと感じた角田氏が「積極的にデータを活用することによって、治療の最短ルートを見出し、治療期間を短期化できるのではないか」と考えたことが開発の発端だったという話でした。

 

■熱意とテクノロジーのフィードバックループが、今新しい地平を切り開いている!

様々な最新事例とマネタイズモデルをご紹介した今回のレポートでしたが、わたし個人が最も強く感じたのは、これまでタブー視されたり、無視されてきた女性のウェルネスの問題を解決しようとする熱意が、新しいデバイスやプロダクトを生み、それを利用したユーザーのデータが活用されることで、さらにプロダクトが改良されたり、また新しいフェムテック開発へと繋がっていく。このフィードバックループがフェムテックのムーブメントを加速しているということ。確かにユーザーのデータが濫用されかねない状況や、そうした状況に対するユーザーの不安といった課題もあると思います。だからこそ、サービスの提供側はその使用目的を明確にしていく必要がある。そうして正当な形で生きたデータがやりとりされることが、まさにウェルネスの問題解決と市場拡大に直結していると感じました。研究開発者の熱意とユーザーの協力が結びつき、輪になって回転しながら厚い壁を切り崩していくイメージ。その回転数はどんどん上がっているように感じられました。

 

 

■fermata参加のうめだ阪急イベントはこちら!https://hellofermata.com/blogs/news/umehanns

*緊急事態宣言延長により、会期が延期になりました。詳細が決まり次第リンク先にてお知らせします。

 

■前回のREMOTE engawa KYOTOのフェムテックウェビナーから生まれた

Varinos x ファミワンx 電通のプロジェクトはこちら!

https://note.com/chiyo_w_kamino/

■fermata株式会社

https://hellofermata.com/

■vivola株式会社

https://www.vivola.jp/

 

取材・文: 田中真輝
Reporting and Statement: masakitanaka

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