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Apr.

2024

interview
21 Aug. 2019

FamieeProjectから学ぶ、ダイバーシティとブロックチェーンの未来 

初めての投稿になります。ライターの坪田です。普段は、ブロックチェーンの技術を用いた事業開発に挑戦しています。それらの活動の中で、ブロックチェーン技術を活かして、ダイバーシティの実現のために活動している方との出会いがありました。そこでこれから、その2つの概念の出会いがどのような未来を創りだすのか??インタビューを行っていき、その可能性を探っていきたいと思います。

第一回として、多様な家族の在り方をブロックチェーンの技術を活かして支援するプロジェクト「Famieeプロジェクト」に参画されている渡辺創太氏にインタビューさせて頂きました。渡辺氏は現在、世界トップレベルの技術力を擁したブロックチェーン開発企業Stake TechnologiesのCEOとして活躍されています。「Famieeプロジェクト」のお話を通して、ダイバーシティにおけるブロックチェーンの可能性を伺っていきたいと思います。

 

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坪田:Famieeプロジェクトが発足した背景やプロジェクトの目指す先をお教えいただけますか?

渡辺氏:「家族」の概念は時代とともに多様化しています。LGBTのカップル、事実婚のカップル、代理母の協力でできた親子、互いに支え合って生活するシングルマザー同士などです。しかし、現在の法律上では夫婦・親子と認められない「家族」は、家族としての権利やサービスを受けられないという課題があります。Famieeプロジェクトはブロックチェーン技術を使って家族関係証明書を発行しようとしています。1つの機関や企業に依存しない形で証明書を発行し、データをユーザー自身が持つことによって世界のどこにいてもありのままの自分自身を証明できる。そして1人、1人みんな違ってみんな良いという多様性を受け入れる社会の実現を目指しています。

 

坪田:ブロックチェーン技術は多様な家族形態を「証明する」部分に活かされているのですね。そもそも、渡辺さんが本プロジェクトに参画されたのはどのような経緯でしょうか?

渡辺:僕は過去にNPO活動を通し、インド、ロシア、中国などで活動をしてきました。様々な社会課題に対面する中で、テクノロジーを通して世の中の不公平を是正したいということをITに興味を持ち始めた当初から考えていました。その中で、Famieeプロジェクトに入るきっかけとなったのは、サンフランシスコの企業で1年間働いていた経験が大きいです。サンフランシスコという街は非常に多様性に富んでいます。人種、国籍も多様ですし、考え方や志向性も多様です。働いていた会社でもアメリカ人のほうが少数派でLGBTの方もいましたし様々な価値観を持った人たちの集まりでした。本質的に僕は多様的な環境に身を置くことが好きなんだと思います。その後、日本に帰国し東京大学の寄付講座で現Famieeプロジェクト代表であるホットリンク社の内山会長とお話しプロジェクトに参加することになりました。

 

坪田:渡辺さんの生き方そのものに、ダイバーシティを感じます!次に、ブロックチェーンについての話を伺いたいのですが、まだまだfintech関連の技術と理解されている部分があると思っています。本質的に、どんな可能性がある技術になりますか?

ブロックチェーンと聞くと、多くの人はFintechの技術だと理解すると思います。これはビットコインの影響が大きいのかもしれません。しかし、ビットコインを始めとする暗号資産のバックボーンをなすブロックチェーンの応用はFintechに留まりません。それはブロックチェーンないし分散型台帳と呼ばれるテクノロジーが信頼(トラスト)と取引のあり方を大きく変えるものであるからです。トラスト、取引、分散台帳というと一見とても地味ですが、これらは人が生活をする上で至るところにあります。実際にBitcoinの最初の論文を分析してみると取引と信頼にまつわる単語が頻出していることがわかります。

信頼に関してブロックチェーンを学んでいると頻出する単語が「トラストレス」です。これは決して取引にトラストがなくなるという意味ではありません。今まで国や企業によって担保されていた取引の信頼性をプロトコルが、もっというとソフトウェアが担保することになるという解釈をしています。そうすると今まで信頼を担保してきた仲介者の必要性が少なくなり、よりエンドユーザー中心の世界になっていくと思います。

(実際にBitcoinの最初の論文中にも取引と信頼にまつわる言葉が多く使われている。)

 

 坪田:世界中のブロックチェーン関連の起業家は、この「信頼」と「取引」の変化にビジネスチャンスを感じているということですよね。そのブロックチェーンの技術とダイバーシティ、2つの概念の関係をどのように考えますか?

渡辺氏:ブロックチェーンとダイバーシティを考察すると2つ論点があると思います。1つ目はブロックチェーンに関わる人々、もう1つがブロックチェーン自体の仕組みです。1つ目に関しては、ブロックチェーンの発展がよくインターネットの発展と比較されますが、大きく違うのはブロックチェーンがシリコンバレーなど1地域を中心とするものではなく、全世界で同時多発的に開発が進んでいるというところです。なので、グローバルなチームであったり、グローバルな環境で研究を行うことが当たり前となっています。多様性とイノベーションに関しては面白い研究もあります。Harvard Business Reviewに掲載された学際的コラボレーションのジレンマというのをご存知でしょうか?図をみてみるとわかるように、メンバーの類似性が高い場合、平均したアイデアのアウトプットは高いですが画期的なアイデアは生まれていません。一方で、メンバーの類似生が低い場合、つまり多様性に富む場合、平均したアウトプットは低いですが、画期的なアイデアが多く生まれたという研究結果があります。ブロックチェーンの業界でも日に日にでてくる画期的なアイデアの多くはグローバルな環境下でのコラボレーションが大きく貢献していると思います。

 

2つ目に関してブロックチェーンの設計で極めてすごいところはインセンティブデザイン※だと考えています。ビットコインのようなパブリックブロックチェーン※は誰でも閲覧することができ、誰でも新しい取引を行うことができます。エコシステムの中にはブロックチェーンの正当性を検証している人もいれば、単にデータを確認する人、実際に取引をする人などがいます。これは国籍や年齢、性別、地域などに制限されるものではありません。その中で各人が誰も無理することなく自分の利潤を追求していればいまのところ全体として上手く機能しているということができると思います。

※パブリックブロックチェーン&インセンティブデザイン:ブロックチェーンは、分散型台帳技術とも呼ばれ、中央で管理する人間は存在せずに、非中央集権で台帳を管理できる技術です。その中で大きく2つに大別されており、ネットワークに参加できる人を制限しないものをパブリックブロックチェーン、一方で、ネットワークに参加できる人を制限したブロックチェーンとして、プライベートブロックチェーン、コンソーシアムブロックチェーンというものがあります。パブリックブロックチェーンは管理に貢献した人にインセンティブが与えられることでエコシステムが回っています。

 

 坪田:ブロックチェーンの技術は、個人に対して非常にオープンでフラットな世界を提供するということですね。具体的には、どんなブロックチェーンサービスが社会実装すると、よりダイバーシティに寄与するとおもいますか?

渡辺氏:まず分散型IDのブロックチェーンサービスは必要だと思いますしFamieeを通して分散型のIDならび身分証明を行いたいと考えています。ブロックチェーンの文脈で言えばDecentralized Identification、訳してDIDと呼ばれています。現在の社会ではIDや身分証は国であったり、企業が発行しています。そうすると従来の法律や枠組みに沿わない人々にはIDや身分証明が発行されません。そもそも、世界中にはIDを持たない人が11億人いるようです。その事によってしばし人としての当たり前の権利を侵害しているケースもあると思います。ブロックチェーンを用いた分散型IDサービスではDecentralized Identity Foundation※やSovrin Foundation※のような財団の動きに注目しています。

※Decentralized Identity Foundation:https://identity.foundation/

※Sovrin Foundation:https://sovrin.org/

 

坪田: ブロックチェーンサービスによって、そのような権利侵害が少しでも阻止できたら素晴らしいと思います。最後に、ステイクの代表として、渡辺さんが描いていきたい未来をお教えください!

渡辺氏:ステイク(正式名称:Stake Technologies)という会社はブロックチェーンの開発を行う企業ですが、僕はブロックチェーンを世の中に普及させていく先に見える社会のあり方に関心があります。特に興味があるのはWeb3.0です。Webは一方向に情報を表示するだけのWeb1.0、FacebookやAmazonのようにユーザー同士が運営者を通して相互にやりとりを行えるWeb2.0と進化を遂げてきました。そして、ブロックチェーンによってユーザー同士が直接つながりユーザーのデータをユーザーが所有するWeb3.0が実現すると思います。そのWeb3.0を実現しにいくのが我々であり、世界の一線で勝負をしていきたいと思います。

坪田: 本日はお時間頂きまして、誠に有難うございました。

渡辺氏:こちらこそ、ありがとうございました。

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渡辺さんとは度々お会いさせて頂いているのですが、いつも、その高い視座、広い視野、圧倒的な行動力に驚かされています。そんな渡辺さんから伺ったブロックチェーンの可能性について振り返りたいのですが、本日お話頂いた内容のポイントは、ブロックチェーンは権利保護の楯となれるか、ということだったと思います。あらゆるケースにおいて、中央集権的に決められたルールと実状がマッチしない状況が発生していて、そのマッチしていない人の権利を証明するためにブロックチェーンが大きな力になるとのことでした。

例えば、「●年●月●日に、私とあなたは、結婚しました。」という事実を、テクノロジーによって永続的に証明できるようになれば、それは権利が保護されることへの大きなアシストになるのではないか?と私も感じた次第です。

そして、この仕組みの良さは、プロジェクトに参加される方のデータが貯まっていくことで、ムーブメントの成長が可視化されることにもあると思いました。実際の権利保護に繋がっていくためにも、多くの方にこのようなサービスが伝わったらと思います。

不定期になるとは思いますが、これからもブロックチェーン技術を活かしたダイバーシティ実現の可能性について、取材を続けていきたいと思っております。今後ともよろしくお願い致します。

 

協力:Stake Technologies CEO渡辺 創太氏

取材・文: 坪田 豊

取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor

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