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Nov.

2022

event
18 Nov. 2022

視覚障がいに関わる“壁”を溶かす新規事業とは

視覚障がいに関わる“壁”を溶かす新規事業創出支援を目的とした「VISI-ONE(ビジワン)アクセラレータープログラム」に採択された企業6社による事業アイデアの実証成果を発表する、デモデイが行われました。そして、その審査中の時間に実施されたパネルディスカッションについてレポートいたします。

 

視覚障がいに関わる“壁”を溶かすためには、事業としての持続性が重要

イベントが始まると、6社それぞれが、視覚障がい者の課題解決につながる事業アイデアと、その実証成果を発表していきます。なかには、身近な人の経験から課題を発見し、課題解決のためにプロダクトを開発したという発表者もおり、想いのこもったプレゼンが続きました。

 

プレゼン後には審査員からのQ&Aタイムがあり、そこで各社とも問われていたのは「どうビジネスにするのか?」という点です。あくまで目標は当事者の課題解決ではありますが、ビジネスとして持続・スケールしなければ、必要としている人にプロダクトやサービスを届けることは出来ません。そのため、どの発表者も、「ターゲットをどう広げるのか」「収益化のためのビジネスモデルはどうするのか」等、それぞれに戦略を練ってきていました。

 

そして審査の結果、2つのアワードの受賞企業が発表されました。「Business Innovation Award」には(株)Ashirase、「Social Innovation Award」には(株)GATARIが、それぞれ選ばれました。

 

視覚障がい者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」

Business Innovation Awardを受賞した(株)Ashiraseの「あしらせ」は、靴に装着するタイプのナビゲーションシステム。視覚障がい者の行動範囲を広げることを目標として置きつつ、ニッチな事業にしない為に、海外旅行者や老人へも市場を広げることを視野にいれいていたのが印象的でした。受賞理由としては、視覚以外の感覚を用いるユニークさ、ユーザーが良く転ぶ場所のデータをとって役立てられるという点が挙げられていました。

 

 

視覚障がい者向け音声ガイドをリアル空間に配置する「Auris」

Social Innovation Award受賞の(株)GATARIは、Mixed Reality(※1)を実現する企業。エンターテイメントとして作ったサービスを、視覚障がい者に体験してもらったところ足が一歩前にでる」「気持ちの面でポジティブになる」と喜ばれたことをきっかけに、今回のアクセラレータープログラムに参加したそうです。障がいだけでなく、多言語対応など、情報のアクセシビリティという点で拡張性が評価され受賞となりました。

※1 Mixed Reality:リアル空間とリアル空間をスキャンしたデジタル空間がミックスされ、リアルな空間の任意の場所に任意の情報を保存・表示することができる状態のこと。リアル空間に一切センサーなどを配置する必要なく、空間にさまざまな情報を配置・保存・確認することができる。

 

インクルーシプな事業設計による市場の最大化について

審査中の時間に行われたパネルディスカッションのテーマは、「インクルーシプな事業設計による市場の最大化について」。視覚障がい者の課題解決において、ターゲットユーザーはどのように広がっていくのか、意見交換が行われました。

 

▼パネルディスカッション登壇者

大坪英太 氏(一般財団法人インターナショナル・ブラインドフットボール・ファウンデーション)
葭原滋男 氏(参天製薬株式会社)
朝田雄介 氏(参天製薬株式会社)

司会進行:高倉渉 氏(レガシーイノベーショングループ株式会社)

 

注目が高まる、インクルーシブな事業設計やDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)。それらを企業が事業として取り組んでいく際に、社内でどのような反応があるのか、どういった認知をされているのか。それぞれの立場から見える、それぞれの景色が語られました。

 

大坪さん: 多様な組織ほど、良い成果を出せるという研究もありますし、企業側のニーズや意識は高まっていると感じます。それでも稀に、体験会をとりあえずやる、という企業も無くはないのかなと思います。

朝田さん: CSRではなく事業として取り組む際、ターゲットをマイノリティに絞ると、市場規模が小さいと言われてしまうことがある。どう広がるのか、どういう展開があるのか、示していくことが必要だと思っている。

 

ここで、司会進行の高倉さんから、1つの事例が紹介されました。花王のアタックゼロのワンハンドタイプは、ワンプッシュで、1回分の量だけが出るという商品です。実はこの商品、元々は障がい者にとって使いやすい容器を考えるところから開発が始まったそうです。この事例紹介を皮切りに、他の登壇者からも、意外な事例が飛び出しました。

 

葭原さん: 宅配便の不在伝票に気が付けずに捨ててしまい、荷物を受け取れないという視覚障がい者の声から、不在伝票に猫耳形の切れ込み(山型の切れ込みが2つ)を入れた例があります。視覚障がい者以外にとっても便利だということで、広く導入されている様です。

朝田さん: 歴史の中でも、タイプライターは、恋人が視力を失っていくから、文通をしたくて発明されたもの。車のオートクルーズも視覚障がい者が開発している。当事者の近くにいる方や、当事者自身の発明が、多くの人の生活を変えていったケースは多々あると思います。

 

視覚障がい者の課題解決を目的とした商品が、ほかの人にとっても便利だったという事例が、こんなに身近にあったことに驚きました。事業としての持続性を考える際、このエピソードは、非常に示唆に富んでいると感じました。

 

イベントを終えて

課題解決・新規事業創出、具体的に取り組むとなると、いくつもの壁が存在しますが、突破するヒントとして、「視覚障がい者の為に作ったものが、多くの人にとっても便利なものだった」という事例がいくつか紹介されました。

今回の発表でも、実際に使ってみたいと思う魅力的なプロダクト・サービスがありました。近い将来、商品化される日を楽しみに待ちたいと思います。

 

 

取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor

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