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Oct.

2024

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5 Nov. 2021

LIVES TOKYO 2021 ”Collaboration!!~多様性が生み出す可能性を信じて…”

田中 陽太郎
アソシエイト・プランナー
田中 陽太郎

認定特定非営利法人ハンズオン東京が主催する、オンラインイベント「LIVES TOKYO 2021」が9月26日に東京ミッドタウンから配信されました。


司会・進行を務められた長谷部真奈見さん

 

このイベントは、「一人一人の個性が輝き、みんなが一緒になって仕事をし、ごはんを食べて、楽しく笑えるようなインクルーシブな社会を作る」事をミッションとして掲げるLIVES PROJECTが開催しています。

2017年から毎年開催され、今回で5回目を迎える、LIVES TOKYO2021のテーマは、”Collaboration!!~多様性が生み出す可能性を信じて…”。

互いに尊重し合える共生社会に向けて、様々な団体や企業、個人の想いや活動をLIVES TOKYOでは存分に見る事ができます。

イベント内では、沢山の魅力的な方々の話があり、中でも筆者が特に印象に残った登壇者の「言葉」についてレポートしていきます。

 

「私という職種」~経営コンサルタント・成澤俊輔さん~


成澤さん(経営コンサルタント)

 

まずは、LIVE SMILE TALK①でプレゼンをしていた、経営コンサルタントの成澤俊輔さんをご紹介します。

成澤さんは、指定難病の「網膜色素変性症」を抱えています。顔の前で動かしている手を認識できないほどの視力だそうです。そんな成澤さんのプレゼンには、心に響く言葉が多くありました。

 

【どうにもならない事に慣れている】

成澤さんは視覚障害者として今まで生きてきて「どうにもならない事に慣れている」と言います。それは、他の障害のある人も同じだと。

そして、世界中が新型コロナウイルス感染症に侵され、誰しもがどうにもならない難しい状況にいるからこそ、考え方や取組み次第で誰でも人の役になれるとも言います。

 

【目が見えない事は生きやすい事】

成澤さんは、視覚的に得られる情報が少ない分、目に見える価値観にとらわれることが少なく、とても生きやすいそうです。様々な情報やデータの視覚化が重要視される世の中において、自分の目が見えなくなればなるほど、生きやすくなっていくという成澤さんの感覚は沢山の人を勇気づけられるかもしれません。

経営コンサルタントの成澤さんは、一昨年アフリカに訪れたり、国内外の約60社の経営のサポートをされていて、アクティブな毎日を過ごしています。

成澤さんは目が見えないからこそ、先入観や思い込みがない。だからこそ既成概念にとらわれないアイデアが生まれ、沢山の人に信頼される。信頼されるから、沢山の人と良好な関係を築け、多くの仕事に携われる。成澤さんに関わった人はみんな幸せになるのだろう、と感じました。

 

【初体験の仕事以外やらない】

彼が初体験の仕事にこだわる理由は、「最も大胆な提案ができ、一生懸命勉強でき、大胆な意見を言える」からだそうです。この言葉からは彼の勉強熱心さ、仕事への熱い思いが存分に伝わってきて、様々な領域に携わる視聴者を勇気づけたように思います。

 

【最後に伝えたい事】

フリーランスとして仕事をしている彼の願望は、すべての人が組織に縛られない仕事の仕方を出来るようになる、という事だそうです。個人事業主の様に時間に縛られず自由な働き方を、障害者にも副業ができる社会を成澤さんは本気で作ろうとしているのだと、彼の言葉から感じました。

組織の中の多様性だけではなく、自分の中の多様性を見つけ、あなたの名前が職業になるように。多様な働き方が実現できる社会を目指したい、と語る彼は「成澤俊輔」という職種を生きていると感じました。

 

「私の夢」~モデル・Moekaさん~


Moekaさん(モデル)

 

続いて、LIVE SMILE TALK②でプレゼンしていたMoekaさんのご紹介をします。

Moekaさんは知的障害があり、9歳くらいの知的水準だそうです。話し始めた彼女の様子からはわからなかったですが、私と同じように彼女に障害があると思わない人たちに彼女や家族は傷つけられて生きてきたと語っています。

 

ひらがなが読めず、友人とのコミュニケーションが上手くいかない事を「できない子」として判断され、劣等感だらけだった低学年。高学年では、母親が担任に「レベルの低い子はいらない」と言われ大変なショックを受けたと言っていました。障害があるという事が彼女を苦しめてきました。

 

現在、Moekaさんは、身の回りの事を自分自身でやりながら、障害者雇用として保育園での清掃の仕事をしています。その保育園は、今までの周囲とは違い、自分の事を理解してくれ根気よく声掛けをしたり、作業準備内容をプリントし一緒にチェックしたり、丁寧・的確に指示を出してくれるため、ゆっくりだが成長している実感があると彼女は言います。

 

そんな彼女の夢は「知的障害のあるモデルとして世界に立つこと」。

 

20歳のころ筋肉がなく、ヒールを履いて歩く事は到底できなかったが、元パリコレモデルの高木真理子先生が、特別扱いせず彼女に接し、歩く事、人前での服装、マナーを徹底的に教えたそう。また、時には障害を理由に甘える彼女に厳しく接する事で、モデルとして自立するために必要な心を鍛えてくれています。

 

諦めずに努力を重ねた結果、東京2020パラリンピックの開会式でステージに立つことができ、最高に幸せだったと彼女は語ります。自分の境遇に負けず、何事にも挑戦し目標を叶えてきたMoekaさん。

彼女のモットーは、「あきらめなければ夢は叶う。続けるは簡単な事じゃない。でも自分自身を信じ続けて、毎日楽しくチャレンジし続ける。」です。

 

努力を重ね、自分にとって難しい事にチャレンジし続ける彼女の言葉を聞いて、私自身、心が奮い立たされた気がしました。

 

Closing Keynote~アスリートたちの言葉~

過去のLIVES TOKYOでは、東京ミッドタウンのキャノピースクウェアにおいてパラスポーツの体験会やトークイベントをリアルの場で実施してきました。今回はClosing Keynoteとして、パラアスリートとして活動経験のある、本間正広さん(車いすテニス選手)、花岡伸和さん(元車いす陸上競技選手)、富田宇宙さん(パラ水泳選手)、小川和紗さん(視覚障害者柔道選手)が登壇しました。

左から、久下真以子さん(アナウンサー)、本間正広さん(車いすテニス選手)、花岡伸和さん(元車いす陸上競技者選手)、富田宇宙さん(パラ水泳選手)、小川和紗さん(視覚障害者柔道選手)

 

その中でも、富田宇宙選手に着目しました。

彼は、水泳競技で400m自由形(S11)銀メダル、200m個人メドレー(SM11)銅メダル、100mバタフライ(S11)銀メダル獲得の世界トップクラスのアスリートです。

 

元々宇宙飛行士を目指していた彼でしたが、後天性の網膜色素変性症により、高2の時に視野が狭くなり始めたそうです。彼から出る言葉一つ一つに、次第に不自由になっていく苦悩や、そこから這い上がった思いがあふれ出ていました。

 

【思いを発信できた大会に】

まず、8月24日~9月5日で開催された東京2020パラリンピックの話題に。

司会者からこの大会はどうだったか、という質問が投げかけられました。他の登壇者が「みんなに知ってもらえてよかった」「良い機会だった」とする中、富田選手は、「いいパフォーマンスができて自分にとっては最高の時間だった。競技を通して沢山の思いや考え方を発信できた。楽しむことをモットーに大会を過ごせてよかった」と話してくれました。

また沢山の人の反響を聞いて、パラアスリートの役割や存在価値を知れて幸せだったと語りました。

 

【目が見えない=組織を強くする】

次の話題は、「アップデートできた瞬間」という内容に。

富田選手は、まだ目が見えていた学生時代に一般の競技ダンスチームに所属しており、かなり活躍したそう。しかし、だんだん目が見えなくなるにつれて、競技では活躍しているのに周りの手を借りなければできない事もある、少し変わった存在だったという。

しかし、一生懸命に頑張る富田選手を見て、「自分達も頑張ってみよう」と周りが思ってくれ、チームの役に立っている実感があり、実際に最終学年では全国大会にも出場できたそうです。それまで目が見えない事は悪い事だと思っていたのが、自分が努力し続ける事で周囲に何か与えられるという感情にアップデートされたと語っていました。

また、目が見えない特性が組織を強くしたという発言に、他の登壇者からは「インクルージョンの先に何が待っているかを聞けたような気がする」と驚いた様子のコメントがありました。

 

最後には、障害のある人だけではなく、個性が際立っている人が集団の中に入ると、その集団に刺激が入り変化が起こる、それがインクルージョンの先にある物だという話に移りました。テクノロジー・政治・ビジネス・スポーツ…それぞれの専門分野だけでは実現が難しい事もあるが、「私たち登壇者やLIVESプロジェクトメンバーが、多種多様なコラボし合うような取り組みを生み出せれば、社会をアップデートしていく事ができる」という話も出て、実現したらどんな世界が待っているのだろう、とワクワクするようなトークセッションとなりました。

 

多様性は作る物ではなく、そこにあるもの。

今回、障害のある方々の様々な思いを聞く事ができました。夢を語る方やこれからの社会についてまじめに語る人などいましたが、皆さんが話していた内容から一貫して感じた事は「自分たちは個性が強いだけ」というメッセージでした。

人は自分が普通だと思って、そうではない人は普通ではないという壁を作りがちですが、声が大きい人、手がない人、足が速い人、目が見えない人などのように単純に個性として捉えられ、みんなが抱えているそれぞれの弱みをカバーし合いながら生きられる社会になればいいと強く感じました。

 

多様性は作る物ではなく、そこにあるもので、些細なきっかけはあなたの周りにある。それを見つけて日々自分をアップデートできる人間になりたいと思いました。

 

☆LIVES TOKYO 2021(アーカイブ動画)

https://www.youtube.com/watch?v=tEldJixMarQ

取材・文: 田中陽太郎
Reporting and Statement: yotarotanaka

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