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Jul.

2020

interview
30 Sep. 2013

コミュニケーションが生まれる?メディアアートにあるヒント

林孝裕
cococolor事業部長 / cococolor発行人
林孝裕

INTERVIEW
メディアアートユニット プラプラックス  近森基さん、久納鏡子さん (聞き手:paya)

ダイバーシティについて考えるとき、コミュニケーションというものが一つの大きな課題となる。

そんな中で、年齢も性別も文化も、言語の違いさえもひょいっと越えて、あっという間にみんなの心を動かしてしまうものがある。そのひとつがアートだ。

今回はそんなアートの世界の中で、しかもコミュニケーションというテーマに真正面から取り組んでいる「メディアアート」に、ダイバーシティ社会へのヒントを求めて、メディアアートユニット、プラプラックスの近森さんと久納さんにお話を伺った。

アートユニットでありながら、実に多方面で活躍されているプラプラックスさんですが、現在どのような活動をされているのでしょうか?

大きく分けて三つの活動があります。

一つ目は、アーティストとして展覧会などで自分たちの作品を皆さんに体感してもらう活動です。

インタラクティブアートやメディアアートと言われる領域の作品で、センシングや、音、映像、香りなどを出すデバイスを組み合わせて、様々な新しい体験を生み出していこうとするものです。

0001hanahanahanahanahanahana, 2009
匂いのセンサーによって香りを視覚化する作品。香水をつけた紙をセンサー近づけると香りの種類と強さに応じて、色と形を変化させた映像の花が咲く。見えない香りが空間を移動する様を目で見、鼻で感じることで、ふだん無意識に行っている香りによる空間認識について気づかせる

0001katsina7石ころのカチナ, 2011
テーブル上に置かれた石に触ると、さまざまな姿をした石の精霊が現れる。カチナとはアメリカ・インディアン・ホピ族の言葉で、聖なる山に住む精霊のような存在のこと。

 

二つ目は、教育・普及的な活動です。

子どもから大人まで様々な人を対象に、各地でワークショップを行っています。テーマを与えていろいろなものをみんなに作ってもらう。六本木で開かれていた「デザインあ展」への参加や、巡回でやっている「魔法の美術館展」などもアートの裾野を広げていく、教育・普及的な活動です。

三つ目は、広い意味でのデザインの仕事です。

子ども病院や、老人介護施設などのデザインから運営企画などにまで関わらせていただいています。これはここ1〜2年の大きな流れで、単なる公共空間向けのアート作品の制作ということに留まらず、施設環境のデザイン、さらにはそれらの施設を地域コミュニティのハブになるものとしてどのように機能させていくのか、ということを企画するところにまで携わるようになってきています。

0001pompidou2 0001pompidou1ポンピドゥ・センター ワークショップ, 2005(Centre Pompidou /フランス)
光と影をテーマにした展覧会に合わせ行われたワークショップ。映像の原点でもある影絵の人形を作り、最後はコンピュータに取り込んで新旧の影のさまざまなかたちを鑑賞した。

 

アーティストという立場を越えて、具体的なソリューションを提供するという立場にまで活躍の場が拡がってきているのですね。なぜそこまで活動領域が拡がってきているのでしょう?

そもそもメディアアートというものが、人と人との間に入ってインタラクションをどうやって創っていくのか、コミュニケーションをどのように生み出していくのか、ということがその根底にあるものだからだと思います。

アーティストとしての活動でも、作品を通じて自分たちの思いを提示することよりも、そこに出来た場によって新たな価値が生まれたり、そこで自分たちの意図とは関係なく何かが起きたりしていくことの方が面白いと思っているので、自分たちが作るのはきっかけとしての場や環境であって、本当の目的はそこを訪れた人々によってもたらされるインタラクションやコミュニケーションなんです。

その現象を作品として探求するのか、人に対して持ち出すのか、社会の課題解決に持ち込むのか、で3つのフェーズがあるのだと思います。

0001murmursky3photo:Takumi Ota, photo courtesy: NTT InterCommunication Center [ICC])
空を映したスクリーンの下のマイクで話すと、話しかけた声が雲に変化して空を漂う。声の雲は風向きによって漂った先でまた声に戻り、届いたところで聞く事ができる瓶に入れたメッセージを海に浮かべるように、空の向こうの誰かに自分の声を届ける作品。

ワークショップなどではどのようなことを目指しているのですか?

「新しい視点」を持ってもらうということを意識しています。技法を教えるのではなく、新しい視点を持たせるきっかけを提供したいと思っています。

その為に必要なのが、いかに普段見ているものによる固定概念を外させるかということです。例えば、子ども向けに今まで見たことのない新しい動物を考えようというワークショップをやると、放っておくと、ポケモンやディズニーのキャラクターだらけになってしまう。別にピカチュウが好きなのは良いのだけれど、他の人が考えたものばかり描いてしまうのはおかしい。正確に描くということは推奨されるのだけど、自分の個性を出して他に無いものを生み出していくということをもっと褒めたり、自信をつけさせたりしていくべきだと思うんです。

0001skip1「動く石を動かそう!!」ワークショップ, 2013(SKIPシティ・映像ミュージアム/埼玉)
石ころをテーマにした個展に合わせ、行われたワークショップ。自分で選んだ石ころから、その石がいた場所を想像し、最後はその場所で石がどのように動くか考えて、そのための機構を発明した。

 

それはまさしくダイバーシティという価値観につながる発想ですよね。

そうだと思います。個性というか、みんな他とは違う部分を持っている。つまりは良い意味で「変な部分」を持っているんです。その変なポイント「変ポイント」をきちんと大切にしていくことが大事なんだと思います。

アーティストなんて呼ばれる人はそう言う「変ポイント」を一生懸命人に伝えようとしている人であって、「これ普通だよね」なんて言われたらそれはもう存在価値が無いって言われているのと同じです。

アーティストって日本では何か別物としてみられているけれど、みんながそれぞれアーティストになって、「変」ということをあきらめないでいくことができたら面白いんじゃないかなって思いますね。

三つ目のデザインの仕事については、増えてきているということですが、どういう依頼がくるのですか?

そもそもデザインを依頼されているわけじゃないんですよね(笑)。初めはこういう場所にインタラクティブなものを作ってほしいとか、アート作品の制作依頼です。だけど、話を聞いてみるとそもそもそこに作品を置く理由などが明確じゃないことが多くて、初めの打ち合わせでそもそも論をすると、この人たちにはもっと別のことをお願いするべきなのかもしれないと、全然違う依頼に変化することになるんです。そうして、それを作る人やそこで働く人たちをつなぐファシリテーターのようなことをやっていくことで、結局は人と人をつなぐコミュニケーションを促すという仕事が増えているんだと思います。

公共施設などでは、単に住民の話を聞けば良いというものではなくて、住民の人たちの知恵をどう活かしていけば良いか、作り手の手を離れた後に住民たちがその施設をどう活かしていけるのかというところまで仕向けなければならないと思います。住民も個の集団であって、それぞれが楽しく生きていくためにどうするべきかをファシリテーションしていくことが求められていて、そんな仕事は増えるのかもしれません。

0001nakano1 0001nakano2中野こども病院, 2013
こども病院をポジティブなイメージの場所にするための空間演出プロジェクト。作品をインタラクティブに体験するメディアアートの考え方を、病院の機能と結びつけて展開した。診察室の扉には動物の半身が描かれていて、何の動物だろう?と絵本のページの続きを見るように扉を開けると、部屋の中は動物の全身が描かれている。つい中に入りたくなってしまう診察室を目指した。

 

まさしくダイバーシティ社会へのヒントとなる活動ですね。今後のビジョンはありますか?

単に場を作るだけではなく、その場をどのように機能させていくか、場や人々の活動のための本質的な機能を作ることに関わっていきたいと思っています。例えば今進めている老人介護施設と保育所が一緒に入る施設では、入居者それぞれに「役割」を持たせるというコンセプトが受け入れられています。

ダイバーシティの話にもつながりますが、やはり「役割」の話って大きいですよね。サポートされる側だけに回ると人として難しい。そう言ったことまでデザインの対象にしていきます。

今後の活動にますます期待したいと思います。本日はありがとうございました!

アートから場や環境の創出へ、さらにはそこで育まれる人と人との豊かなコミュニケーションの促進、そして個の集団が創り出す新たなコミュニティのあり方のデザインへと進化していくプラプラックスの活動を通じて、ダイバーシティあふれる豊かな社会に向かってみんなで進んでいく際の様々なヒントを得た気がした。


0001plaplax_Prof
プラプラックス(近森基/久納鏡子/筧康明/小原藍): 近森 基、久納鏡子、筧 康明、小原藍のメンバーで活動。主にインタラクティブアート/メディアアート分野における作品制作を手がける一方、公共空間、商業スペースやイベント等での空間演出や装置・コンテンツ制作、企業や大学との共同技術開発など幅広く活動している。
http://www.plaplax.com/

取材・文: 林孝裕
Reporting and Statement: paya

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