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Jul.

2020

event
12 Aug. 2015

「多様な社会」実現の加速に向けて -ダイバーシティカンファレンス-

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を契機に、活力ある日本をつくる道筋を考えようと読売新聞社が主催する「未来貢献プロジェクト」。6月29日に、よみうり大手町ホール(東京都千代田区)で開催された「ダイバーシティカンファレンス」では、ダイバーシティ社会の実現に向けた官民さまざまな取り組みが紹介されました。

<技術革新や法整備をきっかけに>

個々が互いに違いを尊重し、受け入れ、違いに価値を見出していくこと。そして、違いにかかわらず平等に参加し能力を発揮できる社会を目指すこと。カンファレンスでは、このように「ダイバーシティ」を捉えた上で、「違いのある人たち」の存在を前提に社会を捉えることによりもたらされる、さまざまなイノベーションや社会活性化の可能性が示唆されました。

そのポイントは技術革新や法制度の整備にあると、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長・東大教授の坂村健氏は指摘します。

例えば、最近のほとんどのデジタルカメラに標準装備されている「顔認証技術」。この技術を使えば、訪れた人の顔と名前データを照合し、視覚障害者に「誰が来たのか」を伝えることが可能になります。また、音声の自動合成技術を使えば、障害のある人同士の会話もできるようになるでしょう。ICT活用によるダイバーシティ社会実現の可能性は従来から議論されてきましたが、技術革新が進み、商品技術のコモディティ化が進むにつれて、これまでは考えられなかったさまざまなコミュニケーションの可能性が生まれているのです。

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(基調講演:YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長・東大教授の坂村健氏)

こういった社会的な潮流を加速する上で大きな役割を果たすのが、法制度の改革です。アメリカでは1990年にADA法(障害を持つアメリカ人法)が制定され、「障害がある人に対等な権利を与えないことは不当である」という社会的規範が共有されました。この法律に準じる形で、13インチ以上のテレビに字幕装置の装備が義務付けられ、テレビ局にテキスト字幕の提供が義務付けられるなどの具体的対応が進み、社会に大きな影響が及んだのです。この他、フィンランドでは、インターネットの接続・活用を「基本的人権」の一部として捉え、実際に使えるようになるまで面倒をみる「ネット接続権」を保証する方策が打ち出されるなど、各国で積極的な動きが見られます。現在の日本の「障害者基本法」は「やるとよい」ことをリストした、ボジティブリスト方式の法律と言われていますが、「対応の義務付け」という、より厳しい方針を示す他国の政策を参考に、取り組みをさらに強化することが期待されると言えるでしょう。

<具体的解決策の普及へ –異業種交流プロジェクト「パラディス」>

2020年に向けて、誰もが安心して暮らすことのできる「ユニバーサルデザイン(UI)シティ」を構築しようと取り組んでいるのが、多業種交流プロジェクト「パラディス」です。「パラディス(PARADIS)」とは、パラレル・ディスカッションの略。多方面から、多様な主体が、複合的に取り組むことによって「みんなが前向きに活動できる社会づくり」を目指すこのイニシアティブに電通ダイバーシティラボが幹事として立ち上げ、現在40を超える団体が参画し、コラボレーションを図りながらソリューション開発に取り組んでいます。

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(パラディスメンバーによるソリューション紹介)

ダイバーシティ社会に対応する技術は、数多く生まれています。例えば印刷物に掲載された音声コードを端末で読み込むことで、コード内に収められた音声が読み上げられる「音声コード(Uni-Voice)」は、2012年4月「ねんきん定期便」個人情報帳票に採用されるなど、公的機関などでの導入が進んでいます。これまで視覚障害のある人は、年金などの個人情報の内容を、自分だけで直接確認することが難しい状況にありました。この技術の導入は「利便性」だけではなく「プライバシーの確保」という、新たな価値をもたらしたのです。

ユビキタスな環境づくりもポイントです。高精度位置情報システムを活用した「フラットナビ」は、ICタグを内蔵した電子点字ブロックとウェアラブルICタグリーダーの情報をスマートフォン端末と連動させることで、ナビゲーションによる移動支援や、迷子探しなど、使用者のニーズに合わせた多用途での活用が見込まれています。

ユニバーサルデザインを広げ、ダイバーシティな社会の実現を加速するためには、このように多様な分野の専門性を持った人たちが集結し、集合的アクションを起こすことが効果的と言えるでしょう。

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(展示会の様子)

2016年4月には、障害者差別解消法の施行が予定されており、国・自治体らを中心に、対策が急ピッチで求められています。どんなソリューションも、運用するのは、最終的には人。そこでパラディスは、これを機会に「UDアテンダント」の認証制度を普及することで、ダイバーシティの視点を持った手助け・おもてなしができる人たちを増やすことを構想しているそうです。

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(「困った時に助け合うモノをつくる」をテーマに開催されたハッカソン最優秀賞「光るヘルプメーカー」。シンプルで誰にも使える点が高く評価された)

今回のカンファレンスでは民間団体によるプレゼンテーションの他、プログラマーたちが技術とアイデアで解決策を競い合う「ハッカソン」が開催されるなど、多くの斬新なアプローチが紹介されました。誰かがやるのを待つのではなく「仕掛ける」。社会貢献・福祉だから「できればすべきこと」とするのではなく、市場を育て、日本発のソリューションとして「積極展開」する。今後さらに活発化するこれらのイニシアティブに、これからも注目したいと思います。

取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor

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