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Oct.

2019

interview
24 Aug. 2015

「女らしさ」を装う 〜多様化する女装の今と未来〜

高崎真梨子
プランナー
高崎真梨子

新宿に女装専用フォトスタジオを構え、テレビや雑誌でも女装コーディネーターとして活躍される立花奈央子さん。最近、ネットやテレビでも「男の娘」や「女装子」などの言葉が耳に入るようになり、なんとなく気になる存在であるところの「女装」についてお話を伺いました。

 

女性だからこそ撮れる女装を

—立花さんはどのような経緯で女装を撮るようになったのでしょうか?

最初から女装を撮ろうと思っていたわけではありませんでした。きっかけは2つあって、ひとつは、もともと海外の派手なファッションに興味があったことから、ドラァグクイーンに強い憧れを抱くようになったこと。知り合いにもいたので、遠い存在ではありませんでした。ふたつめは、私自身がもともとコスプレをしていて、その延長で写真を本格的に撮るようになったことです。初期にとったポートレートが、運良くプロに評価してもらえて、その道でいけるかも、と思ったんですね。個展を開きながら、写真を本職にしようとしていたときに、当時流行っていたmixi上で、女装写真を撮ってほしいという男性がたくさんいることを知りました。当時はちゃんとした女装写真を撮れるスタジオがほとんどありませんでした。また、自分が女だからこそ、男性に足りない女性視点での女装を演出できるのではないかと思いました。これは仕事にできるかもしれないと思い、6年前に新宿に女装専用のフォトスタジオを立ち上げ、今にいたります。

※ドラァグクイーン(drag queen):男性が女性の装いで行うパフォーマンスの一種。ゲイ文化の一環として生まれた異性装のひとつで、女性性の強調が特徴となっている。

 

「女性らしさ」とは何か

—女装は男性がするものという印象ですが、女性が女装をコーディネートするうえで、どのようなことを意識されているのでしょうか。

最初は、いかに男性という素材を女性に見せるかにこだわることが、私の中での理想的な女装でした。自分が女だからこそわかる、男性らしさをカバーするようなメイクやポーズ、服装を研究していました。ただ、撮っているうちに、女性として装うということは、それだけではないのではということに気づきました。きれいなだけが女性なのか、若いだけが女性なのか、スタイルの良さだけが女性なのかというと、そうではない。もっと表情とか、立ち居振る舞いとか、その人の中の女性らしさが活きることが女装なのではと思うようになりました。最近のテレビでは、いかに女性にしか見えないか、が女装の価値として取り上げられる傾向にあると思います。テレビなので、その時代にあったわかりやすい部分だけを切り取って取り上げるのもわかります。少し前までは女装=オネエ系というような描かれ方でしたし。でも、毎日女装をみている私からすると、女装はそれだけがすべてじゃない。今ではそういうことを伝えたくて、女装を撮っています。

 

女装をする目的はさまざま

—立花さんのスタジオにはどのようなお客さんがいらっしゃいますか?

女装する理由や目的は千差万別ですし、目指す「女らしさ」もだいぶ違います。コスプレのような感覚で女装をしたい人は、普通の女性はあまりしないようなセクシーな装いをしたがります。これは異性として女性を見ていて、そのイメージを自分に投影していることの表れだと思っています。一方、ファッションとして女装を楽しむ、いわゆる「女装子」と呼ばれる人たちもいます。彼らはファッション雑誌で見かけるような女子の心を纏っていて、かなり完成度の高い女装を目指します。普通の女の子と見分けがつかないぐらいの人もいます。あとは、生物学的には男性でも心は女性といういわゆる性同一性障害の人もいます。そういう人たちは、目立つために女装をしたいというようなモチベーションはなく、どちらかというと普通の女の子として溶け込みたいという意識が強いので、地味な衣装を選ぶことが多いように感じます。

やはり、こういう仕事なので、様々なセクシャリティの人がお客さんとして来ます。必ずしもはっきりしているわけではなく、曖昧だったり、女装をきっかけに変わったり、ということもあるようです。グラデーションですね。

 

個展「女装の軌跡と幸福論」で切り取った、さまざまな女装の在り方

—2月に開催された個展でも、様々な女装を見ることができました。本当に女性にしか見えない女装から、明らかにヒゲが生えているものまで。

日頃テレビぐらいでしか女装を見たことがない人に、来てもらいたいという狙いがありました。なので、入り口にはステレオタイプとしての美しい女装写真を大きく掲げ、とっつきやすくしつつ、女装ってそれが全てではないというのを、順を追って他の写真を見て行く中で感じ取れるような構成としました。

個展の入り口を飾っていた女装写真 ©立花奈央子

個展はステレオタイプとしての女装写真から始まる ©立花奈央子

さまざまな女装写真 ©立花奈央子

さまざまな女装写真 ©立花奈央子

さまざまな女装写真 ©立花奈央子

さまざまな女装写真 ©立花奈央子

さまざまな女装写真 ©立花奈央子

当事者から女装と縁もゆかりもない人まで、様々な人でにぎわう画廊 ©立花奈央子

 

—個展の最後は、仏壇の写真で締めくくられていましたが、あれにはどのようなメッセージが込められていたのでしょうか?

実は、あの個展を開く後押しになったのが仏壇の写真に映っている子です。もともとモデルとして写真を撮らせてもらっている子であり、友人でもありました。女装をしている人にもいろいろな人がいますが、彼女は性同一性障害を抱えていました。そして、性転換が叶ったのですが、お母様や周囲からの理解はあったものの、彼女自身が、自分のその先の人生に目標を見いだせなくなってしまい、命を絶ってしまいました。そのお母様とお話しし、この個展を開く決心をしました。女装をする理由や目的は様々です。女装は様々なかたちで幸福をもたらしてくれるものです。ですがそれと同時に、その根本にある部分も、女装を通して見てきました。それを伝えたくて、あの写真で締めくくることにしました。

 

日本は世界の中でも女装しやすい国?

—日本の女装シーンは変わっていると思いますか?

目まぐるしく変わっていると思います。テレビでも女装自体が取り上げられる機会が増えていますし、ドラマのキャラクターなんかでも性同一性障害が取り上げられることが増えて、女装のハードルが下がっているように感じます。気持ちの悪いものとしての女装から、捉え直しがされていると思います。実は、日本は世界中で見ても女装がしやすい国なんです。他の国だと、女装して外を歩くなんてとてもじゃないけど危険で考えられません。日本では変な目で見られることはあるかもしれないけど、街を歩くことはできる。2020年のオリンピックに向けて、外国からの旅行者も増えるかと思いますが、より多くの人が女装を楽しめるような環境を作って行きたいですね。そのためには、私たち業界にいる人間が、女装をかっこいいものとして世の中に打ち出していく必要があると考えています。

 

受け止めて、自分で考えるのがダイバーシティ

—立花さんにとって、ダイバーシティな社会とは?

様々な個性が、そういうものとして認められることだと思います。必ずしも、共感して賛同する必要はないと思います。完全に理解することも難しいと思います。女装をしている人に変な理解は示さなくていい。でも、一回受け止めて、そのうえで自分はどう思うかを自分の頭で考えられるような社会が来るといいなと思います。

 

 

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立花奈央子さんプロフィール

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フォトスタジオ大羊堂代表。女装コーディネーター、フォトグラファー、メイクリスト。 「フォトスタジオ大羊堂」を経営し、テレビ・雑誌等でも女装のスペシャリストとして活躍。 女装撮影や女装メイク講座講師を行う中で今まで手がけた男性は、ジャニーズ所属のトップアイドルから70歳のベテランまで、のべ1000人を超える。 より多くの人が性別に関する固定観念から脱し、いきいきと過ごせるようになることを目標に、日々活動中。 「性のボーダーレス化」をテーマに据えた撮影及び取材は国内に留まらず、異性装が盛んな諸外国へ定期的に足を運ぶ。 写真集に「ゆりだんし」がある。

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取材・文: 高崎真梨子
Reporting and Statement: connu

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