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Sep.

2019

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4 Sep. 2019

「食べてみる」ことから知る世界の多様性 ~トムヤムクンとダイバーシティ~

高崎真梨子
プランナー
高崎真梨子

「食べてみる」ことから知る世界の多様性は、「食文化」を通じて世界の多様性に触れることをテーマとした連載シリーズです。前回は、アフリカ西側に位置するガーナの料理を味わったcococolor編集部。キャッサバやタロイモから作られたfufu(フフ)と呼ばれる主食をちぎりながら、スープを絡めて食べるというスタイルを共通としながら、広大なアフリカ大陸には多様な食文化が広がっていることを学びました。

 

さて、今回は予告通りタイ料理に迫ります!

 

某レストラン検索サイトで検索すると、なんと90万件以上もヒットする「タイ料理」。日本タイ料理協会理事長をされている遠藤誠さんによれば、2007年には620店舗くらいだったそう。全国各地でタイフェスを開催したり、レストランを出店したいというタイ人をサポートをすることで、店舗も徐々に増え、タイ料理に使う食材の需要も出てきたとのことです。また、ハーブやスパイスがカラダにいいという風潮も追い風に。タイフェス開催当初の2000年の来場者数は3万人程度でしたが、ここ数年でなんと30万人まで増えたんだとか。このように、タイ料理は、近年急速に日本人に馴染み深くなった外国料理のうちのひとつと言えます。そのなかでも、特に知名度が高く人気なのは、「トムヤムクン」ではないでしょうか?

 

さて、そんな「トムヤムクン」に迫るべく、今回取材に向かったのは、タイ在住歴2年半とタイ在住歴12年のペア。

トムヤムクンから見えるタイのダイバーシティ世界01

 

なぜ、あえて知名度の高い「トムヤムクン」をテーマに取り上げるのか―

 

「実はタイのダイバーシティ世界を知るヒントがたくさんつまっているから!」

 

そう豪語しながら我々が向かったのは、小岩にある人気店「サイフォン」の2号店。

サイフォン2 サイフォン2のJoeさん

店長のJoeさんに作っているところを見せてもらいながら、「トムヤムクン」に迫っていきます。

 

トムヤムクンは3つの言葉に分解できる

トムヤムクンは、3つの言葉から成り立っています。煮るという意味の「トム」、和えるという意味の「ヤム」、エビという意味の「クン」。この「煮る」「和える」「海老」それぞれのキーワードで、トムヤムクンを紐解いていきましょう。

トムヤムクン

実は、ほとんどが家庭ではなく屋台でトム(煮)られている

タイの街のそこかしこに佇む屋台、行ったことがある人なら誰もが目にしたことのある光景だと思います。実はトムヤムクンも、屋台で売られている料理のひとつ。屋台で注文して、その場でささっと食べていく人もいれば、テイクアウトして家に持ち帰る人もいます。Joeさんにも伺ってみると、やはりトムヤムクンは使う素材も多いので、大家族でもない限り、家ではあまりつくらず、屋台で済ませることが多いとのこと。そう、タイの代表的な料理トムヤムクンを通して、タイ人のライフスタイルに根付いている屋台文化が見えてくるのです。そんな屋台文化が発展した背景にのひとつに、共働きが多いことがあると言われています。

 

日本でも、共働き世帯の増加に伴い、料理の材料や調味料が一式セットになった「ミールキット」が登場したり、「中食」という言葉が聞かれるようになり、これまで一般的とされていた女性の手料理が食卓に並ぶというライフスタイルが変わりつつありますが、タイでは、もっと早くからテイクアウトや外食がライフスタイルに取り入れられていました。

トムヤムクンの材料

トムヤムクンには多種多様なハーブが使われる

一日働いて家に帰ってからご飯をつくるというのは、家族のためとはいえ一苦労。トムヤムクンを通して、無理して自炊することにこだわらない、ライフスタイルに合わせて選択できるタイの食文化が垣間見えます。

 

諸外国の食文化がヤム(和え)られている

タイは、まるで曼荼羅図のように様々な民族や文化が入り混じって今のかたちになったと言われています。また、歴史的に外交も盛んだったことで有名です。そんなタイで生まれた料理、それがトムヤムクン。トムヤムクンができあがった経緯には諸説ありますが、様々な要素が和えられて今の形になったようです。

 

・元ネタはフランスのブイヤベース?!

アユタヤ王朝時代、フランスの使節団をもてなすためにタイ風のブイヤベースが考案されたという説がある(出典:タイ国政府観光庁https://www.thailandtravel.or.jp/about/thaicuisine/

 

・ナンプラーはもともとベトナムから輸入していた?!

タイの調味料というイメージの強いナンプラーは、20世紀初頭くらいまでベトナムから輸入されていた(出典:石毛直道、ラドル・ケネス『東南アジアの魚醤(魚の発酵製品の研究-5-)』)

 

・パクチーはヨーロッパから伝わった?!

タイのハーブとしてイメージの強いパクチーはヨーロッパ地中海東部原産。紀元前に中国に伝わったものが、タイに入ってきたのかもしれません。タイには中華系のタイ人も多いので、容易に想像ができます。

 

トムヤムクンナームコン

トムヤムクンにも最後にパクチーを散らします

 

そんなトムヤムクンはまだまだ進化を続けています。最近よく目にすることが多い「トムヤムクンラーメン」。Joeさんによると、これは日本で特に人気ということですが、トムヤムクンに米粉でできた中国麺クイッティオを入れるというスタイルも誕生しています。

トムヤムクンラーメン

 

ひとつの器の中に和えられた、様々な文化に思いを馳せながら、トムヤムクンを食べてみるのはいかがでしょうか?

 

実はクンだけじゃない、バラエティ豊富なトムヤム○○

日本で有名なのは「トムヤムクン」ですが、実は、「トムヤムプラー(魚)」、「トムヤムガイ(鶏肉)」、「トムヤムムー(豚肉)」、「トムヤムヌア(牛肉)」などさまざまな「トムヤム〇〇」があります。もともとタイ風ブイヤベースとして考案されたという説もご紹介しましたが、確かに魚を入れても、鶏肉を入れても、豚肉を入れても、牛肉を入れてもおいしいのだから、マイペンライ(気にしない)。エビじゃなきゃトムヤムじゃない!といった堅苦しさがないのもトムヤムスープの魅力かもしれません。

トムヤムポテック

我々も初めて聞きましたが、「トムヤムポテック(海鮮)」というのもあるそうです

 

まとめ

今回はトムヤムクンをその語源から紐解いてみましたが、タイに広がるダイバーシティな世界は垣間見えたでしょうか?何気なく食べているトムヤムクンを通して、ライフスタイルの柔軟さや、文化の寛容さを感じていただければと思います。

 

ちなみに、取材にいった我々が好きなタイ料理は、牛肉と香菜をライム汁で和えた「ヤムヌア」で意見が一致しました。ビールにあうんですよこれがまた・・・。

 

Joeさん、サイフォン2のスタッフの方々、取材ご協力ありがとうございました。また食べに行きます!

取材・文: 高崎真梨子
Reporting and Statement: connu

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