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Dec.

2024

interview
18 Mar. 2014

【ダイバーシティを巡る旅】世界一周から、東北へ

このコーナーでは「ダイバーシティ」を巡る様々な視点を、インタビューを通じて紹介していきます。

世界一周から、東北へ
本間勇輝さん NPO法人HUG代表理事

自分の殻を破る旅

東日本大震災の後、復興関係者に向けた「業界専門紙」として発行された「東北復興新聞」。手がけるのはNPO法人HUGの代表理事、本間勇輝さんだ。奥さんの美和さんが編集長を務めている。

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(東北復興新聞は紙とウェブサイトで発信されている)
(世界一周の旅の様子を綴ったブログ「ヒゲとボイン」が話題となり、書籍『ソーシャルトラベル』が出版された)

東京に生まれ育った本間さんは、大学卒業後、大手メーカーに就職。転職し、ベンチャー企業の設立に参画した後に、仕事を辞めて夫婦で世界一周の旅に出る。「これまでの価値観を突き破ってみたい」。それは「肩書も何も持たない、何者でもない自分になる」体験だった。

訪れた先々で、陽気さや怪しさ、チャーミングさといった個性溢れる人たちとの出会いを通じて、本間さん夫妻は「ソーシャル・トラベル」という、自分たち流の旅のかたちに辿り着く。出会いと導きのまま、訪れた土地で、少しの社会貢献をするという等身大の旅のスタイルは、ブログ「ひげとボイン」で発信され、多くの読者の共感を集めた。

「旅に出て、始めは日本との違いを見つけて楽しんでいたのですが、半年もすると、今度は似ているところを見つけることが楽しくなってきたんです。例えば、家族が大切とか、美味しいものが好きとか、エロい話はどこでも盛り上がるとか、『あー同じなんだな』と感じることが多々ありました」。本間さんは、旅での出会いをこう振り返る。

それまで、いうなれば都市型消費社会の生活を享受してきた本間さんだが、世界を旅し、自然の雄大さや家族の温かさ、人や文化の多様性に触れる中で、その価値観も大きく変化していった。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA(帰国前はインドにブログ読者を募り、共に現地で学校設立などを行った)

価値観の変化を越えて

本間さん夫妻が旅を終えて帰国したのは、東日本大震災の半年後のことだ。新たな価値観をもとにこれからの暮らしを模索する中、東北被災地を訪れ、ある一人の漁師と出会う。自分たちの手で、新しい東北を作ろうと立ち上がるその姿に、本間さんは胸を突き動かされた。その夢を応援したい。そのことが復興に関わり、東北復興新聞をつくるきっかけとなった。

本間さんは今、東北のみならず、先鋭的な取り組みが行われる地方へも足を運んでいる。過疎高齢化や一次産業の衰退といった多くの課題は、地方において先行して起こっている。そういった取り組み事例を紹介することは、日本や世界の地域の課題解決にも結びつくこととなるだろう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA(本間さんの旅の記録には、様々な表情が溢れている)

軸を多様に持つこと

本間さんのもとには、講演依頼が入ることも少なくない。とある大学で学生たちにボランティアに関する講義を頼まれた時、本間さんは「社会というのは、隣のひとりの人から始まるもの」と話した。数値分析やマクロ的観点から捉えるのではなく、先ずは自分が出会ったひとりの人に対して、人として向き合うこと。それを引いてみて見ると、社会の広がりが見えてくる。「ソーシャル・トラベル」も「東北復興新聞」も、そのような成り立ちで生まれたものだった。

日本では性別や国籍、文化などの文脈で語られることが多い「ダイバーシティ」だが、本間さんはもっと根本的なレベルで捉えたいと考えている。「異なる他者とどう向き合うか、ということすべてがダイバーシティの話だと思います。たとえば夫婦関係だってその一つ。好きな食べ物、生活のリズム、癖や性格、色々違いますよね?多くの違いを抱える2人が1つ屋根の下で家族をつくっていく訳ですから」。

そしてダイバーシティ感覚のある人は「軸が多様」と続ける。「効率がいいとか、インパクトが大きいとか、儲かるとか、多くの場合こうした軸で物事が評価、判断されています。それだけで判断すると、必ず勝ち組とか負け組とか出てきてしまうけど、軸が多様だとより多くの他者を受け入れることができます。そしてそうすれば、世の中はもう少しギスギスしないであったかくなると思うんですよね」。東京生まれ東京育ちの本間さんがそうした感覚になったのは、世界各国、そして東北を始めとした日本中の地域で数々のふれ合いを続けてきたからだと言う。

「僕は、『自分は受け入れられている』という感覚を持てないと、人は生きていけないと思っています。違いも、似ているところも両方があるけれど、目の前の人を受けとめるという姿勢が、結局ダイバーシティを実践することなのだと感じますね」。

本間勇輝(ほんま ゆうき)
NPO法人HUG代表理事

1978年生まれ。富士通(株)を経て2005年(株)ロケーションバリューの創業に携わり取締役COO就任。2009年に退社、12月より妻・美和さんと約2年間の世界一周旅行へ。帰国後NPO法人HUGを設立し、東北復興関係者のための業界紙『東北復興新聞』の発行等を行う。ライフワークとして「ソーシャル・トラベル合宿」を毎年海外で開催。

関連URL
NPO法人HUG http://h-u-g.jp
東北復興新聞 http://www.rise-tohoku.jp
共同著作『ソーシャルトラベル 旅ときどき社会貢献。』(自由国民社)
『3years復興の現場から、希望と愛を込めて』(サンクチュアリ出版)

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ライター:co-maki(今井麻希子)

取材・文: co-maki/今井麻希子
Reporting and Statement: co-maki-imaimakiko

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