cococolor cococolor

22

Dec.

2024

interview
25 Jul. 2024

新連載! DEIな企業風土の耕し方 vol.1 アマゾンジャパンの場合(前編)

硲祥子
副編集長 / Business Designer
硲祥子

人的資本経営、社員のダイバーシティ、インクルーシブな価値提供…。企業にとって、対顧客、対社員、対株主、さまざまな視点でダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(以下DEI)の取り組みの重要性は増す一方。ただし、日本ではいまだ多くの企業がDEIを風土・文化として浸透させきれていない現状があるのも事実です。そこで、すでにDEIの取り組みを精力的に行い、インクルーシブな企業風土を育てている企業の皆様にお話を伺うことで、「DEIな企業風土の耕し方」のヒントを探る連載をスタートします。

今回その第1弾として、先日東京レインボープライド2024にてゴールドスポンサー協賛をされていたことも記憶に新しい、アマゾンジャパンさんの事例をお伺いしたいと思います。

お話を伺った人:塩澤 絵衣子さん(アマゾンジャパン glamazon Japan Co-lead)、青木萌さん(電通 アマゾンジャパン担当プロデューサー)

聞き手:硲 祥子、半澤絵里奈(いずれもココカラー編集部)


:塩澤さんの職務におけるミッションを教えてください。

 

塩澤さん:現在、私は、アマゾンジャパンのglamazonというアフィニティグループのJapan代表を務めております。glamazonというのはAmazonに勤めているLGBTQIA+の方々を支援するためのボランティア団体のようなもので、有志の社員の方々が集まって、東京レインボープライドスポンサーをしたり、社内で色々なLGBTQIA+向けのイベントを開催したりしています。

少し遡って話をしますと、私は5年前にAmazonにDEIプログラムマネージャーという肩書きで入社をしました。Amazonは「Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)」が会社を支える重要な土台であると考えており、全事業にわたってDEI推進に取り組む役職を定めているのですが、アマゾンジャパンでは5年前にそのような役職が初めて創設されたタイミングでした。その当時、初期のDEIプログラムマネージャーの一人として、進むべき最良の道がわからない状況でした。5年前はまだ日本語の文献がそもそも少なく、ハーバードビジネスレビューのネット記事を検索したり、facebookの元COOでいらっしゃった、シェリルサンドバーグさんの「LEAN IN」を読んだり、そういったところからヒントを得つつ、ゼロスタートからどうやってDEIを社内で浸透できるか、色々試行錯誤してきたという経緯があります。

Amazonでは、上司や上層部のが、非常にDEIを重要な位置付けとして捉えているので、私の仕事はすごくやりやすかったです。通常ですと、営業目的や利益が優先されるなど、どうしてもDEIは日々の業務の中で埋没してしまいがちです。ですがAmazonでは、リーダーのミーティングの中で年間のダイバーシティーカレンダーが組まれ、3月は必ず国際女性デーの、4月はアースデイのアクションを、5月は、GAAM (Global Accessibility Awareness Month)に合わせて障害者のための支援に関するアクションを行う、6月はPride Month…という形で、月ごとに取り組みが決められています。そんな中で、DEIについて四六時中考え、いろいろな文献を調べ、上層部に対して提案・実施を行う、という一連の仕組みやポジションが整っていたことは、とても恵まれていたと思います。仕組みの時点で、しっかりDEIプログラムマネージャーというポジションが必要だと、組織の皆さんが強く認識してくれている環境かどうかというのは、非常に大きいと思うんですよね。

 

:そもそも、DEIプログラムマネージャーというポジションが作られた背景はどこにあったんでしょう。

 

塩澤さん:部署ごとのチームでは解決できない、横断的なプログラムを組む必要があるタイミングがありますよね。たとえば、物流拠点で働く人が、本社に異動したい時、その人に合うポジションがなかったり、どんなスキルを身につけたらいいのかわからない、ということで悩んでいたりする場合。スキルアップやキャリア形成などを目的に、部署やチームを横断したトレーニングやプログラムを作ったり、社内のトークセッションを設けたりなどが、プログラムマネージャーとしての役割になります。

その一環で、LGBTQIA+の方々の支援を特化して行いたいと思い、自分のその本業とは別でglamazonという社内団体にボランティアとして加入し、3年前から代表を務めているという流れになります。

 

:glamazonは今年の東京レインボープライドのゴールドスポンサーをされていましたが、どういった経緯でレインボープライドへの協賛を決められたのか教えてください。

 

塩澤さん:glamazonとして、毎年社員サーベイを実施し、AmazonがLGBTQIA+の社員にとって働きやすい職場かどうかをさまざまな項目で調査しています。アマゾンジャパンは2020-2021年のコロナ禍で、東京レインボープライド(下記TRP)参加を見送ったのですが、その年のサーベイの結果を見たら、皆さんすごくそれに「がっかりしました」という意見が多かったんです。やはりTRPはすごく大きなイベントですし、そこにAmazonがスポンサーとして入っているということは、会社として本気で取り組んでいるという姿勢を表明する大事な機会だと改めて感じました。その結果を持って、社長のジャスパー・チャンに、社員にとってもTRPはすごく大事な位置付けなので、スポンサードをしたいと直談判しました。ジャスパーも快諾してくれ、昨年はパレードに参加できるシルバースポンサー協賛を実現できました。

ですが、終わってみるとブースの大きさや造作などについて、社員の方から「もう少しAmazonブースに本気度が伝わるものであってほしい」というシビアなフィードバックが数々ありました。改めてリーダーシップにそういった社員のフィードバックを伝え、今年初めてゴールドスポンサーとして参加することができたという形です。

 

:なるほど。社内からのフィードバックやサーベイをとても重視されているんですね。

 

塩澤さん:Amazonでは、データドリブンであることが重視されています。何か提案をする際には、関連するデータやファクトで裏付けることが重要です。

 

:日本企業であっても、経営層を動かす時には数字も一緒に説得する必要があるという状況は一緒だと思うので、とても参考になります。また、今回TRPへブース出展される際、どのようなメッセージを伝えようとしていたのか、というあたりも教えていただけますか。

 

青木さん:Amazonのロゴは「矢印が「a」から「z」に伸びており、Amazonには、「A」から「Z」、つまり全ての商品が揃っている事を意味していると同時に「お客様の満足を表す笑顔」が表現されています。」それはLGBTQIA+関連の商品、サービスであっても同じです。

昔は手に入れたいものがなかなか手に入れられなかった人にとっても、今はAmazonで誰でも簡単にどんなモノ・サービスにもアクセスできる。全ての人のためにあらゆる商品を揃えているということこそが、Amazonがビジネスを通してお客様に提供するインクルーシブネスであり、AmazonとしてのLGBTQIA+コミュニティのサポートの仕方です。今回、ブースでは「Unbox Our Pride! さあ開けよう、自分らしい毎日。」をメッセージに、実際にAmazonサイトで売られているLGBTQIA+関連の商品をglamazonの皆さんにピックアップしていただき、それらをご来場者の皆さんに紹介しつつ、そんなAmazonとしての思いを伝える仕立てにしました。

glamazonの皆さんの尽力もあり、今年のTRP Amazonブース参加者に対する調査では「自分に関係のある製品を提供してくれる」に対し、そう思う・計 94%との回答。

 

:なるほど、他のプラットフォーマーにもなかなかできない、Amazonさんらしい取り組みだったのだと、とても納得感があります。


インタビュー前半はここまでです。

後編では、glamazonの課題感や今後の挑戦について詳しくお伺いしていきます。

 

インタビュー後編へ続く

取材・文: 硲祥子
Reporting and Statement: shokohazama

関連ワード

関連記事

この人の記事