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20

Nov.

2024

event
2 Apr. 2024

Femtech Fes! イベントレポート

飯沼 瑶子
副編集長 / プランナー
飯沼 瑶子

■今年で4度目のリアル開催!“Femtech Fes!”
2024年2月9~11日、六本木アカデミーヒルズで開催されたFemtech Fes!は、フェムテックという言葉がまだ耳慣れなかった2019年に始まり、フェムテック市場の拡大とともにその規模を拡大、今年は60社のパートナー企業が参画しました。
フェムテックの選択肢は少しずつ増えてきているものの、まだそれは氷山の一角だという課題感から、イベントのキーモチーフを氷山とし、今すぐ使える・発売に向けて準備の進んでいる商品のエリアと、潜在ニーズを満たす可能性のある、まだ日本では手に取ることが出来ないものも含む新たな選択肢のエリアの2つにゾーンを分けて、国内外23ヵ国5地域から約200以上のプロダクトやサービスの紹介が行われました。


■大盛況の会場には男性の姿も
実際に見て、触れられるだけでなく担当者からの熱の入ったプロダクト紹介に加えて、物販が行われるブースもあり、会場は活気にあふれて大賑わい。
イベント会場として特徴的に感じたのは、会場内に託児所(有料:1名500円/60分)が用意されていたこと。そしてベビーカーをお使いの方が階段を経由せずにお越しいただける、会場までの経路案内があったこと。託児所は連日、事前予約と当日受付希望で満員になるほどたくさんの利用があったといいます。
 


(会場の様子、熱心にプロダクトを見る男性の姿も見られました)

さらに、会場は展示エリアに留まらず2か所のトイレ内にも…!

(おりものシートについては、1つのブランドでこんなにたくさんラインナップがあることに驚きました。)

■国内企業は吸水ショーツとデリケートゾーンの保湿/ケア用品が台頭
既に日本で手に取れる選択肢を紹介するエリア1では、吸水ショーツとデリケートゾーンの保湿/ケア用品を紹介するものの数が多く感じました。吸水ショーツはかつてフェムテックブランドがオリジナル商品として販売するものが中心でしたが、本イベントでは素材メーカーやスポーツ/アパレルブランドが販売する商品が増えてきた印象があり、こういったメーカーが吸水ショーツの開発・製造に加わったことで、吸水の機能だけでなく、履き心地の改善やデザインのバリエーションがますます拡がっていると感じました。吸水ショーツの多様性が出てきたことで、他の生理アイテム同様、それぞれが自分のニーズに合った商品を選べるよう、売場での多面的な展開にも期待したいです。 

(繊維を得意とするセーレン株式会社による、無縫製で超ストレッチ素材の吸水ショーツ「hanayaka®」)

デリケートゾーンのケア用品については、保湿ジェルや膣内に特化した乳酸菌に着目し開発されたサプリメントなど複数のアプローチがあり、サプリメントについては乳酸菌や大豆イソフラボンなど、医薬系のメーカーが自社の強みとする成分をフェムケアに活用した商品の展開が進んでいる印象を受けました。

■注目ブース3選
興味深かったブースをご紹介します。

1) トイレットペーパー型のナプキン:Pads on a Roll/Egal pads
日本ではまだ手に取ることができない選択肢を紹介するエリア2にて展示されていた、Pads on a Roll。
「トイレットペーパーは持ち歩かないのに、なぜ生理用品は持ち歩くのか?」という素朴な疑問から、アメリカのEgal pads社が開発した商品。Egalの由来はEqual(平等)で、生理の平等は解決できる問題だという考えを背景にしています。
個包装された薄いナプキンがロール状になっており、1枚分を引っ張って切り取る仕組み。専用ケースの使用は必須ではなく、既存のトイレットペーパーホルダーに設置することも可能。アメリカの学校など公共施設を中心に導入が進められているそうで、生理の貧困への解決策として、日本での拡がりにも注目したいです。

(Pads on a Roll展示の様子)

2) おりもののニオイをチェックできるブ ース:サラサーティ/小林製薬
普段、自分以外のおりものを見ることは一般の人にとってなかなかないことだと思うのですが、このブースではおりものの香りや形状のバリエーションを紹介し、実際に体験(見る・嗅ぐ)ことができるのは初めての体験でした。
注意が必要なおりものの色や状態を知ることで、異常な状態に自分で気づき、医師の診断を受けることができるようになるきっかけになるという視点からも、こういった機会の重要性を感じます。
 
(注意すべきおりものの形状についての紹介)
 
(異常のあるおりものの香りを体験できる展示。)


3) 生まれる前から生まれた後までサポートする:相模ゴム工業
相模ゴムは1933年に関東大震災や世界恐慌後の不況・貧困の中で、何人もの子どもを抱えて避妊の方法も知らずに苦しんでいた多くの女性の惨状に応えるべく、「女性の体は女性自身で守るべき」と考えた創業者の女性、松川サクが日本初のラテックス製コンドームを開発・発売し、世に送り出した会社。
その相模ゴムはコンドーム以外の商品も取り扱っているのをご存知でしたか?
精子の状態を測定するセルフチェッカーや、自宅でできる妊活用ののセルフシリンジ法キットなど、妊活をサポートする商品に加えて、出先で便利な消毒済みの使い捨て哺乳瓶なども販売しており、性と生に関する広いラインナップが印象的でした。

(相模ゴムが販売する商品展示)


■フェムテック市場拡大の価値
フェムテック市場の拡大は、女性のQOL向上はもちろん、企業にとってビジネスチャンスの拡大につながるのみならず、医療の現場にも良い影響を与える可能性があります。
Femtech Fes!で展示されていたパネルの内容によると、例えば現在の日本では「病院=病気になったら行くところ」になっているため、「病気の人」のデータが中心になっているところ、フェムテックデバイスが拡がることで、現在病院では取りづらい「健康な人」のデータが取得できるようになる可能性も考えられます。また、経血量、生理痛、睡眠の質など、これまで把握されてこなかった情報が可視化できるようになることで、不明とされていた病気や不調と生活習慣の関連が分かるようになるかもしれません。健康寿命がのびることで、将来的な医療費削減に貢献できる可能性もあるとのことです。

フェムテックによる新たなビジネスやサービスの拡がりは、今後も一層加速していくと考えられ、引き続きこの分野に注目していきたいと思います。

取材・文: 飯沼瑶子
Reporting and Statement: nummy

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