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Nov.

2024

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25 Dec. 2023

「ジェンダー課題チャートvol.2」リリース!制作チーム座談会

硲祥子
副編集長 / Business Designer
硲祥子

2023年12月13日、電通ダイバーシティ・ラボは「ジェンダー課題チャートvol.1」(女性版)に引き続き、「ジェンダー課題チャートvol.2」(男性版)をリリースしました。

ジェンダー課題チャートは、ジェンダー・ギャップ問題の解決に向けた施策の一つとして、アイデア発想を支援するツールです。vol.1と同様、デジタルブックの形式で無償提供されています。

 

今回、vol.2(男性版)制作に携わったメンバーに、制作にあたっての気づきや思いなどを伺いたく、話を聞いてきました。

<ジェンダー課題チャート制作チームのメンバー>

中川さん:クリエーティブディレクター/コピーライター

松永さん:クリエーティブディレクター/アートディレクター

阿部さん:コピーライター

硲:ビジネスデザイナー(今回のインタビュー聞き手)

 

硲) 今回集まって頂いた皆さんの中には「ジェンダー課題チャートvol.1」(女性版)を制作していたメンバーもいますが、vol.1と比べた差異や、vol.2制作時の「気づき」があれば教えてください。

松永さん)制作の最初のステップで、男性がどのようなジェンダー課題に関わっているのかを自由にブレストするワークショップを社内で実施しました。その際、思った以上に男性社員がさまざまな課題を認識しているんだな、と思ったのが最初の印象。ジェンダーという切り口だと女性に比べてやや問題意識が薄いかもと思っていたので、少し意外でした。

中川さん)そのワークショップの時点で、課題が思ったよりもたくさん出てきましたね。今回は「ジェンダー課題チャートvol.1」(女性版)を参照しながらワークショップをしたので、考えやすかったというのもあるかもしれません。いかにジェンダーの課題が男女で合わせ鏡になっているかの表れとも考えられますね。

松永さん)そもそも、「ジェンダー課題チャートvol.2」のプロジェクトを始めようと思ったきっかけのひとつは、ジェンダー・ギャップ指数。特に政治・経済における構造的な男女間の格差がG7最低の順位の要因であることから、女性版と対で男性版のチャートを作ることに意義があると思いました。ジェンダー課題は男性・女性の課題が表裏一体で、男性と女性が抱える問題は凹凸のように合わさっている。そんな様子をビジュアルでも表現したいと思い、表表紙と裏表紙が表裏のデザインにしてみたり、工夫をしました。

「ジェンダー課題チャートvol.2」表表紙

「ジェンダー課題チャートvol.2」裏表紙

阿部さん)また、“自分の内面と向き合わないと、問題に気づきにくい”というのも発見のひとつでした。妊娠や育児は男性からもわかりやすい課題が色々出ましたが、介護などはあまり声が上がらなかった。みんなが自分ごと化しにくい課題は、当事者の中で閉じてしまっているのかもしれません。例えば、ワークショップで「介護・育児休暇を取得する人が少ない」というトピックが上がった際、「(男性は)みんな介護・育児休暇を取りたいんだっけ?」という議論になりました。データ的に見ると明らかに課題ではあるけど、男性にとって課題と感じられているのか?というと、ギャップがありそうでした。

松永さん)女性から上がる課題は、社会のシステムを変えていかないといけないようなもの。一方で男性から上がってくる課題は「相談相手がいなくなる」など、孤独感・孤立感に関するものが多かったのも印象的でした。収入はあるけれど、本質的な人間らしさとか、人とのコネクションや感情的なつながり構築に困難を抱えている。

会社でバリバリ働いているころはそうした課題は無視しても生きていけるけど、50〜60代になって会社で築いてきたポジションから解放されたりして、ふとした時に気づく、といったケースが多いのかもしれないですね。

 

硲)制作する際に、特に気をつけたことはなんですか?

中川さん)悩んだのは“男性の中の多様性”をどうチャートの中で表現するかというポイントです。社会で望ましいとされる男らしさを体現している男性だけでなく、それを体現できずに従属的な位置に置かれてしまっている男性など、多様な男性のあり方について触れたいけれど、統計的データになると「男性」として一括りにされてしまうので、とても難しかったです。

また、「ジェンダー課題チャートvol.1」(女性版)の場合は単純に「女性が困っていること」という視点で課題をピックアップしていましたが、「ジェンダー課題チャートvol.2」(男性版)制作の際は、男性の困りごとという視点に加えて、ジェンダー平等を阻む要因で男性が関わっているものは何かという視点を大事にしました。

というのも、ジェンダー・ギャップ指数に表れているように、圧倒的な女性差別がまだ解消されていない日本の現実の中で、男性の生きづらさに光を当てるには繊細な議論が必要だと考えているからです。本来的には、男性がいわゆる望ましい「男らしさ」に違和感を表明することは、現状のジェンダー秩序を捉え直すために、とても意味のあることのはずです。ただ、残念ながらその議論は、男女の生きづらさ比べに転落してしまうことがままあります。だからこそ、「ジェンダー課題チャートvol.1/ vol.2」では、統計データなどのファクトをベースに現状を整理し、ジェンダーの課題が男女で地続きになっていることを示すことで、ジェンダー平等の実現に向けては、男女どちらかではなく包括的に取り組む必要があるのだという気づきに至ってもらいたいという狙いがあります。

松永さん)ジェンダー秩序を壊すという意味では、チャート内のビジュアルもステレオタイプを助長しないトーン&マナーを強く意識しました。男性=ブルーといった固定観念に縛られたカラーリングは選択せず、男性のジェンダー課題の根底に流れる「孤独・孤立感」を包み込むような暖色系でまとめたのもポイントです。

中川さん)また、「ジェンダー課題チャートvol.1」制作時と同様、ファクトベースの客観性は引き続き大事にしています。ワークショップで課題として上がってきたトピックは必ずデスクリサーチを行い、データでその課題が裏づけられるか確認しました。さらに、必要なデータは1つ1つ出典元にデータ掲載の許可も取っています。大変ですが、客観性・信頼性を保つためにこだわっているポイントです。掲載のご連絡を差し上げた出典元の方から、「男性のジェンダー課題でここまで包括的な整理がされているデータはなかなかないので、とても興味深い」といったお声も頂戴し、励まされました。

硲)また違う視点ですが、今回vol.2の男性版を出すことで、女性版・男性版と揃うだけに、ノンバイナリーなど男女二元論にあてはまらない性自認をもつ方を排除してしまうツールにならないか、という点も非常に気にしていましたよね。現在、存在する統計データの多くが、「男性/女性」という二元的な性別区分で聴取されたものであり、同じフォーマットでジェンダーの多様性を反映したチャートを作るのが実質的に不可能なのも確かです。電通ダイバーシティ・ラボでは、これまでもLGBTQ+についての調査研究をしているので、「LGBTQ+調査2023」もあわせて見ていただきたいなと思います。

 

硲) 最後に、「ジェンダー課題チャートvol.2」をどのように使ってもらいたいですか?

松永さん)サステナビリティ、ESGを追求する動きが盛んになる中で、「ジェンダー」は経営者の方の関心も高い分野だと思うので、ビジネスに影響する重要なトピックとして、課題意識を持っている方にうまく使ってもらえたら。たとえば企業の新商品・サービス開発を行う際、社内のジェンダーバランスがどうしても男性に偏っている企業もあるかと思いますが、男性主体ではない視点を保つためにも「ジェンダー課題チャート」を女性版・男性版合わせて活用することで、包括的な価値提供を考えていくきっかけにしてほしいと思います。

中川さん)どうすれば性別に関係なくより働きやすくなるか、そのために企業はどんなサポートをできるかを考えるヒントにもなると思っています。商品開発やマーケティングだけでなく、企業の人事・HRの方などにもぜひ参照してもらい、福利厚生や社内制度の課題発見やアップデートのための、参考資料としても使ってもらえるのではと思っています。

阿部さん)ソーシャルグッドや社会課題と手を繋いだ施策が昨今とても求められていると感じます。ソーシャルインサイトを探すシーンはたくさんあると思うので、その際にも有効活用していただけたら嬉しいです。

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ジェンダー課題チャートvol.2のダウンロードはこちらから!

https://www.dentsu.co.jp/news/business/2023/1213-010672.html

 

昨年リリースされたvol.1も、合わせてチェックしてみてください。

https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0307-010501.html

取材・文: 硲祥子
Reporting and Statement: shokohazama

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