災害時の多様性への理解と配慮について
- 編集長 / プロデューサー
- 半澤絵里奈
2024年もcococolorをどうぞよろしくお願いいたします。
年始早々、国内では大きな災害が起きてしまいました。
困難な状況にある方々が1日も早く落ち着いた生活を取り戻されることを願っています。
長くDEIに関わってきた立場として、臨時的に災害時の多様性への理解と配慮についてまとめました。
なお、下記の情報はごく一部に留まります。必要に応じて、追記・修正をしていきます。
<女性/女児に関すること>
・避難所の運営上、女性の安全に関する配慮が必要です。特にトイレや着替えの場所に関する性犯罪対策のための安全確保が重要と言われています。運営側の犯罪予防が第一ですが緊急時は運営の人材が限られているため対応しきれないこともあります。使用者側である女性/女児も(あるいはその家族/知人も含めて)、一人でトイレや明かりの無い場所に行かないようにする工夫などが必要です。
・生理用品が不足していたり、婦人科系の薬品が不足している可能性があります。
・妊娠している女性がいる可能性があります。
・個人の価値観に限らず、様々な理由で母乳育児をしている人もいます。授乳スペースの確保が必要です。
<子どもに関すること>
・月齢に合せた複数種類のおむつとおしりふき、またはその代用品となるものが必要です。
・赤ちゃん/幼児は時間や場所に関わらず泣きます。泣き止ませようと周囲が頑張っても、泣き続けることも多くあります。周囲が泣き続ける理由を解決できないこともあります。そのことを知ってください。
・長時間、災害の恐怖やニュースに触れ続けることで精神的なストレスを抱える場合があります。ストレスをうまく言葉にできずに普段と違う言動に現れることもあるため、安全・安心感を与えるよう心がけたり、不安な気持ちを表現できるような環境を作ったりすることが必要になります。
静岡大学が『災害後のこころのケアハンドブック』を発行しています。
<LGBTQ+/性的マイノリティに関すること>
・同性パートナーの方々が避難所、支援の場所を使うことももちろんあります。異性か、同性かに関わらず大切なパートナー、家族として一緒にいます。パートナーの安否を確認したい方、災害公営住宅にパートナーと暮らしたい方も今後いらっしゃると思います。差別をしないでください。
・避難所では、戸籍名の記載や性別に関わる物資の受け取り、トイレ、風呂使用の問題が発生します。その際、トランスジェンダーの方に対する差別にも気をつけてください。当事者やその関係者から相談があった際に、現状においてはどのような対応ならできるのか会話をして欲しいと考えます。
・自分が同性愛者であることやトランスジェンダーであることをオープンにしていない方も多くいます。支援の現場でその事実を知りえても他の人にそれを伝えたり、公言したりしないようにしなければなりません(アウティングの防止)。
・電通ダイバーシティ・ラボでは、LGBTQ+について知る/考える/行動するための『アライアクションガイド2023』を公開しています。ご自由にご利用ください。
<病気/障がいに関すること>
・障がい者への合理的配慮が必要です。物理的な配慮だけではなく、心のバリアフリーも重要です。サポートをするときはいきなり手を出すのではなく(本人にはやり方があったり、いきなり車いすを持たれたりするとびっくりします)、障がい者本人にどのようにサポートをして欲しいか声をかけてください。
・病気や障がいは、目に見えるものだけではありません。病院に入院をしていなくても、速やかに投薬や透析などを必要としている人、病気の治療中で体力のない人がいます。そしてその方々は避難することで、手元に薬や症状がわかるものを持ち合わせていない可能性があります。
・自分がいつも過ごしていない場所、知らない人や人が大勢いる場所が苦手な人がいます。その方が落ち着く方法を知っている家族や医療者がそばにいない可能性もあります。
・情報アクセシビリティの確保が重要です。視覚障がい者、聴覚障がい者、ディスレクシア(文字の読み書きに限定して困難を感じる学習障がい)の方々とも最新情報や避難、安全確保についての情報を共有する方法を担保する必要があります。
・困っていそうな方がいて、周囲に医療者やソーシャルワーカーがいたら声をかけてください。
・「被災地で、発達障がい児・者に対応されるみなさんへ」という記事を国立障がい者リハビリテーションセンターが掲載しています。
・様々なアレルギー疾患の方がいます。アレルギーにより、避難所で提供される衣服や食料を利用できない人がいます。
・「災害時の心がまえ for breast cancer survivors(中外製薬:監修/山本豊先生)」の一部をキャンサー・ソリューションズ株式会社がFacebookで公開しています。がん種に関わらず、患者さんにとって参考になる情報があるかもしれません。
<多文化>
・情報アクセシビリティの確保が重要です。特に、日本語を母語としない方々に複数言語で対応をできることが望ましいですが、対応できる人材やアプリなどがない場合には、イラストで伝える方法があります。電通ダイバーシティ・ラボでは、ピクトを公開しています。使用できるものがあれば自由にご利用ください。
手洗いや衛生面等に関するピクトが多い→ https://cococolor.jp/coronataisakupicts3_211112
食品ハザードに関するピクト→ https://cococolor.jp/fhp2021
・他にも多言語対応が難しい場合、やさしい日本語の活用も可能です。
・宗教/信仰の違いを認め合う行動が必要になります。避難所が長期の運営となる場合、祈りの場所や食品への配慮(ハラルフード等)が必要となることもあります。
・信仰によっては、女性は肌を見せないように衣服で隠します。
<その他>
・災害の受け止め方は人さまざまです。見てしまった光景や被害状況を受け止められる人もいる一方で、そうではなかったり、長くトラウマとなる場合や気分が悪くなる人もいます。親しい人との会話、取材いずれも配慮が必要です。
・今回の災害で、過去の災害を思い出し気分が憂鬱/または興奮状態になる場合もあります。おかしいなと思ったら報道番組等から距離を置いたり、周囲との会話にも気をつけることが必要です。
(2024年1月9日時点)
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