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Jun.

2024

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10 Oct. 2023

北欧のユニバーサルデザイン体験「ノルウェーのUDは自然環境と共に」

植田憲二
アートディレクター/UDプランナー
植田憲二

「北欧のユニバーサルデザインは学ぶべきである」という専門家は多い。今回はcococolorのUDプロジェクトの2人が北欧4カ国を巡る旅で感じたことや訪ねた施設・出会ったデザインを紹介したいと思います。ノーマライゼーションに代表される北欧のUD概念はそれぞれの国の歴史や文化で培われたものですが、ノルウェーはとりわけ自然環境の影響が大きいように感じました。

■ 車イスでラクに展望デッキに上がれる独特なスロープデザイン

フィヨルド観光はノルウェーの人気コンテンツで豪華客船が毎日停泊しています。ただ「しばらくすると燃焼エンジン船は入港禁止になるから」との話。近年の地球温暖化でノルウェーの氷河も影響を強く受けているので、人々の環境意識はかなり高い。その背景からこの観光船はいち早くハイブリッドエンジンで開発されIAUD国際デザイン賞2019/大賞を受賞しています。(現在はElectric engine:Future of The Fjords)

船体のスロープとデッキからは雄大な自然環境を見ることができる

そしてこの独特な船体フォルムは、車イスでも最上部の展望デッキまでゆったりと上がれるデザインになっていて、この発想には驚きです。また障害のあるなしも分け隔てなく受け入れるコンセプトと環境の持続可能性が高く評価されているだけではなく、実際に乗船してみるとほとんど無音そして船底のマルチハル形状でほぼ揺れない乗り心地にも驚きました。フロムからグドヴァンゲンへの交通手段でもあるこの船のキャビンはかなり広々としていて木目調のサインデザインで統一されています。

車イスでも余裕で移動できるスペース / 分別ゴミは捨口の形がひと目でわかりやすい

■西ノルウェー応用科学大学のインクルーシブデザインの取組み

古都ベルゲンにある西ノルウェー応用科学大学クロンスタッドキャンパスはインクルーシブデザインの原則を採用し全ての人のための学習を提唱しているそうです。またキャンパスの再開発に伴う建築プロジェクトには、開発段階ごとのユーザーグループを巻き込んだインクルーシブデザインプロセスを採用しています。今回はシニアプロジェクトマネージャーのKnut Erik Kismul氏に当時の話を伺うことができました。

古い過去のものと未来への新しいもの、大学と近隣地域を『つなぐ』プロジェクト

キャンパスに隣接した公共エリアの鉄道車両基地跡をどうするのか、歴史を物語る文化遺産をどう修復しながら統一されたキャンパス施設を作るのが課題でした。そこで「コンペティションで広くアイデアを募った」と聞きました。新しい学舎は天窓からの日差しが眩しい有機的な設計になっています。点字ブロックは方向性がわかるデザインになっていました。非常時に車イスユーザーを階段で降す器具も設置されています。

ビーバー(アート作品)が所々に出現:写真右下

外を見ると新しい学舎練の中にレンガの建築が目に入ります。実は図書館になっていて鉄道車両屋は当時のままだそうです。施設の所々に昔の線路跡が残してあり、上手く建築デザインに取り込んでいます。そして各学舎棟には現代アートが展示されていて古いものと新しいものが自然と同じ空間にありました。

線路はデザインされてカフェの中へ:右上 / 体育館から線路が続き車両回転台へ:右下

ガイドをしていただいた Knut Erik Kismul 氏

『ここの図書室はかなりこだわって作ったから気に入っているスペースだよ』とKnutさん。当時のレンガ壁をそのまま使っています。日照時間の限られるノルウェーでは天窓から外光を取り入れるというのは大切なポイントかと感じました。西ノルウェー応用科学大学クロンスタッドキャンパスもIAUD国際デザイン賞2022/大賞を受賞しています。

■ベルゲンの路面電車ビーバーネンのUD/アクセシブルデザイン

ノルウェーではビーバーが愛されているのだなと思ってしまいますがライトレールの意味です。空港からベルゲンの街へ走るトラム『Bybanenビーバーネン』はUD企業に与えられるイノベーション賞/交通部門賞を2015に受賞しています。プラットフォームから入り口がバリアフリーで車内空間もゆったりとして快適でした。車イスやベビーカーユーザーがかなり優遇されているデザインです。

段差がないのでベビーカーでも乗り降りがラクな構造

ユニバーサルは概念、アクセシブルデザインは実践なのか。

グラフィックデザイナーとしてどうしてもサインやピクトグラム に目がいってしまいます。西ノルウェー 応用科学大学のサインでも点字がすべてに丁寧についていて、その事をKnutさんに尋ねると「えっ普通ですけど」という答え。日本と比べるとDE&Iは既に日常としてあった上でデザインを実践してきた感があります。木工家具デザインも有名なノルウェーですが知人のノルウェー人曰く「長い冬の期間家から出られないから、家の中をどれだけ快適にするかをずっと考えていた民族だからだよ」と言われました。この辺りのUD思想について、もっと探究心が湧いてきました。UDの旅は続きます。

写真:植田UD研究所 田代デザインスタジオ

「ユニバーサルデザイン の旅」https://cococolor.jp/udnotabi

取材・文: 植田憲二
Reporting and Statement: kenjiueda

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