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Oct.

2022

interview
1 Sep. 2022

第15回 関西クィア映画祭 2022 開催。 「ミックスの場所」を目指して

岡部友介
プランナー
岡部友介

「クィア(Queer)」を切り口に、「性」をテーマにした映像作品を上映するお祭り、関西クィア映画祭。15回目となる今年は、9月に大阪と京都の2会場で開催します。

国内のセクシュアルマイノリティ系映画祭では最多の上映作品数で、今年は14の国・地域から集まった、合計28作品を上映。

後編の今回は、映画祭が目指す「ミックスの場所」という考えについて、実行委員の西木久実さん、ひびのまことさん、渡邊祥子さんにお話を伺いました。

前編はこちら:第15回 関西クィア映画祭 2022 開催。今年のミニ特集は「ノンバイナリー」

■今回15回目を開催するにあたり、関西クィア映画祭が大切にしたいこと

西木:映画祭が今改めて大事にしていきたいと思うのは、「ミックスの場所」であるということです。クィア映画祭を始めた2005年の話で、セクマイ(筆者注:セクシュアルマイノリティのこと)の場所と言えば、夜の世界がほとんどでした。たとえば、クラブだったりバーだったり。あとはネット上の掲示板とかですね。そんな中で、昼間にみんなで集まれるセクマイの場所をつくりたいということで始まったのがクィア映画祭だと聞いています。

─当時と比べると、昼間に集まれる場所は増えてきているのでしょうか?

まだまだ少ないですけど増えています。例えば、昼間に集まってお話する系のイベントは実はいっぱいあって。10代などのユースのための場所や、年齢に限らずお茶会みたいに集まろうという場所が検索したらたくさん出てくるようになりました。自分と同じような人に会いたいなーとか、私ってひとりなのかなと思った時に行ける場所は、選択肢としては増えてきています。

ただ、バーなどの場合、性のあり方によって区分されていることが多いです。例えばゲイバー。あとはウーマンオンリーバー。バーじゃなくても、昼間に集まってお話しようという場でもセクシュアリティによって分けていたりするところもあります。それに対してミックスという概念は、セクシュアリティで分けるのではなく、誰でもOKということ。混ぜこぜの場です。それを大事にしていきたいと思っています。でも、なぜそもそもウーマンオンリーの場所をつくろうとなるのか?そこには理由があります。

─なぜですか?

なにも制限を設けずに場所をつくると、今は男性中心の場になることが多いんです。女性差別がある社会の中で、時間やお金に余裕があるのは男性であることがほとんどですから。あとはナンパ目的の男性とか、女性同士の恋愛を性的に消費する目的でやってくる人もいるわけで、そういった影響を受けないためにウーマンオンリーの場所をつくっていたりするんです。理由があるわけですから、そういった場所を一概に批判したいわけではないんです。

ですが、なぜその中でクィア映画祭はミックスの場所でありたいかと言うと、私たちは昔からシスジェンダーでヘテロセクシュアルの仲間とも共に場所をつくって戦ってきたからです。それに、性のあり方が人生の中で変化することは普通にあります。ずっとヘテロだと思ってたけど、ある日、同性のことを好きになっちゃったみたいな。なのでシスヘテロの仲間もこの先セクマイになる可能性だって十分ある。その人たちを含めて仲間、自分ってセクマイかも?という人たちも含めて仲間。というのでミックスの場所でありたいと思っています。

■人にはそれぞれ、マジョリティの面とマイノリティの面がある

西木:自分たちのマジョリティの面に気づくためにも、映画祭はミックスの場所でありたいと思っています。コミュニティにやって来る人は、自分のマイノリティの面にしんどさを感じてやって来ると思います。異性愛者じゃない人は、異性愛者が中心の社会の中でしんどくなって、そうじゃない場所を求めてやって来ます。

コミュニティの中でいろんな情報に触れたり、いろんな人に出会って元気になることは必要です。しかし、そこでよくあることは、自分のマイノリティの面のしんどさに集中してしまうばかりに、自分のマジョリティの面に気づかなかったり、目を瞑ってしまったりすることです。

─たとえば、そのマジョリティの面とはどのようなものですか?

人種的マジョリティがあります。映画祭のメンバーには在日朝鮮人の人もいます。例えば、ミニ企画を開いた時に、参加メンバーで自己紹介をするんですけど、日本国籍を持っている人ってわざわざ自分で日本国籍を持っていますって言いませんよね。言わないということはみんな日本人なんだ、日本国籍を持っているんだっていう前提になる。けどその中で在日朝鮮人の人は名乗らないと居ないことになってしまうんです。名乗らないといけない時点でもうそこは日本人中心の場所なんです。

セクマイって社会の中で私たちを居ないことにしないでって言い続けてきたわけじゃないですか。ただ、そういったセクマイのコミュニティ内でもマジョリティ中心の雰囲気や構造があるわけです。でもそれっておかしいことで、自分たちが居ないとされて怒ってきたにも関わらず、今度は別の人たちを居ないことにしてしまっている。そこに開き直るのではなくて、どうしたら場所を変えていけるか。どうやったら私たちは変わって行けるのかということを考えて映画祭をやっていきたいと思っています。

─場所を変えていくために、どのようなことに取り組まれていますか?

西木:すでに始めていることとしては、人種や民族においてもマイノリティの映画も集めてプログラムを組むことです。

ひびの:私たちが映画祭を始めた頃にすごく盛り上がった作品として、『TOO MUCH PUSSY! フェミなあばずれ、性教育ツアーで大暴れ』があります。女の人が主体性を持って社会に喧嘩を売るっていう、かっこよくて元気が出る映画なんですけど、白人ばっかりなんです。

これを上映したのは2011年ですが、その時の私たちは違和感を持ちませんでした。でも今それを上映するとなると、あ、この作品白人ばっかりだよねということが気になる。そういうことが、少なくとも米国やヨーロッパのクィア運動や映画業界の中では当たり前の議論として出てくるようになっています。

セクマイコミュニティー内部でレイシズムを問うということは、最近突然始まったことではありません。1999年に「ゲイフロント関西」が「バイセクシュアル」の特集号をつくりました。「バイセクシュアル」を扱ったことは、おそらく日本で初めてで、非常に大事な特集号でした。当時、アメリカで開催された国際バイセクシュアル会議に参加した人たちのレポートがあり、「レイシズム・セクシズム・ホモフォビアこれらのつながりを考えよう。理解しよう。」といったメッセージのバッジが1999年の時点で配布されていることが書かれています。

─20年前からの繋がりがあり、長く議論されてきたことなんですね

西木:在日朝鮮人のセクマイも、ろう者のセクマイも、日本には様々なセクマイがいます。今年いきなり出てきたわけではなく、ずーっと存在しています。

ひびの:人種に関しては、私たちはこれを日本固有の文脈でも考える必要があります。日本の場合は侵略の歴史と植民地主義の歴史を見ていく必要があります。これまで関西クィア映画祭では、「日本のレイシズム—朝鮮人差別への無関心(2012年)」「日本軍『慰安婦』問題を本当に知っていますか?(2016年)」などの特集企画も行ってきました。また、プライドパレードで「女と男だけじゃない!日本人だけじゃない!」というプラカードを掲げた仲間も居ました。しかし、私たちはまだ完全じゃないですし、ぜんぜんできていないです。だからこそ、どうやってこの状況を変えていくのかを考えていく、その取り組みをしている最中なんです。コミュニティに変化が生まれ、それが大きくなったら社会を変えていけるはずだと思っています。

■フィリピンハーフや、ろう者が主役の作品も上映

『愛達』 (提供:関西クィア映画祭)

西木:今年上映する『愛達』という映画は、初めて国内作品コンペティションを開催したときに最優秀観客賞を受賞した作品です。監督の稲津さんはフィリピンハーフで、自身が主演をしていて、実のお母さんが映画の中でもお母さんを演じているという、本当に自分の人生を描いたものなんです。ゲイである稲津さんが、クリスチャンの母親との関係性の中での、苦しみやもがき、しんどさを映画にしています。

他にも今年は『世界は僕らに気づかない』という映画も上映します。お母さんがフィリピン人でお父さんが日本人のミックスルーツの高校生の男の子に、同性の恋人がいるというお話です。『愛達』と『世界は僕らに気づかない』は、ぜひセットで見てほしいです。

『世界は僕らに気づかない』 (提供:関西クィア映画祭)

また『ジンジャーミルク』は、ろう者の今井監督から聴者のセクマイへのメッセージが込められた映画だと思っていて、聴者であるなら、自分の特権についても振り返るきっかけとなる作品だと思います。

なにも考えずに作品を選ぶと、セクマイの中のマジョリティの映画、日本人の映画、聴者の映画、健常者の映画ばっかりになってしまいます。日本のセクマイの中のマイノリティを主役とした映画を上映することも、今年の大きな特徴のひとつです。

『ジンジャーミルク』 (提供:関西クィア映画祭)

─見に行くのがとても楽しみになりました!今回初めて映画祭に参加される方へメッセージを頂けますでしょうか

渡邊:一人で映画に行くことに緊張する方もいると思います。扱っているテーマが今まで知らなかったことや意識していなかったことで、さらに緊張するかもしれません。知らないことを知ることはすごく勇気がいるけど、それはすごく楽しいことであり、豊かなことであるってことを、クィア映画祭を通して感じてもらえたらうれしいなと思います。映画との出会いがきっかけで自分の考え方や人生が変わったという人がいたら万々歳。とにかく、お祭りなので、本当に楽しんで欲しいです!

西木:絶対に可能性が広がると思うのでぜひお越しください!映画だけ見にくるだけでもいいですし、例えば「初めて来ました」って声をかけていただけたら嬉しいですし、大歓迎です!

─楽しみにしております!

二人:ぜひ!

今回の取材で、コミュニティ内に生じるマジョリティ/マイノリティの構造の課題、それに対する「ミックスの場所」という映画祭が目指す姿ついて学ばせていただきました。映画祭では今年も、マイノリティの中のマイノリティを扱った映画が上映されます。その存在について、まずは作品を鑑賞して知ることから始めること。それが大切だと思います。私も会場に行き、作品を通じて自身が持つ特権や、マジョリティの面について改めて考える機会にしたいです。

記事内で紹介した作品のみならず注目の映画が盛りだくさんですので、詳しくは下記WEBサイトよりプログラムをチェックしてみてください!

第15回 関西クィア映画祭 2022

【大阪】
期間:2022年9月2日(金)〜8日(木)
会場:シネマート心斎橋
大阪市中央区西心斎橋1丁目6−14 ビッグステップビル4階

【京都】
期間:2022年9月23日(休・金)〜25日(日)
会場:ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川
京都市左京区吉田河原町19-3

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取材・文: 岡部友介
Reporting and Statement: yusukeokabe

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