DEIな企業風土の耕し方 vol.3 日本航空株式会社の場合(後編)
- 編集長 / プロデューサー
- 半澤絵里奈
DEIの取り組みを精力的に行い、インクルーシブな企業風土を育てている企業の皆様にお話を伺うことで、「DEIな企業風土の耕し方」のヒントを探る本連載。
第3弾は、トップダウンとボトムアップの組み合わせでDEIの定着を進める、日本航空株式会社(以下、JAL)です。
後編では、組織においてDEIを文化として根付かせるためにどのような取り組みを行っているのか詳しくお伺いしていきます。
※前編はこちらから
お話を伺った人: 上野桃子さん(日本航空株式会社 人財本部人財戦略部DEI推進グループ)
聞き手:川口真実、楫西一公、鈴木陽子、半澤絵里奈
――組織において、DEIを文化として根付かせるためにはどのようなステップやマインド、カルチャーが必要だと思いますか?
上野さん:とても難しい問いですが、やはりトップダウンとボトムアップの組み合わせが重要だと思います。社内には幅広い年齢層や多様な人財がいるため、トップダウンのメッセージが届きやすい層もいれば、DEIラボに参加している同僚からの話を聞いて変わる層もいます。加えて、DEI推進グループからの繰り返しの社内外発信が必要であり、地道に風土を醸成することが求められています。また、数字が独り歩きしてしまうのはよくないので、中期経営計画で公表している目標の数字の根拠や数値目標が必要な理由も含めて啓発しています。
――ビジネスの中で多様性が強みになると体感したエピソードがあれば教えてください。
上野さん:JALの飛行機には多様なお客さまにご搭乗いただいています。DEIの取り組みの一環として、障がいのある社員の声や意見を聞く機会を設けています。当事者視点から「どういったサービスが必要なのか」を検討していくことを大切にしています。
JALは「誰もが旅を通じて楽しめる社会」の実現を目指しており、障がいのある方をはじめ移動にバリアを感じる方々の「バリア」をいかに取り除くかということは非常に重要だと考えています。
――DEIの文化を根付かせるのは簡単にはいかないと考えているのですが、日本において企業がDEIな文化を育み、根付かせるためにどのようなことに気をつけるべきだと思いますか?
上野さん: JALの取り組みだけで日本全体を変えるのは難しいため、他の企業とコラボレーションして世の中にさらにインパクトを与えるということも意識しています。具体的には下記のような様々な取り組みをすでに実施してきています。これからも他の企業と取り組むことで、世の中にインパクトを与える活動を続けていきたいと考えています。
〇NTTとの取り組み
NTTさまが障がい者活躍推進の一環で主催しているアートコンテストに協力。
(「NTTアートコンテスト」についてはこちらから)
〇花王との取り組み
JALの中で、毎年6月にDiversity Dayを開催。
DEIに関して社員と考える研修イベントで、花王さまにゲストで来ていただいた。
(当日のイベントの様子についてはこちらから)
――JALが目指すDEIの姿についてもお伺いしていきたいと思います。先日社長交代で、女性の方が社長に就任されましたね。外から見ると世の中に対してこれまで以上に力強く「DEI宣言」をした印象がありました。JALの中ではこの件はどのように考えられているのでしょうか。
上野さん:弊社では、多彩な能力を持つ人財が活躍できる仕組みを作っており、実力やキャリア、チャレンジしたいという気持ちに応じて、性別等にかかわらずチャンスがあると考えています。社会全体で見ると、役員や管理職には性別の偏りがあるため、女性が社長になったと世の中に取り上げられることが多いのですが、男性か女性か性別という属性ではなく、個に目を向けて、女性が社長になるのが当たり前のような世界が来るといいなと思います。
――DEI領域で、これから考えているチャレンジがあれば教えてください。
上野さん:DEIは目的ではなく手段であり、サステナブルな事業運営体制の構築するための会社のドライバーです。社員の誰もが活躍し、仕事を通して自己実現を果たしていくことができる。それが社員の高いエンゲージメントと幸せに、そして顧客への価値提供へもつながると考えています。そのため、多様性、自分らしさを活かせるような組織を目指しています。
多様な価値観をもつ社員のアイデアを発揮することができれば、航空だけに依存しないような事業を生み出すことができるかもしれません。人財が多様化することで事業の多角化につながる可能性を感じています。
まとめ:JALの事例から学ぶ、DEIな企業風土の耕し方
今回はJALの上野さんに話を伺い、DEIな企業風土の耕し方のヒントをいただきました。この記事を読んでいただいているみなさんの組織でも、ヒントになる要素が見つかれば幸いです。
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