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22

Apr.

2021

interview
30 Mar. 2021

誰もが安心して家を選び、暮らせる社会に:人気YouTuberの新たな挑戦

西川 未紗
アソシエイト・メディア・プランナー
西川 未紗

先日、札幌地裁が全国5地裁で争われている同性婚訴訟で、初となる「同性婚の不受理は違憲」との判断を下した。2015年、渋谷区と世田谷区でのパートナーシップ制度導入を機に、LGBTに対する理解は進みつつあるものの、実際に同性同士で生きていくには、日本の制度はまだまだ不十分であると感じられる。例えば、パートナーを扶養に入れることや、緊急の手術が必要になった場合でも、同意書へのサインは認められていない。このように、 結婚に付随する法的権利以外にも、同性カップルは日常生活でさまざまな不平等に出会う。そのひとつが、家選びだ。「 誰を好きでも、どんな性別の人が好きでも安心して家を選び、暮らせる社会 」の実現を目指す、「KATATI」(かたち)のUさん、Reyanさんにお話しを伺った。

 

左:Uさん 右:Reyanさん

 

―暮らしを選べる世界、新しい世界を作りたい。

 

筆者:今回、LGBT当事者も安心して家選びができるサービスを始められたとのことですが、まずはこのサービスを始めた経緯を教えてください。

Reyan:元々、私とUで不動産業をしていました。その一環として身内のLGBT当事者に物件を紹介していましたが、所属する会社のオーナーにはLGBTの方々に対するサービスとして明確に提供していきたい と相談していました。

U:小さな枠組みの中で活動するのではなく、より多くの当事者にストレスのない物件探しのお手伝いがしたいと思っていました。ですが、サービスを届けるための知名度といった部分が足りていないと感じたので、影響力や拡散力を持つために、YouTubeでの動画配信を始めました。試行錯誤を繰り返し、2年経った今ではチャンネル登録をしてくださる方が10万人目前となりました。活動を続けるうちに社内の人からも協力してもらえるようになり、今回会社の一部署のような形式で「KATATI」を始めることとなりました。

Reyan:独立するのではなく、このような形でサービスを提供するメリットとして、契約時には「KATATI」の名前ではなく、オーナー会社の名前が記入されるため、家族にカミングアウトしていない方でも利用しやすくなっています。

 

筆者:「KATATI」の名前の由来は何でしょうか? 

U: LGBTの方を含めて色々な人の幸せを「KATATI」にという意味が込められています。

Reyan:不動産業界は昔ながらの風潮が残っている中で、暮らしを選べる世界、新しい世界を「KATATI」にしたいというのも由来の一つです。

 

Uさん。富山県出身の27歳。

 

―同性カップルが直面する困難とは。

 

筆者:利用者はLGBT当事者が多いのですか?

U:同性カップルが約半数です。その他には別姓を希望している事実婚の夫婦等、関係性をオーナーに説明しにくい方たち、ダブルマイノリティと言われる聴覚障害の同性カップルを担当しました。

 

筆者:不動産業界の現状や、当事者が直面する問題はどのようなものがありますか?

U:まず、管理会社や物件オーナーから関係性の理解を得にくいという点が挙げられます。

Reyan:契約書に関係性を「カップル」と書くのと「婚約者」と書くのでは全く違った印象をオーナーさんは持たれます。やはり、長く住んでほしいから「婚約者」と書かれている方が受け入れられやすいのですが、同性同士だと「婚約者」と書いた場合、オーナーさんに疑問を持たれることがあります。 

U:実際、長年付き合っている同性カップルをパートナーとして記入し書類を提出した際に、「関係性の説明が難しいので、友人としてオーナーさんに話します」と管理会社から言われたこともあります。

 

筆者:なるほど。その他に問題点はありますか? 

U:そもそも保証会社に同性同士だと審査が通らないという問題もあります。

Reyan:そうなんです。オーナーさんは保証会社の審査が通るなら契約OKと言う方もいらっしゃるんですが、保証会社は紙面上の情報のみで審査を通すか判断するため、関係性を見て説明しづらいと判断すると、審査を通してもらえないケースも発生します。

 

Reyanさん。茨城県出身の23歳。

 

―実生活で当事者が直面する「負」の解消、そしてより暮らしやすい社会に。

 

U:こういった問題からヒントを得て、家賃保証会社のうちの一社と交渉し、LGBT当事者であっても審査が通りやすいプランを作ってもらいました。同性同士で「カップル」と記入しても疑問を持たれないことで、審査のハードルはぐっと下がるのではないかと思われます。 ただ、物件によってどの保証会社を使うかが決まっているケースが多いので、そこは今後の課題だと思っています。

Reyan:多くの人に物件を紹介したいというのも勿論ですが、この業界はまだまだLGBT当事者への対応が柔軟でないことも多くあるので、そこを改善していきたいですし、弊社だけではなく、どこの仲介会社でも同性カップルが当たり前に家を借りられるという社会にしたいと思っています。そのため、今後は管理会社やオーナー、家賃保証会社に対して講演会をするといった啓発活動を行っていきたいと思っています。

 

「KATATI」メンバー。全員がLGBT当事者で構成されている。
中央2人がReyanさん、Uさん。

 

―「住まい探し」に留まらないサービスを。

 

筆者:今後の目標はどのようなものでしょうか? 

Reyan:企業への啓発活動の他に、弊社が物件探しのお手伝いをさせていただいた方を対象にコミュニティを作りたいと考えています。特に、地方から上京してきた方は周りに知り合いがいなかったり、なかなか自分自身のことを話せず、疎外感を感じてしまうこともありますよね。ですから、新しいホームのようなものとして、自分の家以外にも心が休まる場所を提供したいですし、人と人の輪を作りたいと考えています。具体的には数か月に一回オンライン、オフライン問わずご飯会を開催したいなと考えています。 悩みを共有できるコミュニティがあるってすごく貴重なことですし、集まって近況報告ができる、ご近所さんみたいな繋がりを作っていきたいんですよね。

U:ここでの繋がりを機に支え合ったりして、 この輪が大きくなったらみんなすごく暮らしやすくなると思います。例えば、若年層の方が年上のカップルに「同性同士での子育てについて」など、リアルに聞ける場があったらすごくいいですよね。自分たちの暮らしのロールモデルが身近に沢山あるような環境を作っていきたいです。

 

 

LGBTを取りまく社会状況 は、ここ数十年で目まぐるしく変化している。権利獲得のために行動した先人たち同様、UさんとReyanさんの活動は「誰を好きでも、どんな性別の人 が好きでも安心して家を選び、暮らせる社会 」の実現に向けた足掛かりとなることだろう。

 

 

Uさん、Reyanさん

2018年10月からYouTubeで「エルビアンTV」として活動を始める。

同性カップルの日常や、時には視聴者の悩みに寄り添った動画配信を行う。

登録者数は約93,000人(2021年3月現在)

2021年1月からは「KATATI」名でも、同社メンバーとともにYouTube配信をスタート。

 

KATATI

■HP → https://www.livmokatati.com/

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エルビアンTV

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取材・文: 西川未紗
Reporting and Statement: misanishikawa

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