こどもの可能性を広げたい ーキッズスター平田代表インタビューー
- ソリューション・プランナー
- 海東彩加
今回は社会体験アプリ「ごっこランド」などを運営する株式会社キッズスター代表の平田さんにオンラインでお話を伺った。
ごっこランドは、さまざまな職業体験ができるアプリで、現在は400万以上の家族が利用。また、多様な業界の企業・団体がアプリ内に出店しており、企業公式の「ごっこあそび」が楽しめる。
今では、こども向けアプリを運営する平田さんだが、前職はITベンチャーでこども向けの取り組みは一切行っていなかったという。なぜ、平田さんはこども向けアプリの開発を行おうと思ったのか、またアプリを通してこどもたちに何を提供したかったのか、話を伺った。
何年、何十年経っても変わらない“絵本”
平田さんがこどもへの関心を抱き始めたのは、お子さんの誕生がきっかけ。新しい家族が増えたことで、自分の経験を活かしてこどもたちがよりよく暮らすには何が必要かを考えるようになった。そんな中、こどもを取り巻く環境で気になることがあったという。それは、絵本の時代による変化である。平田さんご自身の幼少期から親になった今でも、本屋にある絵本があまり変化がないことに気付いた。
もちろん時代を経ても変わらない大切なメッセージがあるからこそ残り続けていると考える一方、世の中が急速に変化を遂げる中で絵本にももっと時代に合った変化があってもいいのではないかと感じた。
そんな絵本への気づきを得て、平田さんが取り組んだのが絵本読み放題の読み聞かせアプリである。イラストレーターさんによる新作の絵本が読めることや、育児の手助けになるアプリ内での読み聞かせ、当時はまだ珍しいサブスクリプション制など、今までにない新しい絵本の形を作り、多くの支持を集めた。
将来の選択肢を広げる仕事疑似体験
絵本アプリで保護者やこどもとの接点が増える中でさらなる発見があった。それは、こどもたちの「なりたい職業ランキング」である。
絵本同様に、こどもたちのなりたい職業ランキングが時代を経ても変わらないという事実に気付いた。最近でこそ、YouTuberなど新しい職業も入ってきたが、当時はスポーツ選手やパティシエといった職業や、保護者が望む資格のある職業などがランキングトップに並んでおり、絵本同様、子どもたちに人気のある職業には時代を経ても変化が少ないことに着目した。
親からの情報や、こどもの暮らしに身近な限られた選択肢だけで自分の仕事を考えるのではなく、幅広い可能性があることをこどもが自主的に知れるようにさまざまな仕事、社会との接点を作りたい。そんな思いから仕事疑似体験アプリ「ごっこランド」の開発に至った。
実在する会社のごっこ遊びも楽しめる
こどもたちが気付きづらい自分の“得意”
加えて、ごっこランドの開発背景には、こどもたちに自分の得意や好きを見つけてほしいという思いもあった。前職でさまざまな業界で活躍する人に出会う中で、平田さんが素敵だと思う人はみな、何かにハマったり没頭したりできる、自分の得意分野を持つ人。そんな人たちとの出会いも、ごっこランドの開発にあたり影響を受けたことの一つである。
こどもの頃はどうしても、学校の勉強の成績や運動神経だけで判断、評価されてしまうことが多い。遊びを考えるのが得意、話を聞くのが上手い、細かい作業が得意など、多様な得意があるにもかかわらず、こどもの頃にはなかなか意識されなかったり、周りに認めてもらえなかったりする。
そんな課題意識から、こどもたちが気付きづらい自分の“得意”に出会えるようなアプリ開発を心がけたという。
親子にとってのアプリの可能性
「森のえほん館」も「ごっこランド」も“アプリ”という形をとっている。仕事体験はリアルでやってほしい、アプリは教育に良くないという声がある中、平田さんがアプリでのサービスを作り続けているのには理由がある。
それは地域差をなくすこと。どこに住んでいても同じようにこどもたちの可能性を広げるチャンスを作れるようにと、特定の場所をもたないアプリという形をとっている。また、家庭で使えるアプリだからこそ、こどもが仕事体験に取り組む姿を間近で見れ、時には保護者にとって育児の負担軽減にもつながるという。
そんな平田さんの思いが伝わり、各地から「こどもの意外な好きなことを知れた」「今までに見たことのないこどもの一面に出会えた」といった声が集まっている。
さいごに
「子どもたちのできないところを見て不安になるのではなく、こどもたちにはみな得意なことがあると信じて、さまざまな経験をさせてあげてほしい。こどもの可能性や新たな道をつくる手伝いをこれからもしていきたい」と平田さん。
今回お話を伺う中で印象に残ったのは、平田さんは常にこどもだけでなく誰に対しても良いところや得意なことを見つけようとしていること。頭では大切なことだとわかっていても実践するのは難しいことのように感じる。
こどもの可能性を見つけ広げていくことはもちろん、まずは目の前にいる人、そして自分自身の良いところを見つけようとすることで、世の中の見え方が少し変わってくるのではないだろうか。
キッズスター:https://www.kidsstar.co.jp/
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