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Nov.

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29 Aug. 2022

演じる仕事とがん ~LAVENDER RING DAY 2022 SUMMER取材レポート オープニングセッション~

徳永栞
プランナー
徳永栞

「がんになっても笑顔で暮らせる社会を作る」ことを目標にして活動するLAVENDER RING主催のオンラインプログラム、“LAVENDER RING DAY 2022 SUMMER”が8/7に開催されました。 cococolorでは本プログラムについて連載形式でご紹介していきます。

初回となる今回は”オープニングセッション 「演じる仕事とがん」”をご紹介します。
本セッションでは、GIST(消化管間質腫瘍)という「がん」の治療を乗り越えて俳優を続けている、相島一之さんが登壇され、仕事とがんをテーマにお話されました。

日本人の2人に1人ががんとなると言われる中でも、がんを理由に仕事を諦めてしまうがん患者の方も少なくありません。一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所と、法政大学キャリアデザイン学部の松浦民恵教授が共同研究として実施した「がんと仕事に関する意識調査」によると、がん経験者の6割が「これまでどおり」働き、3割が働き方を変更しています。
出典:「がんと仕事に関する意識調査」

もしがんになった時、仕事など今まで大切にしてきたものにどう向き合えばいいのか知りたく、記事を執筆しました。 

以下3名の方が登壇されました。
相島 一之さん(俳優)
黒柳 洋弥さん(虎の門病院 副院長、消化器外科 部長)
司会:中井 美穂さん(フリーアナウンサー/NPO法人キャンサーネットジャパン理事)

GISTとは
相島さんの主治医である黒柳先生からGIST(消化管間質腫瘍)についてご説明いただきました。
GISTは1年間に人口10万人あたり1-2人がかかる と言われている希少がんです。

一般的な大腸がんとGISTの違いは、腫瘍ができる場所です。
大腸がんでは腸の内側に腫瘍ができるため、血便などの症状が出やすいです。
一方でGISTは腸の外側に腫瘍ができるため、腫瘍が大きくなってからでないと症状が出ないことも多いとご紹介いただきました。

相島さんは2008年4月GISTと診断を受けた後、腫瘍を小さくするため抗がん剤(分子標的薬)を服用し、同年8月に腹腔鏡下手術を受け人工肛門(ストーマ)※になりましたが、その後11月に閉鎖する手術をされました。

身体の変化を受け入れ、生きていく
がん患者であることを2009年に公表した相島さん。「がん患者であることを公表したことでマイナスなこともあったかもしれないがプラスのこともある」と考えています。

セッションの中で、がんの経験を経てのご自身の変化として2つご紹介いただきました。

1つ目は、俳優として新たな武器が増えたこと。
俳優になるということはいろいろな武器を持っていることだと仰っており、GISTの経験を通じて「がん」という新たな武器をもらったと考えていらっしゃいます。
相島さんは、抗がん剤服用中に末期がん患者の役を演じています。治療中だからこそがん患者の気持ちを理解して演じることができたかもしれないとおっしゃっていました。

2つ目は、俳優以外にも新たなことにチャレンジできるようになったこと。
GIST経験後、俳優以外にもバンド活動や落語などさまざまなことに挑戦しています。
「これまでやりたいと思ってやっていなかったことに挑戦しよう」とGISTをきっかけに振り切ることができたと語っています。

黒柳先生も、「仕事の両立を不安に思うがん患者も少なくないが、今まで大切にしてきたことをできるだけ続けて取り組んでほしい」と述べられました。
また、家族をとても大切にするようになる患者さんもいますが、どのような場合であっても、医師として患者さんの希望に寄り添いたいと話されました。


がん患者はひとりじゃない
相島さんは、がん患者やがん患者の家族に対して、「ひとりでがんに闘っているわけではない。」と発言されました。
相島さん自身も、黒柳先生やご家族など、たくさんの人が支えてくれたとのこと。
特に奥様のサポートについて涙ぐまれながら言及されました。相島さんの前では涙を流すは見せず、ずっと笑顔で明るく側にいてくれたとのことでした。
人工肛門(ストーマ)になったことは相島さんにとって辛い経験だったようですが、奥様がストーマを見て(いかりや長介さんの唇に似ていることから)「長さん、元気?」なんて声をかけてくれたことで、身体的変化をポジティブに受け止められるようになったとのことでした。
そんな奥様がいたからこそ生きられたと相島さんは語られています。

黒柳先生は、病院ががん患者に対してできるサポートについて発信されました。
セカンドオピニオンを受診したり、病院で仕事とがんの両立について相談したり、患者と病院がコミュニケーションを取りながらがんに対処することの重要性を仰っていました。

家族や医療関係者などいろいろな人がサポートしていくことが、がん患者が自分の体の変化をポジティブに捉えるうえで大切なことなのではないでしょうか。


セッションを終えて
本セッションを通じて、がん患者が自身の身体の変化を受け入れるためには、周りの人の支えが必要になることに気づかされました。
特に、黒柳先生と相島さん 治療中から現在に至るまで絆の深い関係を築かれていることが分かり、医師と患者同士がコミュニケーションを通じて信頼し合うことの重要性を改めて認識しました。

日本人の2人に1人ががんになると言われているほど、身近な病気です。
私ががんになったら、私の大切な人ががんになったら、どうすればいいのか。
私自身これからより一層考えていきたいと思います。

※手術によっておなかに新しく作られた、便や尿の排泄の出口のこと(出典:がん研有明病院)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取材・文: 徳永栞
Reporting and Statement: shioritokunaga

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