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Nov.

2022

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21 Nov. 2022

わたし、あの時シャッター押しました。~LAVENDER RING DAY 2022 SUMMER取材レポート~

徳永栞
プランナー
徳永栞

はじめに
「すべてのがんサバイバーを、笑顔にする。」をミッションに活動するLAVENDER RING主催のオンラインプログラム、“LAVENDER RING DAY 2022 SUMMER”が2022年8月7日 に開催されました。 cococolorでは本プログラムについて連載形式でご紹介していきます。

今回取り上げるのは「わたし、あの時シャッター押しました。(通称「わた押し」) 」。
資生堂クリエイティブ株式会社フォトグラファーの金澤正人さんとLAVENDER RING中川 真仁さんが登壇し、がんサバイバーが心動いた瞬間に撮影した写真を、シャッターを押した際のエピソードと共に紹介していました。

「同じ景色でも、病気になってからは見え方が違う」がコンセプトの「わた押し」。がんサバイバーの皆さんの思いに迫るため、取材しました。そこには、一枚の写真に込められた物語がありました。
※がんサバイバー:がんと診断された方、治療中、経過観察中、寛解された、がんに罹患したことのあるすべての方たちのこと。

今、子どもと一緒に雷を感じられる幸せ
     
闘病中、病院の無菌室から見た一筋の雷光。
無音の無菌室で雷の轟音が聞こえぬ中、「怖がってないかな」と自宅にいる子どもたちに思いを馳せながら、稲妻が光るその瞬間を撮影した一枚です。

まるこさんは雷が苦手でした。しかし「音が聞こえない無菌室から見る雷は、きれいだ」ということに気づき、思わずシャッターを押しました。

当時は小学1年生で雷を怖がっていた息子さんも、小学3年生になった今は雷が怖くなくなり、まるこさんは子どもの成長を感じています。

「今、”一緒に『雷怖いね~』と子どもたちと一緒に過ごせる幸せ”を感じている」と笑顔で娘さんと登壇するまるこさん。

無菌室という環境から見た雷から、家族への思いを感じられる一枚です。
“無音の無菌室から雷を恐れる子どもたちの喧騒騒がしさを想像できる” -中川さん

「がんを経験していなければ、雷をきれいだと感動することもなかったと思う」というまるこさん自身のお言葉が、とても印象的でした。

こどもの成長を実感する幸せ

食卓を囲む3人の子どもたち。
抗がん剤の副作用のため休んでいた荒幡えりこさんが、「子どもたちだけでご飯を食べられているかな?」と心配し、横になったままシャッターを押した瞬間の写真です。

この時子どもたちは友達が作って持ってきてくれたおかずを食べていて、周りの人に支えられていたと実感されています。

それまでは子どもたちだけでご飯を食べさせないように意識していたのに、治療の副作用で体調が悪かったため、子どもたちだけでご飯を食べさせてしまっていることに葛藤していました。
しかし、お母さんの様子を察してか、礼儀正しく食べている子どもたち。幼いと思っていた子どもたちの成長を目の当たりにし、子どもたちの成長を感じました。

荒幡さんの心の葛藤、子どもたちの成長が伝わる一枚です。
“写真が少し斜めっているところから荒幡さんの心のゆらぎが感じられる。一方、子どもたちが一歩階段を上がっていることが分かる” -金澤さん

子どもたちだけでご飯を食べさせている罪悪感、その一方で感じた子どもたちの成長への驚き、周りの人たちの支えに対しての感謝・・・。がんを経ての荒幡さんの様々な思いが凝縮されている一枚です。

あなたと、またこの景色を見られる幸せ

一面の菜の花畑の前でカメラを向けるご主人を撮影した白石美穂さん。

前回この菜の花畑を訪れたのは13年前。
手術を目前にして不安な気持ちの中にいた白石さん。菜の花の美しさ・力強さから勇気やパワーをもらいました。

そしてようやくこの菜の花畑を訪れられた今年。
「おーい、笑って」とカメラを向けるご主人。
「あなた、ありがとう!」というこれまで支えてくれたご主人への感謝の思いや、今一緒に美しい景色を見られる幸せを胸に、逆シャッターを押した瞬間の写真です。

長年連れ添ってきたご夫婦ならではの絆、幸福感が伝わる一枚です。
“ご主人も白石さんにカメラを向けて、白石さんもご主人にカメラを向け、ご夫婦で同じ行動をし合っている、この状態に普段のご夫婦の仲の良さを感じられる” -金澤さん

手術を目前にした白石さんの背中をそっと押した菜の花の美しさと力強さ。
闘病をずっと支えてくれたご主人と一緒に同じ景色を見られる幸せ。
がんを経たからこそ、この菜の花畑が全く違って見えるのではないでしょうか。

病気を経て、世界の見え方はなぜ変わるのか?
これまで歩んできた人生とは異なる人生を歩んでいく可能性があるがんサバイバー。しかし、がんを経験し、これまで気づかなかったことに気づくことで、新たな人生を歩んでいるということに、「わた押し」を通じて気づきました。

新たな未来を生きているからこそ、病気を経て世界の見え方が変わるのです。

「自分は写らないこと」が唯一のルールである「わた押し」。
撮影者の姿は全く写っていないにも関わらず、一枚の写真からがんサバイバーの思いや物語がこんなに伝わるなんてと驚きました。

他の「わた押し」作品をもっとご覧になりたい方は、「わた押し2 作品一覧」をぜひご覧ください。
また、アーカイブのセッションもご覧いただけます。

取材・文: 徳永栞
Reporting and Statement: shioritokunaga

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