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May.

2022

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11 Mar. 2022

「誰一人取り残されない社会」に向けたDXの役割とは?

鈴木陽子
ストラテジスト/PRプランナー
鈴木陽子

地域格差やジェンダーキャップ、少子高齢化など、様々な社会的課題を抱えている日本。誰一人取り残されず、誰もがやりたいことができる社会を実現するために、デジタルやDX(デジタルトランスフォーメーション)はどのような役割を果たすことができるのか。

2021年11月19日に「MASHING UP conference vol.5」の中で実施された「DXでやさしい社会をつくる。私たちに必要なチャレンジ」のセッションは、この壮大なテーマに対する多くのヒントが得られる機会となった。(冒頭写真 @MASHING UP)

当日は、デジタル社会の形成に向けてリードしているデジタル大臣 行政改革担当大臣 内閣府特命担当大臣(規制改革)の牧島かれんさんと、より良い社会をつくることをゴールに掲げて国内最大のクラウドファンディングサイト「READYFOR」を運営している米良はるかさんにお話を伺った。セッションのモデレーターは朝日新聞編集委員の秋山訓子さんが務め、会場にいた多くの参加者が熱心に話に聞き入った。

 

デジタルで社会はどう変わる?
〜誰もが好きな場所で、希望通りのライフスタイルを〜

デジタルに対して難しい・冷たいというイメージを抱き、社会がデジタル化していくことに対して不安に思っている人はいまだ少なくないかもしれない。DXによって世の中が変わるとは具体的にどんなイメージなのだろうか。まずは、牧島大臣が現在進めているデジタル政策の構想について伺った。

“デジタルでやろうとしていることは、このデジタルというツール・道具を使って、毎日の生活が便利になったと感じて頂き、非常時にも安心だと思ってもらえるような社会基盤をつくるということだと思っています。そうした思いを反映しているのが「デジタル田園都市国家構想」です。”

この構想では、東京のスモールモデルを各地域に作るのではなく、それぞれの地域の魅力や潜在力を引き出しながら、その上で、都会で感じるような便利さも感じることができるようにする。そのような都市が、日本全国の各地域に作られていくことを目指しているのだという。

医療や教育、仕事といった面での地域格差を考えると、本当は望んでいなくても東京などの都市部に住み続けなければならないと思ってしまう人もいるだろう。もしくは、ジェンダーギャップという観点で、特に10代後半から20代前半の女性が、地方の不便さや昔ならではの慣習に馴染めずに、都会に出ていこうとする現象も起きているかもしれない。そんな現状に対するソリューションとなり得るのが「デジタル田園都市国家構想」であり、誰もが望む場所で自分の望んでいるライフスタイルを作り上げることができるように、取り組みを進めているとのことだ。

(@MASHING UP)

デジタルで新しいお金の流れをつくり、温かい社会の実現へ

一方で、米良さんには民間企業という立場から、デジタルによって変化する社会のイメージについて、コロナ禍での経験を元にした話が共有された。

米良さんがコロナ禍で取り組んだことの1つが、「コロナ基金(正式名称:新型コロナウイルス感染症拡大防止活動基金)」の活動だ。クラウドファンディングのプラットフォームである「READYFOR」上で、基金方式で寄付を募り、医療機関やNPOの関係者に支援金を届ける活動をいち早く実施したのだ。

募集から着金までの一連の流れで意識していたことは、「本当に必要な人に、速く、透明性高く」お金を届けること。お金を流通させたいと思う人を増やし、世の中を良くしていくためにも、この仕組みを実現することに注力したという。

そんなご自身の事業やデジタル政策の委員経験を元に、利用者が申請することでサービスを受けられるプル型ではなく、対象者が利用できる制度について行政側から積極的に情報が届けられるプッシュ型の行政サービスを展開する上で、デジタルの重要性を感じているという米良さん。

“普段から情報をきちんと入力しておけば、非常時には必要な情報を少し入力するだけで、タイムリーにお金を受け取れる、ということをデジタルでは実現できると考えています。本当に困っている方に、すぐさま手を差し伸べられるような社会の仕組みを実現するために、デジタルがリードしていく必要があると思います。”

 

デジタルから取り残されてしまう人を出さないために

デジタルを活用することで、牧島大臣や米良さんの話に出てきたような温かい社会を実現できる可能性がある一方で、デジタルというツールを使いこなすスキル、Wi-Fi環境やデバイスの有無に起因した格差が生じてしまう可能性に対しては、配慮が必要だ。

このデジタルデバイド問題に対して、デジタル庁では他の省庁とも連携し、格差が生まれないようにする環境整備の予算を組んだり、デジタル活用支援員の制度を事業化したりするなどして、サポートできる体制を充実させようとしている。

たとえ窓口で職員と相談しながら手続きをしたい人であっても、名前や住所などの個人情報を何回も記入したいと思っている人はいないだろう。手続きをワンストップ化し、バックエンドで情報を繋ぎ合わせておくことで、何度も同じことを聞かれたりしないようにする。そんな風に気がつかないところでデジタルが下支えしている状態を作っていくことが、デジタル庁が目指す「申請主義からプッシュ型に大転換する行政サービス」のあり方なのだ。

このように社会がデジタル化に舵を切る大転換期においては、サービス提供側は行政、民間を問わず、誰であっても分かりやすいUI/UXの実現にも留意する必要がある。

“誰一人として取り残されないために、という思想でサービスを運営していますが、どうやってデジタルと縁遠い方にもっと親しみを持っていただくか。使いやすくて意外と簡単だという体験をしてもらいながら、当たり前にアップデートされていくものに人がそこまで工夫しなくても参加し続けられるような、ユーザビリティの良いサービスを作っていかなければいけないと思います。”(米良さん)

特に行政サービスにおいては、トレンドに敏感な人たちだけがついていける世界になってしまわないように、国のシステムと民間が協調しながら、「どうやって誰一人取り残されないようにサービス設計していくのか」という視点を持つことが重要である、と米良さんは述べている。

(@MASHING UP)

 

DXは女性の生き方をサポートする手段になる

セッション後半では、「女性が生きやすく、働きやすく、過ごしやすい社会になるために、DXはどんな役割を果たせるのか」というテーマで話が展開していった。

牧島大臣は2つの観点から、女性の生き方とDXとの関わりについて言及した。その1つは、日本はデジタル人材が各国と比較して少ないため、多くの女性たちにこの分野への関心を持ってもらい、国として支援をしていきたいということだ。

同時に、医療・介護や子育ても含めて、日本の女性はケアをする側の存在になってしまいがちな実態にも話が及んだ。ケアギバーになっている女性達にとって、デジタルのツールやテクノロジーは大きなサポート役になっていく可能性があるのではないか。例えば、遠くに離れて暮らしている高齢のひとり親がいたとしても、その様子を遠隔でも知ることができるようになりつつある、といったようなことだ。

民間で開発されている様々なデジタルツールが、日本女性たちがこれまで担わなくてはいけないと思ってきた多くの役目を肩代わりしてくれたり、一緒に分担してくれたりするようになるのではないかと、牧島大臣は期待を持っている。

 

社会的課題の解決にデジタルはどう寄与できるか

議論は女性の話だけにとどまらず、岸田政権が推し進める「新しい資本主義」にも触れながら、より社会全体の話へと広がっていく。

米良さんは自身の事業と「新しい資本主義」のそれぞれの考え方に、共通点を見出している。資本主義の構造においては、短期でリターンが出る領域に人やお金が流れがちだ。しかし、短期的にマーケットが存在しなかったとしても、長期で大きなリターンが返ってくる可能性があるのであれば、投資をしていく必要のある分野は沢山ある。

“「新しい資本主義」とは、そういう分野に国が関与していくということだと捉えています。国と民間ビジネス、ソーシャルセクターなどがそれぞれの役割をきちんと果たすことによって、誰一人として取り残されない社会を実現していくのだろうと思います。”

牧島大臣からも、政治家や行政、民間が協働しながら、イノベーティブな取り組みをおこなっているプレイヤーを応援し、様々なところに投資していくことが「成長の分配と好循環」の意味するところだという趣旨の説明があった。

“ベンチャーの方や私より若い世代の方達は、自分のビジネスを通じて社会貢献したいという高い志を持っている方が大勢おられるので、そうした方たちと一緒に力を合わせて、米良さんが取り組まれているクラウドファンディングのような「温かな資金」を流していき、社会課題を解決する道筋をつけていく。そんなイメージを私は持っています。“

 

デジタルを使って1人ひとりが未来をより良くしていく

社会におけるDXの役割を様々な角度から深掘りした今回のセッション。最後に牧島大臣と米良さんから参加者に投げかけられたメッセージを紹介する。

“デジタルはツールなので、どういう社会にしたいか、どういう企業にしたいか、どういう生活スタイルを作りたいかというところを常に大きな目標として持っておく必要があるのかなと思います。

 その観点でいうと、そんなにおっかなびっくりでなくとも、きっと今までの経験が活かされる分野があるのではないかと思います。ぜひそれぞれの観点で企業や社会の更なる目標向上に向けて力を貸していただければと思います。”(牧島大臣)

“コロナで日本の脆弱性が明るみになったと思います。危機感を持っている今のタイミングだからこそ、デジタルを基盤とした社会の設計を本気でやらないと、世の中は良くならないと感じています。

 3つの重要会議のうち2つがデジタル領域で、牧島大臣が担当されている。そういう国が変わる瞬間のリーダーを女性が務められているのは、とても素敵なことだなと思いますし、私も一緒に取り組んでいきたいと思っています。”(米良さん)

 

社会的な課題を克服して成長していこうとするならば、デジタルは避けては通れないツールであり技術だ。政府が整備したデジタル基盤の上で、皆が自分の望む生活を送れるようになるかもしれない。ただ、そこに留まらずに、一人ひとりがデジタルというツールを活用しながら、これまでの自身の経験を世の中のために活かしていこうとすることで、日本社会の未来がより良いものになっていくのではないだろうか。



<イベント概要> 

「MASHING UP conference vol.5」

登壇者:
牧島 かれんさん(デジタル大臣 行政改革担当大臣 内閣府特命担当大臣(規制改革))
米良 はるかさん(READYFOR 代表取締役CEO)
秋山 訓子さん(朝日新聞 編集委員)

主催:MASHING UP(メディアジーン)
開催日時:2021 年11月19日(金)
開催場所:TRUNK (HOTEL)1F~3Fフロア 東京都渋谷区神宮前5-31
特集サイト:https://conference.mashingup.jp/

取材・文: 鈴木陽子
Reporting and Statement: yokosuzuki

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