「ふつうの家族」ってなんだろう~家族のかたちの現在地①~
- 副編集長 / クリエーティブディレクター/DENTSU TOPPA!代表
- 増山晶
あなたは「ふつうの家族」と聞いて、どんな家族を思い浮かべますか?多様化する世の中で、「ふつう」の概念も人の数だけ存在すると言っても過言ではないでしょう。cococolorは、家族の定義を点在するエピソードから考察するリレーコラムを始めます。
結婚の平等、事実婚、子ども、ジェンダー、仕事と家事、介護、国際化など、今の社会におけるさまざまなエピソードとその考察をつなげることで、家族のかたちの現在地を浮かび上がらせることはできないかと考えました。
第1回目は、ふつうの家族の定義の変遷について、データを見てみます。
ふつうの世帯って?
家族のつながりの単位としてのかたちは、世帯、婚姻、親子などがありますが、そのとらえ方には世代間の認識の違いが大きいかも知れません。
まず、家族のつながりの単位として世帯を考えてみます。
厚生労働省によると、世帯とは「住居及び生計を共にする者の集まり、若しくは1人で独立の生計を維持している者」です。
世帯の家族類型別構成割合の推移を見ると、「単独」世帯の割合は、平成27(2015) 年に34.5%と全世帯の3分の1を超え、その後も上昇すると推計されています。昭和55 (1980)年に42.1%と、4割を超えていた「夫婦と子供」の世帯は、平成27(2015)年は 26.9%と、全世帯の約4分の1にまで減少し、その後も減少すると推計されています(特-6図)。
また、統計に表れない家族のかたちとして、婚姻届けを出していない、もしくは受理されていない事実婚があります。ここには、別姓婚や同性婚(婚姻の平等)の課題もあります。
家族の中の役割って?
次に、家族の中での役割として、仕事と家事の分担について考えてみます。ここでは、性的役割分業思想の根強さ、子どもを持つということについての考え方の変遷などの事象があります。
共働きが主流になって四半世紀。8~9割の夫婦が共働きですが、フルタイムの妻の数はあまり変わらず、パートや時短勤務の妻が増えています。これは、家事の負担がいまだ妻に重いこととも密接に関係します。(特-8図)
いまだ男性は仕事、女性は家事育児というメディアの描き方が残っており、働き方の多様化や家庭内での役割分担の変化、家事の外注ビジネスなどの環境変化に追いついていない部分があるのです。
2022年のジェンダーギャップ指数が146か国中116位と、先進国の中での最低レベルを更新し続ける日本。SDGsの第5ゴール「ジェンダー平等」の精神からも、ジェンダーロール更新の現状を検証してみたいところです。また、LGBTQ+の課題もあわせて考えていきます。
このリレーコラムは、今の世の中での「ふつうの家族」の類型化を目指すものではありません。家族にまつわるいくつかのエピソードを掬い取ることで、今そこにある家族のかたちを知り、視野を広げ、どんな家族も「ふつう」であることをお互い尊重できるヒントとなれば幸いです。
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