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Nov.

2019

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24 Oct. 2019

編集部が行く!パラスポーツ観戦記_vol.4水泳

杉浦愛実
ビジネスプロデューサー
杉浦愛実

921日から23日にかけて、World Para Swimming公認 天皇陛下御即位記念2019ジャパンパラ水泳競技大会が横浜国際プールにて開催されました。本記事では、初のパラ水泳観戦を通じて筆者が感じたパラ水泳の魅力をお伝えしていきます。

 

トップレベルのレースが間近で見られる、ジャパンパラ競技大会

 

ジャパンパラ競技大会とは、競技力向上と、パラスポーツファンの拡大を目的として、日本障がい者スポーツ協会と競技団体が共催して開催する、日本国内最高峰のパラスポーツ競技大会です。

本大会は、World Para Swimming公認の大会として、日本国内で開催される数少ない大会の一つ。パラリンピックのメダリストを始め、海外からも強豪選手が招待され、国際色豊かな大会に。大会の記録は国際の公式記録としても認定されるため、選手も応援も気合いが入り、決勝は独特の緊張感が漂っていました。

今年で29回目の開催となったジャパンパラ水泳競技大会。会場となった横浜国際プールでの開催は、3回目。

 

16クラスに分かれる選手たちの、自分との闘い

 

ジャパンパラ水泳大会では、大別して、身体障がい、知的障がい、聴覚障がいの障がい種別で競技が行われます。さらに身体障がいは、肢体不自由・切断・脊髄損傷・脳性まひ等の障がいで10クラス、視覚障がいで3クラスの計13クラスに種別が分かれています。国際競技団体のクラス分けにあてはまらない選手は、日本国内独自でのみ適用されるクラスに振り分けられます。 

パラリンピックでは、陸上競技に次ぐ150を超す種目数と500名を超える参加人数を誇るほど、水泳は多様な選手が参加できる競技なのです。

パラリンピックへの出場にも期待がかかる、一ノ瀬メイ選手。

 

1レース最大8名で行われますが、参加選手の少ないクラスもあるため、異なるクラスの選手同士が同じレースに出場することも。重度のクラスの選手が、軽度のクラスの選手を上回る記録を残すこともあれば、同じレースの中で複数の新記録が生まれることもあります。パラ水泳には、同一レース内での速さを競うだけではない奥深さがあると感じました。

各レース、最初の選手がゴールをすると、会場に音楽が響き渡ります。記録更新ともなれば、祝福のアナウンスも加わり、会場は拍手に包まれます。その間も、泳ぎ続ける選手がいます。50m、100m、200m、その距離を泳ぎきるまで、選手たちは自分自身と闘い続けます。周りの選手がゴールをしても気持ちを切らさず、自分の記録を超えることに集中する選手の姿に、見入ってしまいました。

女子50m背泳ぎの決勝。中東郁葉選手は、聴覚障がいのクラスで、山田美幸選手は、身体障がいのクラス3で、それぞれ日本新記録を更新。タイムだけを見ると、45秒近く差が開いています。

 

自由形は、本当の意味で自由。

 

選手の多様な泳ぎ方にも注目です。

水泳は、パラ競技の中でも数少ない、道具を使わない 競技と言われています。着水の直前まで車椅子に乗っていた選手も、水に入った瞬間から、浮力を得て、自由になります。残された力を活かして自分の身体のみで前に進む姿には、選手一人ひとりのスタイルがあり、多様性に富んでいます。

 

それを象徴するのが、自由形です。

自由形と言うと、多くの人がクロールを想像するのではないでしょうか?私自身、自由形=クロールという思い込みがありました。でも、パラ水泳の選手は、本当の意味で自由に泳ぎます。体の一部が床に着かずに規定の距離を泳ぎきることができればどのような泳ぎ方でも問題ないため、自由形を背泳ぎやバタフライで泳ぐ選手もいました。また、腕の力をメインに泳ぐ選手もいれば、反対に足の力をメインに泳ぐ選手もいます。片腕や片脚に欠損のある選手など、体の左右のバランスが偏っている選手は、まっすぐ進むためにうまくバランスを取りながら泳いでいました。

思い思いのスタイルで泳ぐ、自由形

 

背泳ぎのレース

 

周囲のサポートにも工夫あり

 

一人で静止することのできない選手も多いため、スタートもさまざまな形が認められています。紐やタオルを口で噛んでスタートする選手、足や腕を抑えてもらってスタートする選手、スタッフの肩を借りてスタートする選手などがいます。

 

また、視覚障がいの選手は、壁の位置が分からないため、コーチが「タッピングバー」と呼ばれる棒を使って、ターンやゴールのタイミングを選手に教えています。選手が不安を感じることなく自分の泳ぎをするためにも、日頃からコーチと信頼関係を築くことが重要だと感じました。また、ターンのタイミングがズレるとロスが生じてしまうので、タッピングのタイミングも勝敗を分ける大事なポイントになります。 

木村敬一選手にタッピングをして、ターンのタイミングを知らせるコーチ

 

車椅子の選手の中には、スタッフやコーチの力を借りて着水する選手もいます。50mのレースでは、スタートとゴールの場所が異なるため、選手が泳いでいる間にスタッフが車椅子を移動させるなど、多くの人のサポートを得て競技が行われていることが伝わってきました。

 

自由だからこそ求められる強さ

 

初めてのパラ水泳の観戦でしたが、多様性溢れる選手の泳ぎから目が離せず、あっという間に時間が過ぎていきました。浮力によって水の中で自由を獲得する選手の姿が印象的で、スタート時の補助やタッピングはあるものの、泳いでいる間は誰にも何にも頼ることなく、自分自身の力だけで泳ぐことが求められます。自由であるということは、結果に対しても言い訳はできません。選手からは、アスリートとしての力強さと同時に、人間としての強さを感じました。

日本身体障がい者水泳連盟公式キャラクター「パラッシー」も大会を盛り上げます。

 

直前に開催された世界選手権でも多数のメダルを獲得した日本選手団。今大会でも、数々の大会新記録や日本新記録が更新され、「新記録ってこんなに次々と生まれるものなの?!」と驚きましたが、それだけ競技のレベルも日々上がっている証拠です。ベテランも若手もハイレベルな泳ぎを魅せるパラ水泳から、今後もますます目が離せません。

取材・文: 杉浦愛実
Reporting and Statement: manamisugiura

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