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Apr.

2021

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22 Nov. 2020

同性カップルも「いいふうふ」になりたい!“結婚できない困難”をお金に換算してみた

福居亜耶
CMプランナー/コピーライター
福居亜耶

 11/22は「いい夫婦の日」。一般的に「夫婦」と言えば、結婚している異性カップルのことを指しますが、世界では現在29の国と地域で同性婚もしくはそれに類する制度が認められています※1。昨年は、アジアで初めて台湾で同性婚が合法化し、大きな話題となりました。

 しかし、現在の日本では、結婚は異性カップルにしか認められておらず、同性婚はできません。婚姻の平等を求めて複数の同性カップルが全国で一斉に国を提訴した「同性婚訴訟」も進行中ですが、世論の中には「同性パートナーシップ制度があるし、同性婚できなくてもいいんじゃないの?」という声もあるようです。

 いえいえ!同性婚と同性パートナーシップ制度は全然違います!同性パートナーシップ制度には「法的権利・保障」が無い※2のです!

  異性カップルであれば、婚姻届を1枚出せば手に入る法的権利・保障を、同性カップルは手に入れることができません。これは「法の下の不平等」であり、性的指向による差別と言えます。とても不公平ではないでしょうか。

 そこで、そんな不公平さを理解してもらうために、同性カップルが「法的権利・保障」を手に入れるには、どれくらいの手間や費用が必要なのかを専門家の協力の下で算出。結婚することができない同性カップルが直面している困難を、数字でわかりやすく解説します。

 この記事が同性婚についての社会の理解を促し、異性・同性かかわらず、願えば誰もが「いいふうふ」になれる日本社会実現への一助となるように願っています。

※ 記事上の「同性」とは、「戸籍上同じ性別である」ことを指します。仮にトランスジェンダーの方や、クエスチョニング(性自認や性的指向が定まっていない)、インターセックス(性に関する身体的な機能・形などが、一般的に男性・女性とされる典型的な状態と一致しない部分がある)の方であっても、「戸籍上同性」の場合は、記載のままお読みいただけます。

※1 「一般社団法人Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」ウェブサイトより(https://www.marriageforall.jp/marriage-equality/world/

※2 渋谷区のパートナーシップ証明書は、公正証書に基づいて発行されているので、公正証書が保障する範囲での法的権利・保障はあります。

 

■同性婚が認められると

 同性婚が認められると、婚姻に付随する約60の法的権利・保障が同性カップルにも認められます※3。同性婚ができない現在の日本では、これらの法的権利・保障は同性カップルには基本的には全て認められていませんが、公正証書を作成したり、裁判をしたりすることにより、獲得できることもあります。ただし、公正証書の作成や裁判には、もちろん手間も時間も費用もかかります。

 異性カップルなら婚姻届を1枚出せば手に入れられる法的権利・保障を同性カップルが手に入れるには、どんな方法があり、それにはどれくらいの費用がかかるのか。LGBTQ専門家として、日頃から性的少数者の法的サポートを行う、「こう行政書士事務所」の康純香さんといっしょに算出してゆきます。

※3 「NPO法人EMA日本」ウェブサイトより(http://emajapan.org/promssm/ssmqaa/aq11


康純香(こう・よしか)さん。行政書士。特定非営利活動法人カラフルブランケッツ理事長。2014年こう行政書士事務所を開設。LGBTQ専門家として、性的少数者の方の相続問題や日々の相談業務に積極的に取り組む。著書に『セクシュアルマイノリティーのための法律がわかるハンドブック』(なにわ出版)。

 


■遺産を受け取るには

—同性カップルが、パートナーの遺産を受け取るにはどんな方法がありますか?

康さん:遺言を書くという方法があります。『自筆証書遺言』と『公正証書遺言』がありますが、『自筆証書遺言』は自分で書かなければいけないので正直大変で、書くルールも厳しく、紛失してしまう可能性もあるので、私は『公正証書遺言』をオススメしています。

 『公正証書遺言』は、『公証役場』という場所で、『公証人』という法律の専門職の方に作ってもらう遺言です。こちらをオススメする理由は、安全で確実だからです。

—『公正証書遺言』を作成するには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?

康さん:平均的なお話になりますが、まず私たちにご依頼いただいて、どんな遺言内容にするかを検討して作成するのに、1通につき10万円ほどいただきます。そして、公証役場と公証人に支払う手数料が別途かかります。こちらはその方の財産によりますが、当事務所のこれまでの経験では、5万円程度のことが多いです。婚姻と同等にするには、お互いが1通ずつ作成しないといけないので、単純計算だと、それぞれ2倍かかります。

—2通分で合計30万円ほどもかかるのですね…。

康さん:そこまで費用はかけられないという方は『自筆証書遺言』でもよいですし、法的な強制力はありませんが『もしものノート※4を書くだけでも、最低限の安心は得られると思いますよ。

※4 事故や病気などで自分の意思が伝えられなくなったときのために、資産のことや伝えたいことを記しておくノート。エンディングノートとも。

 

■老後やもしもの時に

—一方が認知症等や事故で意思が伝えられなくなった時、パートナーが病院や役所や銀行で「家族として」手続きするにはどんな方法がありますか?

康さん:『任意後見制度』という方法があります。そもそも『後見人』というのは本人に代わって、本人の生活・療養看護・財産管理をする人のことです。ちなみに、後見人にならずに、パートナー名義の口座から入院費等のお金を引き出すと『横領』になりかねません。後見人は裁判所が決めるのですが、現状、同性パートナーが後見人に選ばれるのはかなりハードルが高いです。

 そこで『任意後見制度』を使います。これは、当の本人に意思能力があるうちに同性パートナーに「後見人になってください」と申し出をして、パートナーが「いいですよ」と承諾すれば、その内容を書面に残します。自分の意思で任意に後見人を決めるので『任意後見契約』と言い、渋谷区のパートナーシップ制度の条件だったり、同性パートナーの共同住宅ローンの条件になっていたりします。

 これは、あくまで『後見人』となるための方法なので、家族として認められたいという希望に沿うものではありませんが、カミングアウトする必要もありませんので、有事の際の精神的な負担も和らげられるかと思います。

—『任意後見制度』を利用するには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?

康さん:この制度では、必ず公正証書を作成しなければなりません。平均的なお話になりますが、まず私たちにご依頼いただいて、どんな内容にするかを検討して作成するのに、1通につき10万円ほどいただきます。そして、公証役場に支払う手数料や登記代が、1通につき約3万円かかります。こちらも婚姻と同等にするには、お互いが1通ずつ作成しないといけないので、単純計算だと、それぞれ2倍かかります。

 

■子どもの共同親権について

—同性カップルが、パートナーと子どもの共同親権を持つにはどんな方法がありますか?

康さん:残念ながら、同性カップルが共同親権を持つ方法は、日本では現在ありません。例えば、レズビアンの女性が、自身が産んだ子どもと同性パートナーと3人で暮らしていても、法律上はシングルマザー状態です。もしも、産みの母親が亡くなってしまった場合に、その子どもと同性パートナーが勝手に一緒に暮らし続けると『誘拐』と言われ、子どもと引き裂かれてしまうことも当然あります。

 共同親権を持つことはできませんが、このような最悪な事態を避けるための方法はあります。それは『未成年後見人』を遺言で指定しておくこと。『未成年後見人』とは親権者に代わって、未成年者の監護養育・財産管理・契約等の法律行為をする人のことです。成人の後見人と同じく、誰にするかは裁判所が決めるのですが、最後に親権を行う者(上記のケースだと産みの母親)は遺言で未成年後見人を指定することができます。

 遺言なので、自筆でも公正証書でもOKですが、遺産相続以上に失敗したときのリスクが大きすぎるので、公正証書遺言をオススメします。基本的な作成費用は同じですが、未成年後見人を指定するだけであれば、費用は1通分のみとなります。

 

パートナーが外国人の場合

—異性カップルであれば、パートナーが外国人の場合、結婚すれば『配偶者ビザ』を取得して一緒に日本に住めます。同性パートナーが外国人の場合、どうすれば一緒に日本に住み続けられますか?

康さん:『配偶者ビザ』を取れないので、パートナーという立場を無視した方法しかありません。『就労ビザ』や『経営ビザ』など、別のビザを取得しなければなりませんが、例えば『就労ビザ』だと「専門職」「大卒」「10年のキャリア」など、条件面でのハードルがかなり高くなります。肌感覚でいうと、5件相談があっても3件はご相談段階で断念されるような厳しい条件です。

 配偶者ビザに代わって就労ビザを取得する費用ですが、私たち事務所にご依頼いただいた場合は、書類準備や手続代行に数万〜数十万円(事務所により費用変動)かかります。ただし、配偶者ビザを取得する場合でも、事務所にご依頼いただいた場合は10〜20万円ほどかかり、自分で申請する場合は無料です。

 

■離婚(関係解消)するときは

康さん:ちなみに、これまで婚姻に代わって法的権利・保障を手に入れる方法として、公正証書という方法を紹介してきましたが、一度公証役場へ提出した公正証書を取り消すには、「前に提出した公正証書を撤回します」という公正証書をまた提出しなければなりません。もちろん、それにも同じように費用がかかります。

—離婚(関係解消)するにも、費用がかかるのですね…。同性カップルが法的権利・保障を手に入れるのは、とても大変なことがよくわかりました。

 


 以上、同性カップルが婚姻と同じような法的権利・保障を手に入れる方法と費用について、「こう行政書士事務所」の康純香さんのお話を元にお伝えしました。今回取りあげた「法的権利・保障」は、あくまでごく一部です。仮に、異性カップルが婚姻届を1枚出せば手に入れられる法的権利・保障の全てを、同性カップルが手に入れようとすると、何百枚の公正証書を手間と費用をかけて作成しなければなりません。そして、手間と費用をかけても手に入れられない権利や保障もあります。

 これまでご紹介してきた、同性婚ができない日本の現状は、性的指向による「法の下の不平等」であり、差別に他なりません。その解決のためには、日本で同性婚が成立することが待ち望まれます。

 そして、同性婚成立と同じぐらい重要なことは、同性カップルやLGBTQの方への差別を無くしてゆくことです。康さんも自著で「もちろん同性婚は素晴らしい制度です。(中略)ただ、社会がLGBTQの人を受け入れ、差別のない世の中にならないとその素晴らしい制度を利用できないかもしれません。」と書かれています。結婚することがカミングアウトになることを考えると、差別のない世界にならない限り、同性婚という制度は多くの人が使えないかもしれません。

 同性婚の成立と、同性婚の成立を心からよろこべる差別の無い社会の実現。遠くない未来に、その両方が叶うことを切に願います。

 

取材・文: 福居亜耶
Reporting and Statement: ayafukui

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