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Nov.

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19 Nov. 2020

インクルーシブパーク元年!公園と遊び場・遊具のこれから「インクルーシブパークフォーラム2020」レポート

國富友希愛
コミュニケーション・プランナー
國富友希愛

遊具やストリートファニチャーなどの製造販売を手掛ける株式会社コトブキによる【インクルーシブパークフォーラム2020】にオンラインで参加させていただいた。すべての子どもが共に遊ぶことを目的として設計されるインクルーシブな公園の開発の日本の先駆者や、ランドスケープアーキテクトの有識者により語られる、これからの公園のスタンダード『インクルーシブパーク 』のあるべき姿。本フォーラムでは、これからの日本の公園や子どもの遊びをより充実したものにしていくためのヒントが探られている。 

 

インクルーシブパークフォーラム2020

https://parkful.net/event/inclusivepark2020/

 

■“公園”の変遷 

私たちが目にする「公園」という人工のプレイグラウンドスタイルはヨーロッパで始まった。アメリカではその後、1887年にサンフランシスコ大規模な人工公園が初めて作られ、人々の関心を集めた戦時下で金属や木材が不足し、プレイグラウンド自体は衰退、その中でも面白いコンセプトや思想は残り、戦後に「ジャンク」「冒険」「ファンタジー」「新しさ」といったキーワードのもとに、公園は彫刻作品を伴う見る人を楽しませるデザインに特化したものになっていく。 

1980年代に、公園の構造や安全の基準が作られ、2000年代に「あそび」が肉体的・精神的に人に提供してきた価値についての研究が深ったことで、インクルーシブパークという概念が生まれた。 

©PLACE

■みんなのための“公園”とは 

公園の大原則として、①家の近くにあること②すべての人が遊べることが挙げられる。 しかし現在アメリカ人の80%が都市部に住んでいるが、そのうち5人に1人(1500万人)の子どもが貧困層で、1000人中85人の子どもには何らかの障害があるとされ、すべての人がアクセス可能な開かれた遊びを手にすることが難しいのが実情である。これからの都市づくりや公園を含むパブリックな場づくりにおいては「インクルーシブ」をキーワードに、すべての人に開かれた「みんなのため」の在り方を考えていくことが重要だ。  

©PLACE

 

■“インクルーシブパーク”とは

インクルーシブパークには5つの大事な要素がある。

・アクセスしやすいこと

・エモーショナルであること

・五感を刺激すること

・経験が心に残ること

・対話を生むこと

すべての人にそれらを提供するために、あらゆる用具や器具、素材などが検討される。さまざまな方法でその場所に参加でき、ひとつひとつの遊具のサイズが個人にしっくりくる。そこに行くことで、自分はコミュニティに所属しているという安心感を得ながら、子どもたちに発達のニーズをくみ取ったインスピレーションを提供する。

©PLACE

広範囲な遊具は、子どもが自主的に選び遊べるように設計され、「回転する」「すべる」「揺らす」「上る」「這う」「飛ぶ」「跳ねる」「隠れる」といった体験を組み合わせた遊びを通じて、子どもたちはコミュニケーションや社会規範などを学ぶことができる。具体的には、問題解決能力を養い、感情をコントロールする術を見つけ、創造力を育み、人との関係性を知り、冒険することで自信、勇気を学ぶことである。 

 

 

■日本のインクルーシブパーク

日本のインクルーシブパークとして、松陰神社前公園のケーススタディが紹介された。

©コトブキ

松陰神社前公園で行われたのは、地域の未来について、地域の人たち自身が思い描くワークショップ。 ニーズを顕在化させ、みんなで考えることで、住民の当事者意識を育みながら、都市をよくしていく。ハード面では欧米のような広大なインクルーシブパークを一から作り出すことが難しいのではと思っていたが、松陰神社前公園のような日本の小さな街区公園にも、地域コミュニティならではのソフト面からのアプローチによって、例えば少し高さを変えたり、隠れられる空間を設けたりといった工夫をすることで、日本の公園もインクルーシブパークに生まれ変われるかもしれない。そこで大切なことは、障害がある人もない人も、誰もがそこに集えて、子どもが自分で遊び方を選びながら、多様な人が共に時間を過ごせることである。日本では、小さい公園同士が横のつながりを持ち、五感を刺激する自然を模した遊びができる遊具を取り入れることで、今の公園がインクルーシブパークに生まれ変われる可能性がありそうだ。

 

■インクルーシブパークのこれから

日本の公園についてのヒアリングでは、「障害があることによって、公園に受け入れられない」「遊びの機会をあきらめざるを得ない」という声が上がるそうだ。遊びの場としての公平性が担保されなければならない公園が、特定の人々をエクスクルージョン(排除)してしまうことにつながっている。子ども時代に公園であそべないことは、発育・健康・自立心・自己肯定感・地域社会とのつながりを育むことを疎外し、多様な人と関わり多様性を理解する機会や権利を奪ってしまう。アメリカでは、インクルーシブパークがハンディキャップのある子どもの親による寄付を資金源としていたり、公園を利用する人が当事者意識を深くもちながら、地域住民・法制度・NPO団体・企業・大学・自治体、という多方面のステークホルダーと共に公園づくりに関わることで実現されている。日本でも、“知らないうちにできた公園”ではなく、住民の手によってつくられた住民のための地域拠点となるようなインクルーシブな遊び場づくりが行われることで、公園は、それ自体がインクルーシブな社会のハブとなり得る。日本のインクルーシブパークへの取り組みは、まだまだ始まったばかり。これからも、地域に根差した創造的なみんなのための公園が広がっていくことが期待されている。

 

 

インクルーシブパークフォーラム2020

基調講演
:マウリシオ・ビヤレアル(PLACE PLA/ランドスケープアーキテクト)
:ディラン・モーガン(PLACE アーバンデザイナー)
https://place.la/

 

ゲストスピーカー
:村田周一(高野ランドスケーププランニング株式会社代表取締役)
http://www.tlp.co.jp/

:柳田宏冶 / 矢藤洋子(みーんなの公園プロジェクト)
http://www.minnanokoen.net/

 

司会進行
:深澤幸郎(株式会社コトブキ 代表取締役社長)

主催
:株式会社コトブキ
https://townscape.kotobuki.co.jp/

 

取材・文: 國富友希愛
Reporting and Statement: yukiekunitomi

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