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Sep.

2021

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31 Aug. 2021
難病者が働く場を企業側はどう考えているかを調査。その分析をし、白書発行をする意思表明ビジュアルです。

700万人の難病者に働く機会を。今、我が事として考えてください。

佐多直厚
ソリューション・プランナー / プロデューサー
佐多直厚

 この2年、全人類が新型コロナウィルスに翻弄され続けています。新たな感染症という病気の怖さ。すべての人にとって生活の基盤である仕事も多大な影響を受け、あまりの理不尽さに立ちすくむばかりです。そんな世界には名前も知らない、こんな症状があるのかと驚くような難病がたくさんあります。その中でも患者数は少ないが原因不明、治療法が未確定、長期にわたる闘病になる希少難病(正式名称:希少難治性疾患)は7000種類以上もあります。難病に向き合う大変さ、特に仕事を継続する、就業する大変さを知っていただきたいと考えます。プロジェクト記事のvol.1にて詳しい解説。シリーズで向き合う方々のお話をまとめています。参照ください。

 難病とは?ごく簡単に言えば治療が難しい病気。罹患者が多い疾病については国の予算や研究そして医療の規模も大きく、治療法の進化と啓発の広がりも見られます。しかし前段で述べた希少難病や研究が始まったばかりの疾患においては治療も、そして社会理解、特に就業の課題解決は進んでいない状況です。スキルや能力の発揮に病気の理解がないという高い壁があるのです。その壁に挑む組織があります。特定非営利活動法人両育わーるどが事務局となって当事者・支援者・企業が一体となって立ち上げた難病者の社会参加を考える研究会です。彼らが進める難病者が働くという今こそ重要な社会課題解決を紹介し、解説していきます。

両育わーるど代表重光喬之ポートレート

両育わーるど代表重光喬之さん

 さてここまで読んでくださってまだ難病なんて自分には縁がない、身近にもいないしと思っていますか?いえ、あなたのすぐそばにもその危険や可能性はあるのです。朝、目覚めたら難病に。遅刻しそうで走って転んだら難治性の慢性疾患に。日常生活で体の中にあるスイッチが何らかの拍子に入ることは誰にも起こり得るのです。
どうしようもない倦怠感や疼痛などの様々な症状があるものの、見た目は変わらないし、病院では原因、病気を特定できなくて診断がつかず、仕事に行けば体が思うようにならなくて怠け者と呼ばれる。もしかするとすでに心当たりがある方もあるかもしれません。難病を抱える人の中には説明ができないために「慢性疾患があるんです」とだけ言って対処している方もいらっしゃいます。疾患、疾病、障害という分類で資料を参照すると、国内に難病者は700万人以上存在すると推察されます。

障害・難病の社会保障に関する分布図 難病社700万人のうち保障に当てはまらない人が400万人以上い流と推計されます。

*1 平成30年度福祉行政報告例及び衛生行政報告例 *2 令和元年度 衛生行政報告例 *3 国内に公的調査なし。希少疾患及び受給者証未所持の指定難病、難治性慢性疾患含む。患者数は米国の希少疾病患法による疾患人口比率より算出

障害者手帳の診断基準は身体機能面の評価に重きが置かれており、疼痛や倦怠感といった慢性症状によって日常生活を送ることに困難が生じている難病患者には障害者手帳を取得しづらい状況で、指定難病に該当しない難病では医療費受給者証に該当しません。病名も特定されないこともあり、自分はこういう病気ですと公式に示すことができない中で、高額な治療費負担も重い。だからこそ仕事がしたいし、そのスキルはあるのに…。
ここでまたプロジェクト記事vol.2を参照しましょう。実際に難病とどう闘ってきたのか3名の方が話してくれています。「希少難病(レアディジーズ)」、知っていますか? vol.2 二人目に登場している両育わーるど代表の重光喬之さんはこの苦難を自分のことだけでなくすべての人の我が事として社会理解と基盤を整えようと研究会を発足させました。参画している当事者、支援者、企業が一体となって社会にどのように難病患者を活かすことができるか、また社会理解と基盤を整えるためにどうすればよいかを研究。社会制度の狭間の実態を明解にし、難病者が仕事をしたくても企業は、職場は難病者をどう思っているのか?難病者の活動環境は?その実態調査を行い、分析し、インクルージョンな就労モデルを組み立てて提言にまとめ、その詳細な調査・分析そして提言データの公開を開始しました。難病者の社会参加を考える研究会活動報告 この記事は公開データの一端を示しました。疑問点や詳細についてはこの活動報告をご覧いただき、問い合わせてみてください。

 ここまでの活動、アンケート対応に関わった方々こそが理解者として前進し続けています。この報告を今誰に届けるべきか?それは全国すべての自治体1794箇所を中心に捉えて広く企業、組織まで。なぜならアンケートの回答率が高かったのが実は自治体でした。兵庫県明石市はすでに平成27年から障害者雇用に難病者を含める取り組みをしています。住民に近い基礎自治体から先進的な取り組みが広がれば、国の仕組みも変わっていくのではないだろうかと期待しています。白書を製作・印刷して届けようと印刷費用を集めるクラウドファンディングも開始。全国で遅滞なく理解が進み、職場が広く、温かく仲間を受け入れられるようにと歩んでいます。現在新型コロナはその後遺症によって就労不安を抱える人が多数います。難病ではないかもしれませんが、そういう生きづらさに直面する人もすべてインクルージョンする取り組みを応援しましょう。もうあなたには我が事となったはずですから。

<最後にプラス>

コロナ禍の2020〜2021をまたぐ時期にD&I推進に取り組む仲間たちにお願いしたアンケートがあります。

〜あなたのユニバーサルデザインを聴かせてください。〜

両育わーるどメンバー加藤みつきさんが答えてくれました。これを最後に載せさせていただきます。

 NPO法人両育わーるどでは「障害や難病を超え、世界を広げる」をビジョンに掲げ、共生社会の実現・その促進に向けて活動をしております。THINK UNIVERSAL事業では「知らないを知る」をキーワードに、理解啓発ポスターの制作、疑似体験によるコミュニケーションツール 【THINK BOX】 を提供し、THINK POSSIBILITY事業では「社会参加をもっと身近に」をキーワードに、社会の認知や制度から漏れている難病のある人の社会参加の促進を目指しています。

 障害者スポーツ競技情報の増加、ALS患者で人工呼吸器を使用する国会議員の選出、著名人の難病公表が増えていることなどから、「障害」や「難病」について耳にする機会が少し増えたように思います。一方で、障害者手帳は所持していないものの何らかの慢性疾患・難病を抱え、治療を行いながら生活・就業している(あるいは就業を目指す)方の認知はまだこれからです。

 障害者手帳をお持ちでない、慢性疾患・難病のある方々の中には、いわゆる「健康な人」と変わりなく働いて生活している方・病気を隠して働き続けている方もいらっしゃれば、日々身体の痛み等の不調に悩まされ、疾患発症前後で生活が大きく変わった方までいらっしゃいます。

 障害者手帳のない慢性疾患・難病患者さんは、社会制度の後ろ盾が少ない中で暮らしています。こと「働く」という場面においては、働ける時間・働く場所・業務内容に制約がある方もいらっしゃいますが、障害者手帳を所持していなければ、障害者採用枠で採用選考に応募することはできません。持病について伝えるべきかどうか、入社後も就業と治療と両立に悩む方や、見た目にわからない「痛み」や「不安」により、時に誤解を招いてしまうことや心ない言葉をかけられてしまう方もいらっしゃいます。

様々な状況や状態の人々が包摂され、共に支え合う共生社会の実現のために、働く上では共に働く人の抱える就業上の困難さやそれを緩和する方法を知る、お互いの歩み寄りが必要です。共生社会ではこうした心のバリアフリーが一層求められていくとともに、歩み寄りを促進するためにも、障害者雇用促進法に定める対象者の拡充(現在障害者採用枠には該当しない、障害者手帳を所持しない難病のある方々も対象者とする)などの社会制度の見直しも必要だと私たちは考えております。

 しかしながら、障害者雇用促進法に定める対象者の拡充等の社会制度の見直しは、同時に問題も孕んでいます。それは、対象者が拡充することで働きやすくなる人も生まれる一方で、対象を定める過程で、どうしても対象者と対象者ではない人が生まれてしまうという点です。ユニバーサル社会実現法(https://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/bf-index.html)の謳うユニバーサル社会の実現のためには、「既存の判断基準や制度の該当の有無」を超えた社会のあり方を模索する必要があります。それぞれのニーズに応えられるような、既存の判断基準を超えた、抜け漏れのない仕組みこそがユニバーサルな社会の実現のはじめの一歩になるのではないでしょうか。

取材・文: 佐多直厚
Reporting and Statement: raresata

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