超福祉展2017「みんなのダイバーシティ! アイデアセッション」
- 共同執筆
- ココカラー編集部
超福祉展5日目に行われた「みんなのダイバーシティ! アイデアセッション」では、LGBTの方や障害のある方への対応、一人ひとりができることについて意見を交わすグループディスカッションが行われました。参加者それぞれが学びを深めたセッションの様子をお伝えします。
「みんなのダイバーシティ調査」の結果から見えるもの
このセッションは、電通の2020プロデュースセンターと、電通ダイバーシティラボが中心になり実施した「みんなのダイバーシティ調査」の結果を活かしたもので、今回は、「LGBT」と「障害者」をテーマにしたセッションでした。
調査結果を伝える展示コーナー
パネリストは「みんなのダイバーシティ調査」の監修者であり、慶應義塾大学教授の中野泰志先生と、平昌パラリンピックアルペンスキー代表候補の本堂杏実さん。本堂さんには、先天性の左手指欠損ながら、ラグビーのU18日本代表として活躍したという高い身体能力の持ち主。そして、株式会社トロワ・クルール代表取締役の増原裕子さん、認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中権さんの2人。お二人はLGBTの当事者でもあります。
左から、中野先生、本堂さん、増原さん、松中さん
会場に設置された4つのテーブルは、学生、社会人、さまざまな年齢、バックグラウンドをもつ参加者で埋め尽くされていました。
導入として、調査結果の一部がスクリーンに映し出されました。
「『LGBT』」という言葉について知っている」という項目については、40%が知らない、47.2%が知っているという結果に。これについて松中さんは、「2010年頃はほとんど誰も知らなかったことを考えるとかなり浸透してきた」と話します。
「障害のある人と接すること」については、若い世代ほどどうしてよいかわからず、60代は何かできることがあるか聞く、というLGBTとは逆の結果に。
特に、視覚障害者に声をかけづらいと思う方が多いようで、実際に視覚障害者の方が駅のホームから転落して亡くなるケースも多いそうです。声をかけたくても、若い世代ほど恥ずかしさや遠慮が先に立ってしまい、考えすぎてしまうのかもしれません……。
本堂さんは、「そもそも障害者と健常者という言葉があること自体に疑問を感じる。障害は個性の一つだと思う」と話します。
これに対し中野先生は、「〈障害は個性〉は出発点としてはいいが、個性が違う人を認められるかどうかが課題。個性で終わると世の中は変わらない。個性を認め合う社会にするためにはどうすればいいかを、ぜひグループディスカッションの中で考えてもらいたい」と語り、ここからはいよいよ参加者によるディスカッションです。
笑いあり、議論ありの白熱したディスカション
各テーブルに本堂さんや増原さん、松中さんも参加してディスカッションがスタート。約30分のグループディスカッションのあとは、グループごとに結果発表が行われます。各テーブルからは、時にどっと笑いが起きたり、真剣な表情で何かを語り合ったり。みなさん初対面にもかかわらず、熱いディスカッションが交わされていました。
ディスカッション後の報告では、
・「カミングアウトされたが自分にできることがもっとあったかも」
・「意識の壁をどうすればクリアできるのか」
・「目に見える障害をこちらがあえて触れないのはおかしい」
・「意識しないようにと意識しすぎることが、逆に差別になってしまうのでは」
・「どうすればカミングアウトしやすい環境をつくれるか」
などなど、個々のエピソードや経験、課題も踏まえたさまざまな意見が紹介されました。ディスカッションで結論が出たグループも、結論が出ないグループもありますが、何よりも重要なのはこうしてディスカッションし合う「場」を持つことです。
結論に達したグループは、障害のある方が通勤しやすくなる方法として、システム的な部分で優先席を優先車両にまで広げる。ゆとり専用車両を作る。意識的な部分で、義務教育から多様性についての授業を取り入れる、というものでした。ゆとり車両にミストを取り入れる、クラシック音楽を流すとよいのでは、という意見で話が盛り上がったそうです。確かに、ハードとソフトの両方が整わなければ課題は解決しません。
また、LGBTについての知識があるだけでも前進につながるため、マスメディアがもっと話題として取り上げるとよい、という結論も出ました。
今回は時間切れで方法論とまではいかなかったグループも、「ギャップを『別にいいじゃん』と思う日本人を増やすにはどうすればいいか」、「教育にダイバーシティを取り入れるだけでは変わらないのでどうしたらよいか」について議論し合ったそう。「どこも素晴らしい議論が展開できていた」と、中野先生。増原さんは、「知った上で受け入れあう。みなさんがダイバーシティのアライ(理解者・支援者)になってほしい」と提案しました。
中野先生は、「子どもたちの教育をする前に、まず教員を教育してほしい。教員に差別意識があるとどうにもなりません」と言葉を強くします。「2020年に向けて多くの人がダイバーシティに気づく必要がある。今日みなさんが学んだことをいろんな人たちに伝えることがムーブメントを起こすことにつながります。ぜひ日本の世の中を、もっとよい方向に変えていきましょう」と、今回のセッションを締めくくりました。
最後に、参加者である学生さん2人に感想を聞いてみました。
1人は、ジェンダーに対してオープンな高校を選んだことで、自ら問題意識をもってLGBTへの知識を深めることができたという女子学生の方。この高校を選択したことがこれまでの人生で一番いい選択、と自信をもって話す姿がとてもカッコよかったです。「弟が障害者、兄の彼女が聴覚障害者なのですが、今日参加したことでどんな個性があってもいいんだと再確認できました。反面、こうした場に参加するのはやっぱり当事者か、当事者が身近にいる方ばかりだったことは現実を目の当たりにした気分。今後の課題にしていきたいです」と話してくれました。
2人目は、お父様が事故により膝から下をなくしてしまったという同じく女子学生の方。でも、バドミントン、ゴルフ、スキー、なんでもされるそうで、「父が障害者であることを忘れる」そうです。「いろいろなバックグラウンドをもつ方の意見が聞けてとても刺激になりました。ただ父を見ている分、障害者を〈助けたい〉〈助ける〉というニュアンスで特別扱いのように話が展開されていくことに、少し違和感を感じたことも正直な感想。同じテーブルについていた本堂さんが、〈障害はあっても全部自分でできるから大丈夫!〉と話されていたのがすごく腑に落ちました」と話してくれました。
最後は参加者含めての記念撮影
貴重なディスカションの機会で、参加者は十人十色にさまざまな感想や気づきを得ることができたと思います。中野先生がおしゃっていたムーブメントにつなげるためにも、こうした場がもっともっと増えてほしいと感じました。
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