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13 Sep. 2019

編集部が行く!パラスポーツ観戦記 _vol.3ボッチャ

8月13日(火)、「全国ボッチャ選抜甲子園2019」が港区スポーツセンターにて行われました。全国から北は青森、南は沖縄から24の代表校による熱い戦いが繰り広げられました。パラスポーツ観戦初心者となる執筆者が本大会の模様やその魅力を情報満載でお届けします。

 

 

⬛ボッチャとは

ボッチャは、ヨーロッパで生まれた重度脳性麻痺者もしくは、同程度の四肢重度機能障がい者のために考案されたパラリンピックの公式競技です。ジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールに、赤・青のそれぞれ6球ずつのボールを投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、いかに近づけるかを競います。障害によりボールを投げることができなくても、勾配具(ランプ)を使い、自分の意思を介助者に伝えることができれば参加することができます。競技は男女の区別のないクラスに分かれて行われ、個人戦と団体戦(2対2のペア戦と3対3のチーム戦)があります。

ボッチャ選抜甲子園は、スポーツ庁委託事業「Specialプロジェクト2020(全国的なスポーツ・文化大会の開催支援事業)」として開催されています。

ボッチャ競技の競技力向上を図り、特別支援学校の児童・生徒がパラリンピックを身近に感じ、スポーツへの関心を高めるとともに、様々な地域から選手たちの交流の場にもなっているそうです。

 

会場はJR田町駅東口徒歩5分、ちぃばす「みなとパーク芝浦」下車すぐの好立地にある「みなとパーク芝浦」内の港区スポーツセンターです。

⬛テクニック&戦術が光る準々決勝

大会には全国から特別支援学校24校が出場し、団体戦が行われました。3校ずつ8組に分かれた1次リーグを勝ち上がった8校が決勝トーナメントを戦いました。強豪チームとして注目される昨年度の優勝チーム、都立府中けやきの森学園「けやっきーず」と埼玉県蓮田特別支援学校「蓮田ボッチャクラブ」の準々決勝の試合を観戦しました。

ボッチャのルールは先ほど説明した通り、非常にシンプルなものです。ですが、実は緻密な戦略を必要とする頭脳戦なのです。ボッチャはカーリングに似ていますが、その最大の違いは的の位置を選手が決められることです。最初に投げるジャックボールの位置をどこにするかが、まず重要な駆引きです。「相手が長距離の投球が苦手なら遠い位置にジャックボールを投げる」や、「得意な近距離で勝負する」など、何を主眼に置くかで戦い方が変わってきます。また、メンバーそれぞれに得意とする技があります。技や戦術をどのタイミングで出すべきかをメンバー同士で声を掛け合い、出番を決めます。相手の戦略を読み、先手を打つこともあります。

 

勾配具を使う選手は、勾配具の微妙な方向やボールのスピードの緩急をつける高さを補助者に伝えます。車いすの微妙な位置調整は、手元のハンドルを使い、選手本人が行っていました。この調整も勝負の明暗を分ける大きな鍵だと感じました。また、自分の手でボールを押し出すことができない選手は、頭部や口にリリーサーを装着して投球を行います。都立府中けやきの森学園「けやっきーず」のボールが転がっていくと、驚くほど正確なラインを描いて転がっていきます。さすが、昨年優勝校の実力を感じました。しかし、対戦校である埼玉県蓮田特別支援学校「蓮田ボッチャクラブ」もチームワークを見せつけ、接戦の結果、埼玉県蓮田特別支援学校「蓮田ボッチャクラブ」が勝利し、決勝へと進みました。

⬛ボッチャの楽しみ方を知るトークショー

当日は、ボッチャの見どころをわかりやすく解説するトークショーが行われました。登壇された方は、左からMCは高宮悠子さん、ゲストオリンピアンは新体操で北京・ロンドン2大会出場の田中琴乃さん、日本ボッチャ協会の村上光輝さん、新井大基さんです。村上さんは「今年は、昨年の全国ボッチャ選抜甲子園より、球のスピードをはじめ、技術がとても上がっていると感じています。各エリアで競技者が増えていることも、とても嬉しいですね。ボッチャは試合中にコーチが指示を出せないルールがあります。なので、応援される方は、もっと声を出して応援してあげてください。選手たちを和ませて、さらに盛り上げてほしいです。東京オリンピックに向けた強化選手16名のうち、全国ボッチャ選抜甲子園出身選手が3名もメンバーインしています。ぜひ、代表選手になって、来年本番で熱いプレーをしてほしいと思っています」

また、ボッチャ観戦が初めての方でも楽しく観戦できるように、ルールもわかりやすく説明されていました。

 

⬛観客を沸かせた決勝戦

ボッチャの魅力を凝縮したような試合となった都立村山特別支援学校「村山フェニックス」対埼玉県蓮田特別支援学校「蓮田ボッチャクラブ」の決勝戦。ボールの上にボールを乗せるプレーや、何手も先を読んだ戦略を見ることができて、度々、歓声が上がっていました。最後は、チームメイトと笑顔で見せながら落ち着いたプレーを続けた「村山フェニックス」が優勝となりました。2年ぶり2度目の優勝とあって、観客席からも喜びの声があふれていました。

上位3チームが表彰台に上がりました。どのチームメンバーも清々しい表情をみせていました。また、残念ながら表彰台には上がれなかったチームも、閉会式に参加し、みんなで大会の成功をお祝いしました。

1位 都立村山特別支援学校「村山フェニックス」

2位埼玉県蓮田特別支援学校「蓮田ボッチャクラブ」

3位都立府中けやきの森学園「けやっきーず」

試合後の囲み取材では1位を獲得した都立村山特別支援学校「村山フェニックス」の萩原祐人主将から「一球、一球落ち着いて、いつも通りのプレーができたことが良かった。それぞれが得意な試合運びができた。先生をはじめ、周りの支えに感謝したいです」とコメントをしていました。

⬛取材を通して

ボッチャ選抜甲子園は、ボッチャの肢体不自由特別支援学校の日本一決定戦と言われているだけあって、ハイレベルな戦いが繰り広げられていました。分かりやすいルールと予想外の展開や一発逆転も起こりうるスリリングさがある試合展開でとても楽しみながら観戦ができました。今大会は、特別支援学校に通う生徒が、成果を発揮する場に参加することで、東京パラリンピックを身近に感じ、意欲的に日々の体育学習に取り組むことを目指しているそうです。試合中には、選手同士が意思の疎通を図る姿や、ゆずり合う姿勢、お互いを信じ励ます様子を目にして、思わず涙があふれてきました。障がいという壁があっても、前向きにスポーツを楽しむ姿に心を打たれました。ぜひ、来年のパラリンピックでは試合観戦を希望したいと思いました。選手の皆さん、サポートスタッフさん、素敵な大会を有難うございました。

取材・執筆 木村真悠子

取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor

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