色の見え方の多様性を知る –カラーユニバーサルデザイン-
- 共同執筆
- ココカラー編集部
<気づいていますか?「色の感じ方」の違い>
世界はたくさんの色で溢れています。例えば、日本の伝統色だけを数えても、その数は460以上もあると言われているのだとか。国や文化の違いによって、色の呼び名や区分、よく用いられる色が違うことからも、色彩の感じ取り方に多様性があることが想像できることでしょう。
ところで皆さんは、カラーユニバーサルデザイン(CUD)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。社会には、色の感じ方(色覚)の個性によって、一般的に多く用いられる色彩の違いが感じ取りにくい人たちがいます。その数は、日本人男性の約20人に一人。意外に多いと驚かれる方も少なくないかもしれません。カラーユニバーサルデザインとは、こういった人たちにも、情報が正しく伝わるように、色の使い方を配慮してデザインすることを意味します。
ユニバーサルなデザインの視点
では、こういった色弱の人たちは、一体どんな時に不便を感じているのでしょうか。
以下は、カラーユニバーサルデザインを推奨するNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO:クドー)が紹介する「不便を感じる」事例です。
渋滞情報やホームページ、地図や標識の色など。意識を向けてみると、人がいかに、情報の伝達に色彩を活用しているかに気づきます。例えば、注意を促す時によく使われる赤色。これも、表示の仕方によってはかえって見づらくなるというのは、驚くべきことです。
CUDOでは、こういった日常生活の上で感じる「見え方の違い」を共有し、改善に向けたアイデアを話し合う機会を開催することで、カラーユニバーサルデザインの取り組みの広がりにつながる機会を設けています。
この日開催されたのは「育児で気づいた色使い」。子どもを育てる過程でも、色は重要な意味合いを持ちます。例えば、肌や排泄物などの色は、乳幼児の体調管理の指標として重要な参考情報です。また、母子手帳や絵本でも色は多用されていますので、色弱者にとっては、その情報が受け取りにくいケースもあり、親が色弱の場合、あるいは子どもがそうである場合、いずれのケースにも、色による情報格差やコミュニケーション上の行き違いが生じる可能性があるのです。
こうした事態を防ぐため、福島県や神奈川県など、色弱者に対するガイドブックを用意する自治体も増えてきています。勉強会の参加者からは「まだモノの名前をあまり覚えていない子どもには、色を使ってモノが指し示されることも多いですが、色弱者には、それが何をさしているのかわからないことがあり、学習障害と誤解されることも。色弱に対する理解が広まることが大切です」といった意見がありました。
(育児に関連するグッズの数々。子ども向けのおもちゃや書籍は色彩豊かなものが多い)
以前、小学校では「石原式」と呼ばれる色覚検査が実施されていましたが、色弱者であることが判明することが差別につながるなどの批判もあり、2003年より保護者の同意が必要な任意実施となりました。その結果、色弱であることに気づく機会がなく、色の違いがわからない理由を理解できず戸惑ったり、色弱への理解そのものの浸透が進まないなど、別の問題も生じています。
(メーカーによるカラーユニバーサルデザインに配慮した商品開発も徐々に進められている)
「色の見え方が多くの人たちと違うということは、別に異常でも劣っているということでもありません。色弱者だからこそ見えやすい色もあり、色弱のタイプによっては、例えば草むらの中で虫を見つけるのが得意、といった別の際立った特徴があるとも言われています。タイプの違う人たちが混ざり合って生きることで、新しい可能性も生まれるのです」とCUDO副理事長の伊賀公一さんは語ってくださいました。
自分とは違う風に色が見えている人もいるかもしれない。そう気づけるようになることで、社会の見え方がまた、違ってきそうです。CUDOでは、カラーユニバーサルデザインに関する認証制度を展開するなど、積極的に世の中に広める活動を行っています。カラーユニバーサルデザインについてもっと知りたい方は、CUDO の開催するセミナーや勉強会に、足を運んでみてはいかがでしょうか。
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