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3 Sep. 2014

認知症を「社会」の側から見つめよう 〜DFJS2014ルポ〜

認知症の人が400万人を越えた日本。2025年には65歳以上の人口が日本の全人口の3分の1を占め、そのうち、4人に1人が認知症(予備軍含む)と言われるようになると予測されています(厚生労働省調べ)。

このような社会の質的な変化を前に、認知症を「特別な人たちへの対応」として考えるのではなく、認知症の人たちも「普通に」暮らせる「認知症フレンドリー社会」の実現を目指そうと呼び掛けているのが2013年11月に発足した「認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ(Dementia Friendly Japan Initiative:DFJI)」です。

同イニシアチブの立ち上げメンバーが出会ってから3年。認知症を社会全体で受けとめるテーマとして捉えていこうと、これまでに企業・自治体・NPOなどのセクターを超えたメンバーで定期的に集まり、未来に向けた提言やアクションを考えてきました。現在、伴走、オープンデータ、香り、パターンランゲージなどをテーマに9つのプロジェクトが進行しています。そして、こういった考えをより広く社会に伝えていくことを目指して、今年7月「認知症フレンドリージャパン・サミット」が都内で開催されました。

DFJI
認知症イニシアチブの提唱する「認知症対処社会」から「認知症フレンドリー社会」への転換

<「社会×認知症」多様な視点から>

サミットは二日間に渡り開催され、100人を超える参加者が集まりました。1日目のシンポジウムは「認知症の人の声をどのように社会に反映させるか」、2日目のセッションは「認知症フレンドリー社会のデザイン」をテーマに、さまざまな分野で活動する人たちをファシリテータに迎え、参加型のワークショプが展開。「認知症」という一見重苦しく思える課題のイメージからは想像できない、明るくクリエイティブな雰囲気が印象的です。

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認知症フレンドリーイニシアチブ・サミットのセッションの様子 

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「遊ぶ」という視点から、アナログゲームを使ったコミュニケーションの可能性を考えるセッションを提供したのは、コクヨRDIセンターの樋口美由紀さんです。同社運営の「ボードゲームを通して考える力やコミュニケーション力を高める幼児教室」での教育経験や、会社・大学など人が集まる場でアイスブレイクとしてゲームの活用が広がっている現状から、認知症の人たちも含むさまざまな世代の人たちをつなぐツールとして活用できないかと模索しています。今回のセッションでは参加者が「子どもから高齢者まで一緒に楽しむためのルール」について自由に意見を交換しあい「単純」「五感を使う」「協力しあう要素がはいっている」など、多様な提案が導き出されました。「ゲームによって生まれるコミュニケーションが、世代を超えたつながりづくりやコミュニティの活性化に結びついたらと期待して、イニシアチブに参加し、活動しています」と樋口さんは期待を語ります。 

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「行動のデザイン」というセッションをリードしたのは、NPO法人ピープルデザイン研究所代表の須藤シンジさん。障害者やマイノリティの人たちが混ざり合う、一人ひとりがクリエイティブで楽しい気持ちで生きられる社会を目指す「ピープルデザイン」の視点でリードされた須藤さんのセッションからは、「声をかける」「一緒に食べる」「ニックネームをつける」など、人と人のこころがつながり、行動のデザインに結びつくアイデアが共有されました。「社会的な課題の7割以上は、『手伝いましょう』という声がけのような、アナログな人間力で超えることが出来るものではないかと思っています。義務や法制度の問題として難しく議論するばかりではなく、楽しげに、クリエイティブな材料を置いてみんなで進めていく。いろいろな人たちを、元気に混ぜ合わせていく。そういったピープルデザインを広めていくことが、認知症フレンドリー社会に役立つと思います」。 

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富士通研究所の岡田誠さんは「コミュニケーション」の視点からセッションを展開しました。「認知症のような社会的課題に対しては、一社だけで解決策を打ち出すというのは難しく、組織やセクターを越えて取り組むアプローチが大切だと思っています。今回サミットに参加している企業も、CSR部門ではなくマーケティングや企画部門の方が多く、認知症を取り巻く社会的な状況やことがらが、社会的にというだけではなく、自社のビジネスにとってどのような意味を持つのかを考えようとされています。そのためにも社内のメンバーだけで閉じこもって考えるよりも、こういった場で多くの人たちと出会い、互いのセンスを活かして、新しいアイデアやつながりを産み出していくことがモチベーションにもつながりますし、社会的なインパクトを作っていく上でも重要だと思うのです」。 

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セッションを通じて多様な意見がシェアされた

 

<混ざり合うことで、変化が生まれやすくなる>

このイニシアチブの発起人の一人であり、今回のサミットの事務局を務めているNPO法人認知症フレンドシップクラブの徳田雄人さんは、今回のサミットをきっかけに、認知症フレンドリー社会に向けた広がりを益々加速させたいと語ります。

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「イギリスでは、認知症フレンドリー社会の実現に向けたアイデアコンペが開催されていますが、認知症フレンドリージャパン・イニシアチブでも、専門家だけではなく、みんながアイデアを持ち寄り、力を合わせることで、いろいろなことが起こる場をつくっていきたいです。例えば認知症フレンドリーマークのようなものをつくって、その基準を満たす商品やサービスの開発・普及を推進するようなことも考えられるかもしれません」。

認知症を専門に扱うNPOや企業を経営している徳田さんですが、異なる分野で活動する人たちに出会う度に、毎回発見があるそうです。「互いにとって新鮮な情報というのは、必ずあるはずです。認知症という複雑で絡まり合った課題は、それぞれの現場担当者だけが任務として捉えるのではなく『みんなで何をするか』という視点から考えてゆく雰囲気をつくることが第一歩。サミットは、異なるセクターの人たちが出会い、互いに共有できる問いを持つ、貴重な場となりました。日本でも、今後益々、認知症を『社会みんなのこと』として考える動きが加速すればいいなと思います」。

サミットを通じて、認知症フレンドリーな社会は、人とひとが心の垣根を外して出会う場所から生まれるのかもしれないと感じました。

イニシアチブでは、理念に賛同し、活動を共にするメンバーを常時募集中だそうです。既存のプロジェクトへの参加もOKですし、新しいプロジェクトの立ち上げアイデアもウェルカムとのこと。是非一度、活動に参加してみませんか?

認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ公式サイト http://www.dementia-friendly-japan.jp

取材・文: co-maki/今井麻希子
Reporting and Statement: co-maki-imaimakiko

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