「わたしも、わたしでも!」家トレみるスポーツ・エクササイズの多様性と拡がり
- 共同執筆
- ココカラー編集部
突然ですが、皆さんは最近、運動・ストレッチ・ウォーキングなど、身体を動かしていますか?外出自粛により「スポーツジムに行けない!」とか「ランニングに出るのも怖いし・・・」「リモートワークで通勤もしなくなって、全然運動できてない」という方も多いと思います。いつものように自由に身体を動かしたり、安心してみんなとスポーツしたりできる日が少しでも早く来ることを祈るばかりです。
しかし同時に、この環境だからこそ運動・エクササイズ・スポーツに拡がりが生まれているのではないか。もしくは、隠れていた拡がりが可視化されてきているのではないか、とも私は思っています。
家トレムーブメントで顕在化した、「○○でもできる・楽しめる・関われる」スポーツ・エクササイズへのニーズと共感
外出自粛が要請され始めた頃から現在に至るまで、さまざまなタレントやアスリートたちが自身のSNSを通じて自宅でできるエクササイズ(以下略して家トレ)を配信するようになりました。InstagramやYouTubeで、そうしたコンテンツに触れている方々も多いと思います。
私もその一人。あの人気トレーナーのAYAさんが、3月中旬からInstagramで家トレを投稿、時々ライブでも配信されています。ずっと憧れ・フォローしたりしていながら、仕事の忙しさからAYAさんのジムに通えずにいた私からすると、こんなに貴重な機会はない!と、連日AYAさんの家トレコンテンツを見て、トレーニングするようになりました。ダンベルの代わりにペットボトルを使用するなどアイデアも満載の他、ライブ配信だとまさにその場にいるかのように声をかけてもらいながら取り組めるので、エクササイズ上級者ではない私でも存分に楽しめるものとなっています。AYAさんのInstagram上の家トレコンテンツの延べ再生回数は、なんと260万回以上にも上ります。
AYAさんに限らず、サッカーの本田圭佑さんやモデル・タレントの仲里依紗さん、土屋アンナさん、ローラさんなどの家トレ配信も話題になっていますが、トップアスリートやタレントの方々がそれぞれの立場や視点(例えばスタイルの維持やリラックス、女性でも気軽に取り組める、自身のファン層にフィットするものなど)を切り口に、丁寧に作られたコンテンツを提供していて、気軽に楽しみながら取り組めるものが溢れています。
ちなみに、スポーツに関わる企業やブランドをはじめ、スポーツとは縁遠いようなブランドも、そうした家トレコンテンツをマーケティングの一環として取り入れ、配信しているところも増えてきているようです。
そんな中、目を引いたのは、視聴・参加している他の方々の反応です。「私でもできた」「これなら楽しく取り組めそう」「家でもこんなに運動できるんだ」など、「○○でもできる・楽しめる」という発見感を伴うコメントが多数寄せられているのです。
この言葉は、裏返すと、スポーツというのはいろいろと必要なものがある、という考えの人が多かったということではないでしょうか。「運動神経が良くないと」「広いスペースや専門の器具がないと」など。今回、家トレがある種のムーブメントになっていることから、スポーツやエクササイズ、フィットネスに対して気持ち的に(苦手意識など)・金銭的に・時間的に、さまざまな要因で障壁を感じていた人がいかに多いか、ということに気づかされます。、そして、「○○でもできる・楽しめる」というスポーツ・エクササイズの形・姿は今後見逃すことのできない領域になってきています。
もちろん、スポーツ・エクササイズには「する」だけでなく「教える」「観る・応援する」「支える」といった関わり方もあります。「○○でもできる・楽しめる」という視点は「する」だけではなくスポーツ・エクササイズへの関わり方全般に関してあてはまるものなのではないでしょうか。
家トレから考察するスポーツ・エクササイズの多様な拡がりを生み出すための視点
今回の家トレムーブメントで、これまでスポーツ・エクササイズと接点がなかった人たちが、どのように「私でもできた」「家でも楽しめた」という発見感を持つに至ったか。(様々な視点で考察ができると思いますが)今回は大きく2つの視点について、簡単におさらいしたいしてみたいと思います。
1つ目は、等身大の人や言葉で「共感の種」をつくることです。今回、トップアスリートやタレント、モデルなど、様々なバックグラウンドを持つ方々がコンテンツを発信しています。おそらく「この人の配信だから」こそ反応した人も多いはず。スポーツ・エクササイズは、アスリートのもの・筋トレが趣味の人のもの・ダイエットしたい人のもの等々、固定観念で判断してしまいがち。しかし、発信する人が多様なほど、スポーツ・エクササイズといっても目的やアプローチの方法がそれぞれ異なっていて、それぞれの人が等身大の言葉と姿で発信してくれるからこそ、「これなら楽しそう」「これなら自分でもできそう」と思えるようになるのだと思います。つまり、多様な共感の種を、共感できる人を通じて、多様な価値感や立場の人に届けてくれることが発見感を与え、人を動かしていくのだと思います。
2つ目は、負荷の少ない参加の場づくりを行うことです。マーケティングではよく、カスタマージャーニーを描き、顧客のペインポイントを探り、それをクリアするための方法を策定していきます。特にデジタルの世界では、いかに顧客の負荷を減らし、シームレスに体験を提供するか、という視点が問われます。今回の家トレムーブメントも、家でもできる(スマホがあれば自宅がジムになる/憧れの人と一緒にトレーニングしている気持ちになれる)、自分のペースでできる(ジムだとやらなきゃいけないけど、家トレ配信なら疲れたらさぼったっていい)など、まさにデジタルの良さが活きていると思います。
さいごに:
「共感の種」で拡がるスポーツの新しくて楽しい体験は、パラスポーツでも。
さて、このように家トレについてスポーツ・エクササイズの多様な拡がりという視点でとらえたとき、私は、今回の家トレムーブメントとパラスポーツにはいくつかの共通する要素があるのではないかと思っています。
パラスポーツは、障害をお持ちの方々に適したルールになっている、障害の程度に応じて取りくめる、など、そもそも多様性のあるもの。これはcococolor読者の皆さまが既にお持ちの認識かもしれません。しかし、私たちパラスポーツチームがパラスポーツの現場や実際の選手・関係者の方々お話しを聞いて思うのは、パラスポーツにおける多様性は、実はもっと広く・深いということです。
そもそも私がパラスポーツに興味を持ったのは、パラアスリートや関わる人たちのストーリーやモチベーションの違いをもっと深く知りたい、そこには大切な価値が隠されているのではないか、という想いからです。ちなみに、その想いを抱くようになったきっかけは、叔母がウルトラマラソンの日本の第一人者的な選手で、そんな彼女が過去に盲目の選手の日本縦断マラソンを伴走している姿を見たときに「パラスポーツには関わる人それぞれにとって、1番を目指すだけではない、オンリーワンな意味や価値・ストーリーがあるはずだ」と感じ、それをもっと解き明かしたいと思ったことでした。
選手によってパラスポーツをはじめたきっかけが違う、パラスポーツでトップを目指すモチベーションも異なる、トレーニングの方法も違えば仕事や生活スタイルも全然違う、などパラスポーツには競技・試合だけに留まらない多様性が潜んでいて、その分、多様な人にとっての多様な共感の種がたくさん隠されています。また、トレーニングをサポートする人・器具の面からサポートする人・企業活動の一環としてキャリアをサポートする人など関わり方も幅広いです。まだマイナーなパラスポーツかもしれませんが、「私でも楽しめる」「私でも共感できる」「私でも関わりをもてる」など、多様な共感の種や多様な関わり方があるのではないかと思うのです。
特に今回、コロナ禍では、パラアスリートたちもさまざまな取り組みや発言を行っており、その多様性も普段より可視化されているように思います。医師と競技を両立していて新型コロナウイルス対策の最前線で活躍する選手 や パラスポーツならではの自宅でできるユニークなトレーニングを紹介する選手や団体 など、IPCのウェブサイトにもいくつか紹介されています。
先ほどご紹介した、家トレムーブメントの拡がりの視点に照らし合わせて考えたとき、パラスポーツには、人それぞれにとっての(あなたにとっての)多様な共感の種がきっとあり、それを人それぞれの(あなたの)言葉・視点で、もしくは企業・ブランドのメッセージとして発信してもらうことで、共感してもらえる人の輪を広げていくこと。また、スポーツやマーケティングに関わる全ての人に協力を仰ぎながら、選手・観戦者・サポーターをはじめ関わる人の負荷をさげていくこと。こうした視点が重要性なのだと思います。その意味でも、私たちはこれからもパラスポーツについて一つでも多くの共感の種を、私たちなりの言葉・視点で発信しながら、パラスポーツやスポーツの多様性について、引き続き皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
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18 Nov. 2022
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