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Apr.

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21 May. 2020

「#おうちでプライド」~東京レインボープライド2020~

八木まどか
メディアプランナー
八木まどか

「どんな時も、自分らしく」TRP初のオンライン開催

アジア最大級のLGBT関連の祭典として、毎年、GWに開催されていた「東京レインボープライド(TRP)」。今年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で代々木公園でのイベントおよびパレードが中止となった代わりに、4月25日(土)~26日(日)に「#おうちでプライド」と題してオンラインイベントが行われた様子をレポートします。

昨年のパレードの様子

代々木公園でのブース出展の様子

TRPでは例年、代々木公園で2日間にわたり、企業・団体のブース出展やアーティストのライブのほか、代々木公園周辺道路で数時間にわたりフロート(飾りつけをされた乗り物など)とともに参加者がレインボーフラッグを振って行進するパレードが行われます。

今回は、直接集まることができなくても、想いを共有すること、互いを尊重すること、どんな状況でも自分が自分らしくあることの大切さを、こんな今だからこそ多くの人たちと共有したいと考え、多くのゲストを迎えたオンライントークLiveをTwitterで配信。2日目には、13時~16時の時間帯を「オンラインパレード」として、「#おうちでプライド」「#TRP2020」のハッシュタグをつけてSNSでの投稿を呼びかけることによって、多くの方たちが虹色のメッセージで繋がれるようにしました。


公式TwitterアカウントからのLIVE配信の様子

その結果、オンライントークLiveの総視聴者数は両日合計で438,786(公式HP発表)、オンラインパレードの時間での投稿数はTwitterだけでも12,000件を超えたそうです。

代表を務める杉山文野さんは、25日のオンライントークLiveの冒頭で、リアルイベントの開催中止発表後、多くの人から励ましの声をもらい、イベント自体がなくなっても人と繋がる気持ちを忘れたくないと感じたこと、また「(例年は「ハッピープライド!」と称え合うところ、)今は「ハッピー」と言っていいのか迷う時だけれど、どんな時でも自分らしくいよう、というメッセージを共有できれば」とオンラインでの開催に込めた思いを語りました。

今年のテーマは、「Your happiness is my happiness~あなたの幸せは、私の幸せ~」。それぞれが思い描く「幸せのかたち」を尊重し合い、お互いの存在を笑顔で祝福できる社会の実現を目指して、掲げられました。

多彩な業界のゲストからメッセージ

オンライントークLive には、2日間で16組ものゲストが出演。為末大さん(元陸上競技選手)、秋元才加さん(女優)、水原希子さん(モデル・女優)、MISIAさん(シンガー)など、初めてTRPの公式イベントに参加した人を含め、多彩な業界の人たちが、TRPへの思い、多様性についての考えや、最近感じた「私の幸せ」などをテーマに話しました。


初めてTRP公式コンテンツに参加した秋元さん 

水原希子さんは、イベントが予定通り代々木公園で行われていたら、パレードで自身がデザインしたフロートで参加する予定だったそうです。「TRPのすごいところは、LGBTの人だけでなく、色んな人が《ありのままの自分でいたいと思うのは、私だけじゃないんだ》と勇気をもらえるイベントだということ」と話しました。

また乙武洋匡さんは自身のSNSなどで発信していた内容を重ねて語り、「外出自粛の状況以前から、たとえば車いすユーザーは電車に乗って外出がしにくかったり、ライブハウスなど入りづらい場所もあったりしました。平常が戻ったとしても、不便さを抱えたままの人がいることを忘れないでほしい」と語りました。


昨年はパレードにも参加していた乙武さん

歌手のMISIAさんは、昨年のNHK紅白歌合戦におけるレインボーフラッグを掲げたパフォーマンスについて、「レインボーフラッグはすべての人を認める印だということを、放送局や出演者、観客に説明し、理解してもらった上で一緒に振った」と語りました。


初めてTRP公式コンテンツに参加したMISIA 

MISIAさんと同じ時間で出演した松中権さん(認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表)は、東京2020オリンピック・パラリンピックに合わせて4月中旬から新宿にオープン予定だった「プライドハウス東京2020」(※)について紹介。大会自体の延期に伴い、プライドハウスのオープンも延期となりましたが、オンラインでの活動を始めるべく準備中とのこと。また、今後はスポーツイベントに合わせた一時的な施設ではなく、常設のLGBT関連のセンターを設立し、特に若い人たちのための交流の場をつくりたいと語りました。

オンラインパレードだからこそ、地域の垣根を越えて繋がれた

オンラインパレード時には、8,000件を超える投稿が寄せられました。日本各地からの投稿だけでなく、海外からの投稿もいくつもありました 。


公式Twitterアカウントによる、オンラインパレードの呼びかけ

「自分のプライドを思い出させてくれるこのイベントが大好き」「色んな未来を繋ぎたい」「今年は親子でフロートを準備し、パレードに参加予定でした」「またみんなに会いたい」などといったメッセージが、カラフルな写真とともにたくさん投稿され、私の画面上にまさに虹色のパレードが生まれました。また、昨年までのTRPの写真を投稿する人も多く見られ、楽しかった代々木公園の雰囲気を思い出すことができました。

皆さんもぜひ、SNSで「#おうちでプライド」「#TRP2020」を検索したり、TRP公式HPに掲載されたメッセージを読んでみてください。

2日間通しての視聴者数は約44万人にのぼり、昨年のイベント来場者数が約20万人だったことを考えると、形は違っても、多くの人とコミュニケーションを図ることができたと感じます。また、今年は代々木公園での開催とはまた違った文脈で、興味を持ってくれた人もいたのではないでしょうか。オンライン開催にすることで地域など物理的な「境目」が取り払いやすいのはメリットだとわかりましたし、何より、どんな状況でも、人と人との交流や発信を絶やさない工夫をしたことが、今後も続くムーブメントに大きな役割を果たしたと感じました。

「おうちで」と言いながらも

TRPは仲間と出会い、繋がれるイベントである一方、「今、外出がしづらく孤立している若い当事者もいるかもしれない」と杉山代表が述べたことが印象に残りました。家族にカミングアウトをしていなくて悩んでいるなど、家が、心理的に安全とは限らない人もきっといるでしょう。

これは、LGBTの方々に限らず、外からは見えづらい課題をもつ人たちが共通して直面する悩みだと感じました。むしろ、多くの人にとっても、今は行動範囲の基本が「家」であることで、誰かにSOSを出しづらかったり、他人の不調のサインに気づきにくかったりするのではないでしょうか。

非常時でも平時でも、自分の思いを我慢して抑え込むべき理由はないはずです。たとえ「もっと大変な人がいる」と感じてしまったとしても。むしろ、あえて思いを外へ出してみると、助け合える仲間を見つけられるかもしれません。

来年は、さらにパワーアップしたTRPとして、さまざまな人と繋がれることを祈ります。

 

※「プライドハウス東京」とは、LGBTなどのセクシュアル・マイノリティに関する情報発信を行う、期間限定のホスピタリティ施設を設置し、多様性に関する様々なイベントやコンテンツの提供を目指すプロジェクト。NPO、企業、各国大使館など30以上ものセクターが協力して運営するのは日本だけの特徴です。昨年ラグビーW杯の時に原宿でオープンし、cococolorでも取材しました。

「2019秋、プライドハウス東京が原宿にやってくる」

「まだ出会えていない多様性に出会える『プライドハウス東京2019』オープン!」

 

取材・文: 八木まどか
Reporting and Statement: yagi

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