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interview
17 Aug. 2017

身近な存在として受けとめ、自然な広がりをつくる –ストライプインターナショナル

LGBTについて取り組む国内企業の先進的な取り組みについて紹介するこのコーナー。株式会社ストライプインターナショナル(以下ストライプ)の人事本部ダイバーシティ推進室の二宮朋子さん、人事部採用チームの上野真未さんにお伺いしました。(2017年6月12日採録)

「セカンドファミリー」の関係を広げるように

—2016年から東京レインボープライド(TRP)に出展されていますね。

上野: 2016年3月に社名がストライプインターナショナルへ変わったことをきっかけに、一人ひとりの個性を大切に、みんなが働きやすい会社を目指していこうという取り組みが始まりました。

二宮: 経営理念「セカンドファミリー(*)」にあるように、大切な存在、身近な存在というところから自然な形で広げていこうという感じで。代表の石川康晴がタネを撒き、それが芽吹くような形で活動が広がっています。

(*)企業理念:「仕事上の関係よりも親密で、信頼しあえる、家族の次に大切な関係。それがセカンドファミリー。その関係を社員同士、関係各社、お客様へも広げ続けます」

DSC_1305(2016年TRPは「着たい服を着よう・着たことのない服を着よう」をテーマに、ファッションを通して自分らしさを考えるブースを出展した)

二宮:去年「famiro(ファミロ/”family”+”iro(色)”)」というダイバーシティプロジェクトを設置しました。カラフルな個性を応援したいという想いから、個性を大事にするためにはどんな観点があるかと考え、そこから最初に生まれたのが「LGBT」の取り組みだったのです。

—2016年度の「PRIDE指標」でアパレル業界の企業として唯一、ゴールドを受賞されました。LGBTの取り組みを進めるにあたり、どのような点に着目しているのでしょうか?

 「Diversability」を高める

二宮: 一人ひとりが、多様性を理解し、受け入れる能力「Diversability(ダイバーサビリティ。Diverse(多様な)とAbility(能力)を合わせた造語)」を高めることが大切だと考えて、社内でいろいろな企画を展開しています。昨年から始めた勉強会は、はじめは管理職を対象に開催しました。部下に当事者がいるかもしれないということを実感し、ビジネススキルのひとつとして理解してほしいことを伝える内容でした。その後は東京本部や岡山本社で、役職問わず、希望者を対象に開催しています。

_201706photo2-51上野: 当事者を招いた座談会形式で、LGBTの基礎知識や、普段の生活でどんなことを感じているのかなど具体的に話を聴くことで、自分なりに仕事の中でできることを考える場にしているのです。

二宮: 今年の6月には、(TRP共同代表の)杉山文野さんを招いて座談会イベントとしてトークナイトを開催しました。トークナイトの開催はこれで3回目です。文野さんの体験談を聞いたあと、グループに別れて、話を聞いた感想や、LGBTについて身近に感じる話題をシェアしました。「自分が理解しているつもりでも、自分の大事な人がLGBTに抵抗感がある場合にはどうすればいいのだろう?」といった悩みの共有もありました。私たちは社内に「アライ(支持者)」を増やしていきたいと思っていますが、感じたこと、自分の経験を素直に話すことによる学びがとても大きいと感じています。慣れていないことが理由で生まれる抵抗感もあると思います。だからこそ、身近に感じられる場をつくることで心の壁をなくしていきたいと思っています。

talknight4(社内で開催している「トークナイト」)

LGBTの取り組みが、採用にも好影響

— LGBTについて伝えるため、さまざまなコンテンツを作成していますね。

二宮: 社内専用コミュニケーションアプリ「amily」では、プロフィールに「レインボーマーク」をつけて、アライであることを表明・顕在化する機能を追加しました。既に、多くの社員がアライ表明をしています。「ストライプTV」という社員向け動画でも、LGBTについて伝える回を用意しました。ストライプに入社した社員は、全員この映像を視聴しています。今年2月1日には、ダイバーシティ推進室がたちあがりました。会社としてもさらに大事にしていきたいと考えています。

stripegotaram(famiro_stripeのアカウント(http://www.gotaram.com/u/famiro_stripe)でも、活動の様子を発信している)

stripe_koho(2017年3月、ストライプTVは経団連社内報審査 映像部門で「総合賞」を受賞したhttp://stripe-intl.com/news/2017/0316-01/pdf/news.pdf

上野:「LGBTにちょっと関心はあるけれど、まだあまり知らない」という社員もたくさんいます。今後はそういう人たちを巻き込んで、全国でアライを増やす活動をしていきたいです。famiroのプロジェクトメンバーに岡山で働いているスタッフがいるのですが、そのスタッフが中心になって、岡山や広島などで自主的なLGBT勉強会が開かれています。つながりのある店長にも声をかけ、毎回30人くらいが集まっています。難しく勉強をする形ではなく、「どうしてプロジェクトに入ろうと思ったのか」とか、「その自分がアライになっていく心境変化」をメンバー自身が話すことで、周囲が共感したり、「自分だったらこうだな」と考えるきっかけをつくっています。今度は、広島で勉強会に参加したスタッフがきっかけとなり、山口県でも勉強会が開催される予定です。こういう話を聞くと、自然でいい広がり方になっているなと感じます。

二宮: あえて「これをしなさい」というのではなく、自然に広がっていくのがいいのかなと思うんです。LGBTについても、特別視するのではなく、「当たり前の人権」としてあるものなんだよ、という風に社員には伝えています。いろいろなダイバーシティ推進担当者がいて、会社によって感覚も違うと思いますが、当社は平均年齢が若く柔軟な社員が多いことも特徴の一つかなと思います。
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— 制度面での展開はいかがでしょうか?

上野: 制度としては、去年は相談窓口を設置しました。また、こういった取り組みを外部に発信するようになったせいか、新卒採用のエントリーが格段に伸びていて、昨年比で150%ほどになっています。これまでは説明会でLGBTについて聞かれることはほとんどなかったのですけれど、今年は、「ダイバーシティにまつわる取り組みは具体的に何をやっているのですか」という質問や、「自分は当事者なんです」と、カミングアウトしてくれる人もいました。

二宮:「言っても大丈夫」って思ってもらえることが大きいですね。

上野: 面接の場でそういうことを言っていただけるという安心感を持ってもらえるんだなと感じました。

ローカル・アクションとしての定着を目指して

—「All-Genderのトイレ」をつくったと伺いました。

二宮: 当事者の方から、毎日使う必要のあるトイレが、男女がくっきり区分けされていることがストレスになると伺ったことがきっかけです。Gender(ジェンダー)という言葉を複数系にすると、男女という性別があるような感じがするということで、英語がネイティブの方にもチェックしてもらって、AllとGenderという単語の間にハイフンを入れて一語にすることで対応しました。
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—身近なところからのアクションを大切にされているのですね。

上野: 新卒採用の会社説明会は、先輩社員が参加するのですが、LGBTについて質問に答える機会が増えていますので、そのことについて社員が知っている必要があると感じています。

二宮:店舗でも、「接客の対応で、薬指に指輪をしている方が女性用の服をみていても奥様へのプレゼントとは限らないよ」といった具体的なことを考えられるようにしています。

—今年のTRPでは、本社のある「岡山」へのメッセージを発信していました。

二宮: LGBTに関連するイベントは、地方にはあまりないということを知り、レインボーアクションを創業の地で起こしたいという想いから発信しました。TRPの出展ブースでメッセージを書いてくださった方には、地方からいらした方が多く、「地元ではカミングアウトできていない」という声もありました。当事者団体の方の中には、「あまり前面には立ちたくない」という気持ちもありますので、どのように進めていくのがいいのか、一緒に話し合っています。

二宮: 個人のSNSに「All-Gender」のトイレのことをUPしたら、岡山で活動している方から「そういう会社であれば、一緒に何かやってみたい」というメッセージをいただくこともありました。
stripe_TRP2017(TRP2017の出展ブースにて)

ひとりひとりのニーズを尊重

上野: どんなお客様にも、その方固有のニーズがあると思っています。LGBTであるかどうかに関わらず、かわいらしいのが好きな方、ボーイッシュなものが好きな方というのはいらして。その方のニーズを把握する前に、決めつけた発言をしないようにと考えるようにしています。
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—車椅子の人にも履きやすいユニバーサルパンツの受注販売など、さまざまなダイバーシティ対応に取り組んでいらっしゃいます。今後、どのような展開を考えていますか?

二宮: 洋服だけじゃなくて、ライフスタイル全般で、グローバルな展開も見越して、ラインアップを増やしています。今後も一人ひとりのハッピーにつながる、さまざまなお客様のニーズに答える商品をつくっていきたいと思っています。
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取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor

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