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Dec.

2024

interview
9 Jul. 2018

ビズリーチ幹部が語る、ダイバーシティ&インクルージョンの本質とは

働き方改革と並び企業経営のキーワードとして挙げられる機会が増えてきた“ダイバーシティ&インクルージョン”。企業の採用において、このキーワードは各社の施策にどのように落とし込まれているのでしょうか?

2009年の創業以来、日本の採用業界に変革をもたらし続けてきた株式会社ビズリーチ。今回、同社を訪ね、代表取締役社長の南壮一郎氏、執行役員/ビズリーチ事業本部 本部長である酒井哲也氏にお話を伺いました。

はじめに、酒井執行役員に、現在の採用業界におけるトレンド、またビズリーチが会社としてどのようにダイバーシティ推進を行っているのかについて伺いました。

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執行役員/ビズリーチ事業本部 本部長 酒井哲也氏


ダイバーシティ&インクルージョンは成長戦略

Q:日本の人材採用市場をご覧になっている中で、ダイバーシティ&インクルージョンはどのように企業のアクションに落ちているのでしょうか?

採用市場において優秀な人材を採用しようとした時に、多様な人材を積極的に採用していかなければ優秀な人材を確保することが難しくなってきています。併せて、多様な人材を活かしていける企業経営をしていかないと成長戦略にも繋がらない。最近の世の中の潮流として、各企業が様々な取り組みをしているのはこうした理由があるからだと思います。

その結果、多くの企業で、多様な働き方が認められつつあり、求職者もワークスタイル・ライフスタイルについて希望を主張しやすくなってきている傾向にあります。

優秀な人材の確保と企業の持続的な成長は、多様性を受け入れていかないと実現できない。昨今ではそのような意味合いが強いように見受けられます。

「国が言っているから」ではない

Q:様々な企業がダイバーシティの方向に向くようになったターニングポイントはありますか?

5~6年前からダイバーシティという言葉をよく耳にするようになりました。当時は政府の旗振りもあり、「意図的に達成させなくてはいけない」というような文脈で語られていたとように思います。そのため、ビズリーチに対しても、「女性だけをうまく採用するにはどうしたら良いか」という相談もありました。こうした強制力が生まれたことも、日本におけるダイバーシティの一つの転換点になりました。

ところが直近の1~2年に関しては、ダイバーシティ推進の目的が、「国が言っているから」ではなくなってきたと感じます。「労働力を維持するために」という観点で、もっと多様性が受け入れられる企業経営をしていこうという企業の意見がよく聞かれるようになりました。これは外資のみならず、日系企業のあらゆる業種に関しても、大手を中心に女性の管理職比率目標を掲げるなど、全般的に広がってきているように感じます。

 

多様性を受容すること”への葛藤

Q:貴社のプラットフォーム上で、ダイバーシティ&インクルージョンに関する取組はされているのでしょうか?

ビズリーチとしても、「ダイバーシティ推進企業の特集」を行うなど、会社としてダイバーシティを非常に重要視しています。社長である南に海外在住経験が長いという背景もあり、「多様な価値観がそれぞれ存在するような社会・会社が良いよね」ということを良く話しています。だからこそビズリーチは、以前から”多様な人材が多様な状態で居られる良さ”を重要視しており、今回の活動にも良い影響を与えていると考えています。

ただ私自身、最初は葛藤もありました。というのも、「敢えて何かにフォーカスをあてることが、果たして本質的に多様性を受容することになるのか?」ということへの疑問を持っていたからです。ダイバーシティ推進企業特集をビズリーチのプラットフォームに出すことがポジティブに働くのかどうか迷いました。

ただその時の結論としては、その疑問点や迷いも含めて、誰かがチャレンジしてみないことには始まらないとも思いましたし、社員が自ら発案してくれたアイディアであったという理由もあり、「是非やってみよう!」という意思決定を行いました。

 

女性活躍推進の本質は「男性が女性を理解すること」

Q:酒井さんご自身はダイバーシティ&インクルージョンをどのように捉えていらっしゃいますか?

ダイバーシティ&インクルージョンについて考えるにあたって、自分自身が納得したエピソードがあります。それは、ある企業の人事部長が女性活躍推進に関する議論をしていた際に「(女性活躍を推進する上で重要なのは)女性にフォーカスすることではなく、男性が女性を理解することだ」とお話されたことです。

当時、私自身は、“女性の採用”や“LGBT支援”というダイバーシティの課題に対して、課題の対象となる人々にフォーカスした施策をどのように行うか、考えを巡らせていました。しかしその時、「女性」や「LGBT」など、議論の対象者となっている方の周囲の人々が、どのように理解するのかということの方が大事なのだということに気付かされたのです。

それ以来 “ダイバーシティとは、多様な考えを理解することである” と自分の中で認識しながら考えるようにしています。

 

未来の働き方=多様性を受容した働き方

Q:貴社のコーポレート部門では、社内のダイバーシティ推進に向けてどのような活動をされていますか?

ビズリーチでは”未来の働き方”という話を頻繁にしています。その議論の中で、未来の働き方の標準は「色んな多様性を受容した形でやっていくんだろうね」という意見がよく出ます。

今年、ビズリーチはTOKYO RAINBOW PRIDE(以下TRP)への出展を行いましたが、その理由は社員自らが多様なライフスタイルやワークスタイルに触れ、そういった世界を理解しようという目的からでした。「未来の働き方について考える上で、まずは自分たちがその世界を感じよう!」と有志の社員が能動的に取り組んでくれました。また、全社朝礼においても、LGBTに関する勉強会を行い、とても盛り上がりました。この勉強会の開催も社員の自発的な提案によるものです。

 

トップの意思が、社員を突き動かす

Q:お話を伺っていて、会社の取組に社員が積極的に関わろうとする点がとても印象的です。社員を巻き込む活動を行う際、工夫されている点はありますか?

このように社員が自ら主体的に動くのは、ビズリーチの企業風土が大きく寄与していると思います。

人材領域を中心とした事業に携わっていることもあり、人や働き方に興味がある社員が多いということもあるかもしれませんが、まず、社員の「参加してみよう」「やってみよう」という意識が非常に強いです。

そして、意識だけではなく、実際に行動に移していけるのは、勉強会や社内イベントも含め、社長の南が自ら一緒にやろうとする姿勢を見せてくれるからだと思います。トップが一緒にやろうとしてくれるから、社員が手を挙げやすい風土も創られます。トップ自らが行動を起こすことで、社員もより積極的に動いているように感じています。

 

ここまでは酒井執行役員に、採用業界におけるダイバーシティ&インクルージョンと、ビズリーチにおけるダイバーシティの取組について語って頂きました。続いて、ビズリーチに根付くダイバーシティ哲学について、南社長にお話をお伺いしました。

 

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代表取締役社長 南壮一郎氏

 

正直に、”分からないことを認める”ことが一番重要

Q:南社長が社員のみなさんにダイバーシティ&インクルージョンを紐解くとすると、どのように説明しますか?

ただダイバーシティ&インクルージョンと言っても、よく分からないというのが正直な気持ちだと思います。私自身、分かっているとは言い切れません。なぜなら、人は”自分事”で無ければ興味を持ちにくいからです。

しかし、よく分からないということを認めない限り、何も前に進まないので、まずは分からないことを素直に認めることが一番重要なのではないかと考えます。

特に企業のトップが素直に分からないと言わない限り、社員も分かったフリしかしないでしょう。これはビジネスモデルや人事制度など、何でもそうですが、トップが素直になることが組織の成長のためには必要だと思っています。

 

変わり続けるために、学び続ける” 自らの姿勢を社員に見せる

Q:実際に、そのようなメッセージを社員に伝える機会はあるのでしょうか?

私自身の考えは、全社朝礼や企業内コミュニケーションツールなどを活用し、あらゆる場面で発信するようにしています。また、役員や部長などの幹部にも、繰り返し発信し続けています。

常に意識していることは、“自らが学び、変わり、成長し続けていく姿を周囲に見せていく”ことです。自分が強く信じていることであるならば、自分の行動に表れます。逆に言えば、行動に出ないのであれば信じていないことと同然だとも思います。こうして、“変わり続けるために、学び続ける”姿勢を見せることが、自分にとってのリーダーシップだと思っています。

 

社員の声が経営に届く、ビズリーチの”風通しの良さ”

Q:現場から挙がってくるアイディアや提案を大事にされている企業だと思うのですが、それはなぜでしょうか?

まだまだビズリーチは発展途上ではありますが、今のこの環境だからこそ適えられるものがあると考えています。それは例えば、社員が日常的に自分の考えを社内や経営に届けられることもその一つです。もし、組織として数万人規模という環境だと、このような風通しの良さを維持するのも難しくなるのではないでしょうか。

ビズリーチには社長室もありません。オフィスが複数のビルに入っているので、便利な場所で都度会議をする方が効率的ということもありますし、単純に私自身がオフィスを歩き回ってメンバーと会話することを楽しみにしているからです。社員にお菓子を持って行くこともありますね(笑)ただこれも、ビズリーチが今の規模・時期だからこそできるというのもあるので、こういう社員とのコミュニケーションを大事にしたいという思いが強いです。

 

常にマイノリティとして生きてきた原体験

Q:“変わり続けるために学び続ける”というご自身のリーダーシップ像をお話頂きましたが、どういった経緯でそれを確立されたのでしょうか?

僕は幼いころからずっと、”マイノリティ”に属する生活を経験してきました。

6歳の時にカナダに移住して、家族以外はアジア人を見かけないという環境で小学校時代を過ごしましたので、物心ついた頃から、自分だけが見た目も話す言葉も周囲とは違う状態でした。しかし、子供の凄いところは、私も周りの子供たちも、まだ幼く、固定概念がないからこそ、お互いの違いを全て受容できてしまうのです。子供同士が人種差別などしているところを見たことはありませんでした。

カナダでの小学校生活を終え、13歳で静岡の公立中学に入学しました。入学した中学校では、髪の毛を丸刈りにすることや、番号の書いてある体操服を着ることが要求され、大きな衝撃を受けました。そして、カナダからきた僕は、日本語も周りの生徒のようには話せないということから、周囲から外国人扱いを受けることもありました。ただ、時間とともに何とか順応していきました。しかし、静岡の県立高校からアメリカの大学に進むと、また同じことが起こります。なぜなら当時の私の英語力は中学1年生レベルで、周囲の会話についていけなかったのです(アメリカの高校生のように、ビバリーヒルズ高校白書だって見ていない・・・)。

このように、僕はずっとマイノリティの立場を経験してきました。マイノリティがサバイバルするために実行することはとてもシンプルで、まずは”観察”です。観察をしないと生き抜けないと感じました。当時は理由もなく、生意気だと言われて殴られるような時代でしたから、自分自身が生き残るために、考察・観察をしていきました。

観察を続けていくと人や組織のことを俯瞰して見えるようになります。「組織にどのような人がいて、どのような構造で成り立ち、どのような人がいる組織が明るくて・・・」というように、これらのことがとてもよく分かるようになりました。そしてこれは、国をまたいでも大きく変わるものではありませんでした。

 

理想のリーダーシップ像

また、上記の経験から、リーダーシップの本質についても、国をまたいでも変わらないことを確信しました。

私にとって真のリーダーシップ像とは、先ほどもお話したような”変わり続けるために、学び続ける”リーダーであり、新しい環境で”無”となって、その環境の重要なポイントを理解し、自らが溶け込みながら周囲を引っ張る姿でした。

多様な人を巻き込むという点では、多様な価値観が混在するなかで結果を出すことを多く経験してきたので、本質的な成果で評価するということを重要視しています。例えば、性別によって得られるチャンスに差をつけるということもしませんし、女性だからといって成果や評価を甘く見るということもありません。

ダイバーシティ&インクルージョンとは、腫れ物を扱うのではなく、皆が自分事化し、興味関心を持てるようにすることが重要だと考えています。そうしなければ、多様性に関する課題は解決しません。

 

「働き方と経営の未来を創る」ためのダイバーシティ活動

Q:最後に、貴社がダイバーシティを推進している理由について教えてください。

ひとつめの理由としては、会社の成長に伴い、特定の価値観だけでは経営できない環境になることを見据えてきたからです。企業規模やステージが変わっていくなかで、様々な価値観・バックグラウンド・ライフステージを持つ人たちを受容しサポートしていかない限り、この会社が発展し続けることは無いと思っています。

ふたつめの理由としては、ビズリーチの大きなビジョンとして「働き方と経営の未来を創る」ということを掲げているからです。現在、働き方改革や経営の在り方が問われる動きが盛んになり、世の中は大きな岐路を迎えていると感じています。つまり、人に向き合い、採用業界を盛り上げようとしているビズリーチにとって、ダイバーシティ推進に積極的に関わることは必然的となってきました。

 全ての企業活動は利益のために行われているはずです。利益とは、お客様の課題を解決し、その感謝のしるしとして頂く対価です。利益が大きくなればなるほど、社会に対するインパクトが大きくなり、社員一人ひとりがやりがいを持って仕事をすることが出来るようになると思うのです。であるならば、自社内も含めた、社会全体の選択肢と可能性を広げていくため、ダイバーシティを積極的に推進していくという舵を切っています。私たち自身が新しい働き方や経営にチャレンジしていくことで、世の中がより良い方向に向かう一歩を生み出していければと考えています。

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左から半澤、阿佐見、南社長、副田

南社長、酒井役員、ありがとうございました。

 

執筆者 副田真弘(Masahiro Soeda)

取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor

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