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Sep.

2022

interview
15 Feb. 2022

巻き込まれ力がつくりだす子どもの居場所 『まほうのだがしや チロル堂』吉田田タカシさんインタビュー

小川百合
クリエーティブ・プロデューサー
小川百合

昨年8月、生駒駅のすぐ近くに大人用と子ども用、ふたつの入り口があるお店ができました。まほうのだがしや チロル堂です。チロル堂にはどんな魔法があるのでしょうか。チロル堂を立ち上げたメンバーの一人、吉田田さん(以下、ダダさん)にお話しを伺いました。


大人用の子ども用のふたつの入り口があります

 

まほうのだがしやチロル堂の魔法の仕組み

 

チロル堂はただの駄菓子屋ではありません。チロルという店内通貨があり子どもたちは店に入ると100円玉をガチャに入れてチロルに交換します。通常100円は1チロルと交換ですが、運がよければ2チロル、3チロルが出てくることも!100円が300円の価値がある3チロルになるなんて、子どもたちにとって魔法のような喜びです。


ガチャ(右手前)で100円をチロルに交換して駄菓子を選びます

子どもたちは1チロルで100円分の駄菓子を買う以外に、1チロルでカレーを食べることもできます。チロル堂のカフェスペースで大人には500円で販売しているカレーです。なぜ、子どもたちは1チロルでこのカレーを食べることができるのでしょうか?

そこには、大人たちのチロ(寄附)で子どもたちのチロルを支える魔法の仕組みがありました。
※チロル堂では寄付のことを「チロ」といいます。寄附するの場合は「チロる」。


チロル堂の魔法の仕組み

そもそも、チロル堂はコロナ禍で運営ができなくなった子ども食堂をどうやって持続させるかという課題の中から生まれました。ダダさんが生駒に移住して10年が経ち、地域の仲間との繋がりも深まった時にこの相談があり、町づくりの第一弾として取り組んだそうです。チロル堂は子ども食堂の新しいカタチでした。

 

チロル堂をつくる「関わりしろ」と「巻き込まれ力」

 

ダダさんが子どもの頃、地域にはみんなで守っている神社があったそうです。その神社のようにチロル堂のことを町の人が必要だと感じてくれるように、「関わりしろ」を大切にしているとダダさん。チロル堂を自分たちだけのものにせず、町の人が自ら関われる余地がつくられています。


不定期で開催されるチロル堂酒場

夜に不定期で開催されるチロル堂酒場もそのひとつ。店主は町の人の持ち回りで担うことで、一度でいいからお店をしてみたいという大人の夢も叶えつつ、子どもたちの生活をみんなで応援できる酒場です。お客さんはビールを飲むたびに、その売り上げの一部がチロとなり1チロルが目の前のコップに入っていきます。飲んだ分だけ子どもたちの応援に繋がります。


メニューをオーダーすることがチロに繋がります


チロル堂酒場では子どもたちを応援したいという一体感がうまれます


自分への誕生日プレゼントをチロル堂で子どもたちが読む絵本にしてほしいと友人に呼びかける人も現れました。その呼びかけに対して、ECサイトの欲しいものリストを作るという人が現れ、たくさんの絵本がチロル堂に届きました。さらに、素敵な絵本が集まったので読み聞かせ会をやろうという人が現れ、実際にイベントが開催されたそうです。

町の人々が自ら繋がり、知らないうちにどんどんと拡張していくことをダダさんはこう捉えていました。
「みんなが面白がるのが上手くて、僕は火付け役。新しいアイデアに対して結果が出るかどうかは恐れずに巻き込まれていく力が大事で、巻き込まれ力があるから拡張していくんだと思います。そして、理想かもしれませんが子育てはもっと地域でするものと考えています。子どものいない人も年配の人も子育てが終わった人も、もっと子育てに関わってもいいのではと思うので、チロル堂がそういう場所になれば嬉しいです。」


チロル堂のカフェスペースには絵本や漫画、ボードゲームも

 

チロで寄附を軽やかに

 

チロル堂にはまだまだ課題もありました。助成金を使ってスタートしたこともあり、完全に大人たちの購買で運営ができているかというと、まだまだ足りていないそうです。毎月300円をチロってくれる人が1000人いたら、それだけで回っていくので今年募集する予定とのこと。それは企業からの支援で何十万をいただくより意味のあることだとダダさんは考えています。「1000人でチロル堂を支えられたら素敵です。それで初めて神社みたいにみんなで守っている場所になります。」

子どもたちを支えるためにチロル堂へチロする方法はたくさんあります。
チロル堂でのお弁当の購買や飲食の売り上げの一部がチロになります。お金をチロることも可能で10000円のチロは100チロルとなり、100人の子どもたちがカレーを食べられます。
「寄附を『チロ』と言い換えたことが良かった」とダダさん。一番大きな影響は「チロル堂でチロっちゃいました!」と、みんながSNSで使い始めたことでした。
「これから日本にも寄附の文化が進む中で、どうすればもっと気軽に寄附ができるかがテーマになります。チロル堂の仕組みが寄附のハードルを下げるひとつの事例になれば嬉しいです。」


ホームページのほしいものリストから駄菓子をチロることもできます

 

誰が来てもいい子どもたちの居場所を

 

チロル堂のカフェスペースを子どもたちは自由に使うことができます。宿題をやってもいいし、遊びに来てもいい。放課後の子どもたちの居場所となります。子どもたちにとって、まさに魔法のような空間です。
貧困や孤独などに苦しんでいる子どもたちを支えたいという思いがチロル堂にはありますが、駄菓子屋さんと看板を掲げることで悩みを気にすることなく誰でも来られる場所になることを目指したそうです。そこにはダダさんの子どもたちに対する強い思いがありました。
「子どもが自分らしく生きていくことの邪魔をしないというのが強くあります。だから、家計が厳しくごはんが食べられないことで人より自分が劣っているような気持ちにさせたくない。腹が減っている子どもがいたら、おごるのは大人として普通のこと。自分が食べられていない場合は別として、大人が当たり前のことをやっているだけだから、子どもたちは何も気にせずどんどん食べに来て欲しいです。」


チロル堂は「地域でこどもを育てる、見守る」、子どもにとって大切な居場所

 

取材を終えて

 

日本の貧困は目に見えにくい相対的貧困と言われていますが、「周りのみんなができていることが自分にはできない」という思いから子どもの自己肯定感が低くなってしまうことも問題とされています。子ども本人が原因ではないのに悲しい思いや情けない思いをさせてしまうのは、社会環境にも起因があるのではないでしょうか。「自分も子どもたちにとって生きづらい社会をつくってしまっている一員であることを謝りたい。だからこそ、チロル堂は子どもたちにとって安心できる居場所であってほしいです。」というインタビュー中のダダさんの言葉に心を打たれました。地域の人たちに見守られながら、自尊心を傷付けられることなく、ありのままで過ごせる居場所があるということは子どもの人生においてとても大切なことだと思います。今後のチロル堂の活動も応援していきたいです。

 

 

吉田田タカシ
まほうのだがしや チロル堂 オーナー
アトリエe.f.t  代表
DOBERMAN ボーカル
チロル堂では、日本中のどこでもチロル堂が始められる仕組みづくりの実現を目指しています。
https://lit.link/tyroldo
Instagram: @tyrol.do/

 

取材・文: 小川百合
Reporting and Statement: yuriogawa

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