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Apr.

2021

column
25 Feb. 2021
天パの何がダメなの、自分らしいヘアスタイルとは何か。

「天パの何がダメなの?自分らしいヘアスタイルとは何か」

清水鈴
コミュニケーションプランナー
清水鈴

私は子供の頃から自分の強いクセ毛が嫌いで、十数年にわたり縮毛矯正をかけて来ました。チリチリ、ボサボサ、まとまらない、鳥の巣みたいだと馬鹿にされる、嫌な思い出しかありません。

大人になってもクセ毛が仕事場にふさわしくない「アンプロフェッショナル」なヘアスタイルに見えているのではないかと悩んでいました。このボサボサの天パをさらしてしまうと、「やる気がない」とか、「だらしがない」と思われるのではないかと思い、私はお得意先に向かうときはいつも髪の毛をポニーテールにまとめていました。それだけこの「クセ」というものは厄介で、同じようにクセ毛で悩んでいる人は理解いただけるのではないかと思います。

筆者のクセ毛です。

ただ最近、私は北米在住のカーリーヘア(クリクリのクセ毛)の友人と話をする機会があり、その話によると、彼女はカーリーヘアのまま面接に行ったり、会社に行ったりしていたのです。私としては、その彼女の自信に羨ましさを感じました。私も今ではやっと縮毛矯正をやめて自分のくせ毛を活かし始めたものの、このクリクリの髪の毛を前面に出してまだ自信を持って社会に出られていません。

前置きが長くなりましたが、私はこの北米と日本の髪の毛の認識の違いに対してとても興味を持ちました。そこで、長年アメリカでヘアメイクアップ・アーテイストとしてご活躍されているYoshioさんとお話をする機会を今回いただきましたので、ヘアメイクを通して感じられた日本と海外の違い、そして今の日本でも育まれようとしている「自分らしさ」についてお話をお伺いしました。

ヘアメイクアップ・アーテイストYoshioさん

 

【ヘアスタイルを通して感じた日本とアメリカの違いはありますか?】

「大きな意味で日本を閉鎖的な島国、アメリカを多民族国家 としてとらえた時に、ヘアスタイルを通して見ると、日本人は同調圧力が根底にあり、アメリカでは独自性を大事にしていると感じています。

皆ではないですが、例えばアメリカではより「自分らしく」生きるために、縮毛矯正をする、縮毛矯正をやめてクセ毛を活かす、というチョイス(選択)をする人がいる中で、日本人は短い時間でスタイリングできるとか、見た目に個性的すぎない、職場での扱いやすさのために判断をする傾向が強いと思います。ある意味、美意識が固定化されているような気がしていて、こうでなければいけないという同調圧力があるような気がしますね。

Yoshioさんのヘアメイク作品:人種と髪の多様性がわかります。

ただ面白いのは、日本は 抽象的な表現が通用し、例えば「ゆるふわ」などの造語で定義が曖昧でも、なんとなくどういったヘアスタイルかが通じるというのと、美容院代が欧米に比べると平均的に安いので、最新のトレンドは日本での方が浸透しやすいです。逆にアメリカなどの多民族国家は一人一人の髪質が全く異なるからこそ、オーダーも違い大変でした。」

Yoshioさんは、初めて日本からアメリカに渡米された時には、あまりにも一人一人の髪質が違うためブローもできなかったと笑いながらお話ししてくださいましたが、アメリカでは同じ髪質を持っている人が少ないからこそ、多様なヘアスタイルが認められているのかもしれないとお話をお伺いして感じました。

 

【近年感じる日本人のヘアスタイルに対してのこだわり】

上記の話だけを聞いていると、日本人の髪の毛がまるで全て同じかのように思いますが、実際Yoshioさんのここ最近の経験では、日本でのヘアスタイルに対しての意識も変わって来ているとのことです。

Yoshioさんのヘアメイクの作品

「日本人のイメージする黒髮ストレートと現実は違って、感覚ですが、実際に日本人の5割ぐらいがくせ毛ではないでしょうか。しかも時代が変わって来ていて、昔ほど縮毛矯正をするという人も減ってきています。髪の毛をこれでもかと痛みつけていた縮毛矯正の時代から、ストレートトリートメントという新しいテクノロジーを使う時代になってきているのです。凄くストレートになるけどザラザラで絡む髪から自然に馴染むストレートで柔らかな手触りの髪へ。お客さまはより多くのストレスを感じる時代を感じ取って手触りの大切さを求める方が増えているように感じます。

また若い人の中でも、自分らしい髪の毛に対しての意識がゆっくりだけどシフトしています。若い人は冒険心があり、そんな中でもブリーチが今とても流行っていて、似合う、似合わないより自分がやりたいという思いが前面に出て来ていて、今はすごく色々なことを実験的にチャレンジしようとしている感覚があり、素晴らしいですね。ストレートトリートメントやブリーチ剤など髪の負担をかけすぎない進化した商材や薬剤と新しいニーズをスタイルにしていく技術が大切で楽しいことです。」

 

【ヘアスタイリストから見る、地毛証明書に関して】

話は変わりますが、ヘアスタイリストさんから見る、日本で話題となっている地毛証明書に関しても聞いてみました。Yoshioさんはこの地毛証明書が必要という校則は生徒たちのことを考えている とは思えない制度だと話します。

「地毛証明書は学校を管理する人の視点だけが取り入れられた制度ではないでしょうか。ツーブロックが禁止の学校も多いと聞きますが、実際ツーブロックがこれだけ流行っているのはなぜかというと、機能的であり、多くの人たちのヘアに関する悩みを解消してなおかつ多くの人たちに似合うからです。生徒本人たちのやりたいもの、興味があるものをうまく管理し、管理する人が知恵を出してトラブルを抑えることが必要だと思っています。校則が個性を潰そうとしている。お互いに良くない関係なのではないかと思いますしそんなのって長く続かないと思います。」

実際、外国籍の人や、違う人種の人が増えている日本で、違う髪質の人もいれば、違う髪色の人がいるのが当たり前で、こういった校則があることが人の自分らしさを縛っているのではないかとYoshioさんの話をお伺いしながら思いました。自分で選択できない生まれもった性質(例えば肌や髪に対して)の差異への許容がまだまだ浅いと筆者は考えました。ただこれは日本だけでの問題ではなく、校則での規定ではないかもしれないですが、実際にまだアメリカやイギリスでもこのような黒人独自のヘアスタイル(ブレイズ、コーンロウ、アフロなど)に関しても、まだ職場や教育現場での偏見や差別の問題が残っていると聞きます。

 

【最後にヘアスタイルと自分らしさ】

Yoshioさんとのオンラインインタビュー

Yoshioさんは私のクセ毛を見て、
「アメリカと日本という分け方で荒っぽく聞こえたら嫌だけど、アメリカではおそらく清水さん(筆者)のような自然なカールや髪を見て発する言葉は「It’s Beautiful(美しいね)」だと思いますが、日本ではもしかするとまだ「すごいクセ毛だね」と言われるのではないかと思います。」
このコメントは、クセ毛が悪いということではないかもしれないけど、「こうでなくてはならない」という考えがまだ根底にあるからで、もっと自由でいてもいいのではないかとYoshioさんは考えているとのことでした。

「ただ一つ言えることとしては、ヘアスタイリストが今の時代の人たちに「自分らしく」や「自分らしさ」を押し付けるより、そういう価値観に対してアドバイスをお客さんから求められたら、こういう風に生きたいならこんなのはどうか、という提案をするのが美容師のお仕事だと思っている」とお話ししてくださいました。

私が考えるに、ヘアスタイルというものは、Yoshioさんがおっしゃっていたように美容師さんに押し付けられて生まれた価値観ではないと思います。どちらかというと、社会、メディア、流行り、教育など、ソーシャルの要因が大きく、他人に見られる部分、判断されやすい部分だからこそ、とても他人の意見に影響されやすいものだと思っています。

筆者のクセ毛。

ただ、私は今回話を聞いて思ったこととしては、インタビュー中でYoshioさんがおっしゃっていたように、ヘアスタイルはよりパーソナルなものになっても良いのではないかと思いました。生まれ持った髪の質や色や長さなどは人それぞれ違い、顔も違い、そんな中で同じヘアスタイルを追い求めたり、強要するのは少し無理があると感じています。実際私も社会から無言のうちに感じていた「クセ毛を伸ばして、ストレートヘアにするプレッシャー」に対しておよそ25年で疲れきってしまい、自分のクセ毛をどう活かせるかを考えるようになりました。

今ではこうして天パを活かすことによって、見た目が変わったということもそうですが、心も一緒に解放されたような気がします。自分らしい髪の毛をしていても、最近身の回りの人から「チャーミングだね」とか「かわいい」と言われるようになり(ただのお世辞かもしれないですが)、自分としてはとても自信が持てるきっかけになりました。私は今後もこの生まれ持ったこの毛を恥ずかしいと思うのではなく、自信を持って自分の一部として表現したいと思います。



Yoshio氏のプロフィール

都内某サロンにて美容師、ヘアメイクアーティストとしての活動を始め、雑誌、広告、TV等の仕事を経験したのちNew Yorkに拠点を移す。New YorkではNYコレクション、雑誌、女優等セレブリティーのファッションを10年以上経験し、現在、都内に拠点を戻してサロンワークと共にフリーランスとして活動している。

取材・文: 清水鈴
Reporting and Statement: rinshimizu

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