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Sep.

2021

interview
24 Feb. 2021

先駆者ならではの葛藤をも力に。 SOCIAL WORKEEERZ新旧代表が語る、違いを超えるダンスの力と、未来構想。

伊藤亜実
cococolor編集員 / ライター
伊藤亜実

cococolorでも2回にわたりご紹介しているダイバーシティ・ダンスイベント「チョイワルナイト」。
参考:https://cococolor.jp/38, https://cococolor.jp/gekiwarunight

このイベントを主催する「ソーシャルワーカーズ」(以下、SWZ)は、障害者を取り巻くコミュニケーションや生き方を、もっと楽しく軽やかにしていこうと、取り組んできた先駆者だ。

SWZ創設者であり、16年にわたり、このムーブメントを育ててきたTOMOYAが、このほど代表を退き、親友であり、互いに“家族”と呼んで憚らないDAIKIに交代することを公表した。

なぜ、いま代表を交代するのか?新代表のDAIKIとは、どんな人なのか?TOMOYAの次なる活動は?気になることを、いろいろ聞いてみた。

 

《SWZの今までと近況》

成功体験と、衝撃的な問題意識の芽生え。

笹本智哉(TOMOYA)は、大人になったら福祉の世界に進もうと、幼少期から自然と思っていた。早くも高校3年時には、ヘルパー資格をとり、資格取得中からダンスを通じた福祉施設訪問活動をしている。多感な時期に、学校以外の時間をダンスと社会福祉施設へ費やした経験が、SWZの方向性を形成したことは想像に難くない。

障害のある人と関わり始めたころは、緊張して自分を出せずに苦労したが、ダンスが、心の壁を取り払ってくれた。自分がダンスを心から楽しんでいるとき、障害のある利用者にも笑顔になってもらえる。そう気づいたことが、大きな原体験になっている。

 

一方で、衝撃的な体験もあった。

利用者やヘルパーたちと地域の音楽イベントへ行った時、流れてきたJPOPの曲に乗って体を自然と動かしていた。利用者も、それを見て乗ってきた。いつもの楽しいコミュニケーションが始まった、と、思ったところで、先輩ヘルパーが声を荒げた。

「静かに!恥ずかしいから座らせてください!」

カラダとココロが楽しいと感じることを自然とした。ただそれだけで、身内ですら「恥ずかしい」と感じてしまう。「これって、一体何なんだろう?」と、TOMOYAの心に疑問が生まれた。

 

時がたち、ケアワーカーとして就職した先でも、利用者の窮屈な生活実態を目の当たりにする。利用者たちは、迷惑をかけないようにと常に恐縮して生きているように見えた。

高校生の時の衝撃の体験も思い出し、強い課題意識に突き動かされたTOMOYAは、激務の合間を縫って、全国の施設を見て回るようになった。そして、どの施設でも大きくは変わらず存在する、障害者の窮屈な生活、という課題を、ダンスの力で解決していく活動を始めていった。


(SWZをはじめる前のTOMOYA「STREET介護FIGHTER」というグラフィックと共に。)

 

これまでのSWZの活動と、その飛躍。

構想から5年。2011年に、「DANCE FOR SOCIAL INCLUSION。SWZはダンスで福祉をデザインします。」と掲げるSWZの活動が始まった。

ダンスイベント「チョイワルナイト」を筆頭としたSWZの活動は、時代を先取りしていた。今でこそ、楽しい福祉イベントは増えているが、当時は障害者が心から楽しむ姿を見る場面などほとんどなかったのではないか。SWZとTOMOYAは、パイオニアと注目され、講演を求められる機会も増えてきている。

特に2016年の東京2020オリンピック、パラリンピックの招致をきっかけに、日本中で、様々なダイバーシティ&インクルージョンイベントの企画が立ち上がる。

SWZは、すでに10年の経験を持つ先行例だ。

イベントの企画の視点、具体的なプログラム、資金繰りや、マーケティング、情報発信、ブランディングの方法など、あらゆる活動の知見について、知りたいという団体や個人からの連絡が増え、自然と、D&Iイベントの情報のハブになっていった。

今では、先述のチョイワルナイトに加えて、行政や教育機関に対して、ダンスを使ったコミュニケーション講座や、障害者と一緒に行うダンス作品作りなど、幅広い発信・啓発活動も行っている。オリジナルのイベントであるチョイワルナイトは、川崎市長自ら参加し、ダイバーシティを推進する企業からの協賛を得られる、規模も懐も「でっかいイベント」まで成長した。毎年、このイベントが開かれることを楽しみにしてくれる人たちがいる。

 

《先駆者の苦悩と、“家族”から差し伸べられた手》

■代表としての無償の愛とプレッシャー

SWZの活動があまりに勢力的なのでうっかり忘れがちだが、TOMOYAはじめメンバーのほとんどが、フルタイムでの本業を持ちながら、SWZにかかわっている。

TOMOYAは現在、社会福祉主事職(相談支援専門員)として療育センターで勤務をしているし、それだけでも、十分すぎるくらいにハードな仕事だ。他メンバーもさることながら、代表として、高いモチベーションとやりがいを持ち、時間もココロも、持てる余裕はすべてSWZにかけてきた。

 

そんなTOMOYAが代表を退くにあたって、さぞかし周囲の反対にあったのではないか。

どんな労いの言葉をかけられたのだろうか。ところが、TOMOYAからは、先駆者ならではの葛藤や孤独を感じさせる、意外な答えが返ってきた。

 

「驚きはされました。ただ、SWZがどうなっちゃうんだろうとかではなくて、

僕にそういう選択肢があるんだ、ということに驚かれたみたいです。

今までも、『なんでそんなに長くできるの?』とか『大変でしょ?』とか『辞めたくないの?』とか、聞かれたことってないんですよね。

たぶん、これが僕自身であり、こういう生き方なのだと思われてたみたいで。

かなり労力を使ってSWZを運営してきましたが、

世間にとっては、SWZは頑張って維持しなくても無くならない存在。

という認識だったんだと思います。

そこには努力とは裏腹のギャップがありました。」

 

「ありがたいことに、こういうムーブメントの火付け役だと思ってくれてる人もいて。

応援していることが沢山いらっしゃるという事がわかっている一方で

徐々に、SWZが自分自身、だという周囲の想いを背負って、ずっとやんなきゃいけない。というプレッシャーは正直苦しかった。

もちろん自分の思いを詰め込んで設立したし、楽しい事はたくさん経験させていただきましたが、

見返りを求めて始めたわけではないけれど、僕もメンバーも労われる事は非常に少なく。(苦笑)」

 

「無償の愛というのか・・・自分のミッションはどんどん重くなる一方。また年齢も職業も、人生経験もコミット度も全然違うメンバーに対して多岐に渡るミッションを共有し、継続するのが一苦労でした。時には厳しい事を言わなければならなかったり。グループが大きくなると、

伝えたい本質が湾曲して伝わり、うまくいかない時代を過ごす日々もありました。

自分の人生よりもSWZの未来や活動に来る人の為に。という思考が強くなりすぎて、バランスを崩しそうになっていました。」

 

そんなプレッシャーに耐えながら続けてきた16年間。

そして、2020年2021年のコロナ禍により、11 回目を迎えるチョイワルナイトが、延期となった。

不要不急のイベントを行うことがままならない時期に、代表として他者を優先してきた時間から解放され、自分に向きあう時間が増えたTOMOYAは次のステージに進むことを決める。

 

「自分の判断でSWZを動かしていく立場よりも、一メンバーになろうと思ったんです。」

 

■コロナ禍で深まった“家族の絆”と新しい構想

代表の交代を決めることができたのは、DAIKIの存在が大きい。彼は、2017年のチョイワルナイトに、お客さんとして参加したことからメンバー入りしたという、SWZの“新入生”だ。

しかし、TOMOYAとは、今では互いに「家族」と言ってはばからないほどの仲である。

「DAIKIとは、夢を語ることが多いんです。チームのこと、未来の話。

特に一緒にダンスをする中でいろいろな話をするようになって、『DAIKIの夢の方が面白い』と思う瞬間があったんです。そのときに、自分の思ったこと、団体の未来のことを考えたら、代表はもう、僕じゃなくていいと思えた。」

「DAIKIは、すごい。言葉が、すごく伝わるし、キャラクターも良い。

人を惹きつけるムードメーカー。彼がいるとチームが明るくなるんです。僕とも全然違うキャラクターで。(笑)」


(新代表のDAIKI(左)と、旧代表TOMOYA(右))

 

TOMOYAからDAIKIへ。SWZのリーダー交代に関して、当事者たちもまったくの迷いが感じられないことが、インタビューしている中で不思議だった。

 しかし、その理由は、彼らのストーリーを聞いていく中で、自然と腹落ちしていくことになった。

 

《新代表DAIKIの描く未来》

■絶望の中で出会ったチョイワルナイト

今年27歳になるDAIKIは、軟骨無形成症、いわゆる低身長を特徴とする指定難病を持つ。幼少期から、人から、何かをできないと決められることが嫌い。大学では、先生方の協力も得ながら、軟骨無形成症として、日本で初めて保健体育の教員免許を取った。

大学卒業直前の2017年3月。翌月からは宮城県で体育教員になる予定で、引っ越しの手はずまで整えていた―はずが、現地の都合が変わり、突如にして就職先が白紙になってしまった。

東京にひとり残ることになったDAIKIは、教員になることを目指して頑張ってきたから、しばらく放心状態。やむなく、社会人になったらやめるつもりだったダンスを仕事にして、なんとか食いつないでいた。

そんなある日、急遽仕事の予定がキャンセルになり、何でもいいから近所で踊れるところないかな、と調べている中で見つけたのが、チョイワルナイトだった。会場の入り口で、TOMOYAとハイタッチしたことをとても覚えているし、DJタイムも、ショーケースも、すべての時間を心から楽しんだ。

 

「なんてすばらしいイベントなんだろう、と思って。SWZの人たちと近づきたいと思って、即効で連絡したんですよね。そこからが始まりです」


(2017年のチョイワルナイトで踊るDAIKI)

このときのDAIKIの姿を、SWZのメンバーやTOMOYAが鮮明におぼえている。

 

「ダンスで社会を変えたい、っていう思いをDAIKIが持っていて、同じこと考えているじゃん!と思ったんですよね」

 

■ダンスで気づいた「違い」を超えていくコツ

DAIKIも、TOMOYAも、それぞれにダンスへの想いが強い。

 

「スポーツとか競技は、身長が高い方、手足が長い方が有利なものが多い。あと、武道は、カラダへの負担が大きいから僕はできない。そういうルール自体に疑問があって。

でも、ダンスなら、個性が大事だから、違いを活かせるんですよ。

疑問はあるけれど、今あるルールを壊すだけじゃなくて、向き合い方を変えられるんじゃないか。と思ったんですよね。」

 

そう語るDAIKIも、かつては反骨精神のかたまりで、常に壁を壊したいと思っていた時期もあったそうだ。だが、最近では、「壁の色を塗り替えたい」という気持ちに変わってきた。その大きな心境の変化はSWZの活動の中で育まれている。

 

「TOMOYAと組んだアガイガウガというチームで、初めてダンスチームをつくったんです。

これまでは、一人で戦ってきてしまったし、感情まかせに、怒りをぶつけるようなスタイルのダンスをやってきた。でも、憎しみをぶつけてもしょうがないんだな、と。

チームを組むと、他のメンバーの上手さに打ちのめされるんですよ(笑)

最初はくじけそうになったんですけど、できないことは、『これは難しそうだから、こうしたい』って伝えられた。

これってすごいことで。

これまでは、どうせ言っても分かってもらえないだろうと諦めちゃってたんですけど。

助けてほしいと言えるようになったんですよね。」

 


(公私にわたり、「ずっと一緒にいる」という二人)

 

DAIKIの変化を、TOMOYAも感じている。

「人を頼る行為ってパワーがいることなんですよね。DAIKIは、自分で成し遂げてきたからなおさらで、意外と簡単なことが言えなかったりする。

しかし彼の良い所は『できない』で終わりじゃなくて、こういうやり方だったらできる、という次の1歩を生み出せる。そのやりとりができるチームだから、他にはつくれないものが作れるし、

そういうクリエーションを一緒にできることで、日ごろのコミュニケーションも変わっていきました。」

 

「DAIKIと創る時間が、柔らかなゆらぎ、余白を生んでくれて。それが、SWZという団体にとっても、どんどん大きなものになっていったんですよね」

 

2人のダンス愛が、クリエーションへの想いを生み、その努力が、違いを超えた信頼関係を育んだ。今では、二人の8歳の年の差も、身体的な特徴の違いも関係なく、いちばん信頼している、「家族」や「相棒」のような存在となっている。

 

■新しいSWZはどこを目指すのか

これまでも、飛躍的な成長を遂げてきたSWZ。DAIKIが代表になることで、どのような新しい風を起こしていくのか。

 

「まだまだ、障害のある人が組織の代表になることは少ないですよね。だから、TOMOYAが16年積み重ねてきたSWZの代表に、僕がなるということは、とても意義があることだし、責任も重大だと自覚しています。」

 

「僕は、もともと全体の設計をして、その中で人に踊ってもらったり、プレーヤーに演出を付けるのが好きなんです。今回も、いろいろな話をする中で、純粋に踊ってるTOMOYAが見ているのが好きだ、と思った。

SWZには、リーダーシップを発揮している仲間たちも他にもたくさんいて、彼ら/彼女らにも、もっとプレーヤーになってほしいと思ったんです。その中で、全体を見る役割になることが多い僕が、代表になることは、すごいことではなくて、とても自然なことだと考えてます。」

 

「SWZは、人をつなげる力がある。その部分を続けて、進化させせていきたいんです。

世界中でこういう活動をしている人たちとつながりたいし、そういう未来のために、何から始めるか。今、まさに作戦を立てているところです!」

 

「東京2020が決まってからいろいろな取り組みが始まったように、そのあとにも、障害のある人も、プロを目指せる環境を整えていきたいですね。」

 

 

《TOMOYAの新しい挑戦》

徹底的な他者への貢献を貫き、無償の時間と愛を提供し続けてきたTOMOYAは、新しい息吹を感じる時代に、大きな決断をした。今後は、徹底的に自分と向き合い、「ダンス」をあらゆる場面で中心に置いた「アートライフワーク」を行っていく予定だ。

「ステージの上、ストリート、限らず日常生活のあらゆる場所で、歯磨き、食事、排せつと同じように日常の行動として、ダンスを表現していきます。

徹底的に自分軸で生きることを通して、また新たな表現を伝えていきたいんです」

 

新生SWZ。そして、新しいTOMOYAの活動。先駆者たちが、葛藤を乗り越えた先に生む新しいクリエーションに、ますます注目していきたい。

 

 


SOCIAL WORKEEERZオフィシャルサイト:http://socialworkeeerz.com/

 

TOMOYA DanceLife -afterSWZ-

Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCYGx0jLmDdwadmAoJEHyl0g

Facebook:https://www.facebook.com/tomoyadancebaka

取材・文: 伊藤亜実
Reporting and Statement: atimo

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