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Dec.

2019

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22 Jul. 2019

ダイバーシティ対応した魚料理を味わえる創業53年の「浅草 魚料理遠州屋」

阿佐見綾香
戦略プランナー
阿佐見綾香

今回はcococolor学生ライターの若林陸と松本玲夢、松藤沙季の3人が、日本の飲食店のダイバーシティ対応について知るために、浅草の「魚料理遠州屋」に取材をします!

 〇ダイバーシティ対応にせまられる飲食店業界
最近どこの飲食店に行っても外国人観光客をよく目にします。私たち学生がよく利用するハンバーガーショップでも、日本人よりも外国人観光客の方が多いのではないかと感じる時があります。昔といまを比較しても外国人観光客の増加は明らかで、2018年には過去最高の3,100万人近い外国人観光客が日本に訪れています。これは2013年の1,000万人と比べて3倍近く増えています。(参照 日本政府観光局 https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_visitor_arrivals.pdf

2020年には東京五輪が開催され、外国人観光客はますます増加することが予測されます。東京都では多言語メニュー作成ツールEAT TOKYO サービスの提供を開始するなど、国や自治体レベルでも対策に乗り出し始めています。

これらの動向は、飲食店にとっては大きなビジネスチャンスのように見えます。

ですが、実際はほとんどのお店でダイバーシティ対応がまだ進んでおらず、外国人観光客へのおもてなしが不十分です。例えば私たちが東京周辺の飲食店を見回しても、外国語でメニューが作成されているようなお店は少ないと実感します。

私たちは、日本を訪れた誰もが食事を楽しめるようになるダイバーシティ対応の浸透が、これからの飲食店の課題なのではないかと思いました。そこで、飲食店がダイバーシティ対応を推し進めるためのヒントを知るために、外国人の多く訪れる浅草の「魚料理遠州屋」に取材をすることにしました。


〇創業53年の「浅草 魚料理遠州屋」
 取材に協力してくれたのは「浅草 魚料理遠州屋」二代目主人で目利き、仕入れの達人の、安喰伸明(あぐい のぶあき)さんです。
「浅草 魚料理遠州屋」二代目主人、安喰伸明(あぐい のぶあき)さん

安喰さんは、魚の専門書である書籍「魚の事典」で監修を務めるなど、魚料理専門店の主人の中でも魚について知り尽くした方です。

浅草に店を構え、今年で創業53年を迎える「浅草 魚料理遠州屋」。めまぐるしく変わる時代の中でもいつの時代も変わらない、日本のおもてなしを伝え続けている老舗の大衆割烹料理屋です。

人気観光スポットである浅草には日々多くの外国人観光客が訪れます。遠州屋にも多くの外国人観光客が立ち寄ります。そんな遠州屋は、新鮮な魚介類をしゃぶしゃぶにする海鮮しゃぶや、玄界灘や高知、和歌山などでしか水揚げされないことで知られている貴重な「本クエ」が東京で食べられるなど、珍しいメニューが用意されているお店としても知られています。

天然本クエの御造り

 

〇「魚料理遠州屋」の発見!外国人は国別に食べ方や好みがある?
魚の食べ方は日本では和食の印象が強く、多くの人が「しょうゆで刺身」「塩や味噌で焼き魚」といった食べ方を思い浮かべます。

それが、遠州屋では外国人観光客の増加にあわせて変化し、新しいメニューを提供するようになったと安喰さんは言います。

「ここ数年で訪日観光客が多くなって、その国に合ったメニューや魚を提供するようになりました。」

魚の食べ方や調理の方法には国ごとの食文化が大きく影響するため、国ごとに違いがあるそう。遠州屋ではそれぞれの国の食文化にあわせた食べやすい料理を提供するために、訪れた外国人の方からメニューや味付けを教えてもらうようにしています。時には、想定外の食べ方が飛び出すこともあるとか。

「例えばどんな発見がありましたか?」という質問に、安喰さんから外国人の方の独特な食べ方を当時の驚きを交えつつお答えいただきました。

「例えば中国の方だと、アワビのお刺身でも、近くに鍋が置いてあるとしゃぶしゃぶにして食べてしまうんです。せっかくの新鮮なお刺身をしゃぶしゃぶにするなんて考えたこともなかったので、最初は驚きました。」

「他にもベトナムのお客さんだと、お刺身に辛味調味料をつけて食べている方もいました。」

このような日本での常識からは思いつかない食べ方は、私たちが思っている以上にたくさんあるのかもしれません。

 

〇新メニューの開発に取り組む
料理人の方々は新たな発見に驚くだけではなく、実際に提供できる新メニューの開発も行われています。例えば、エビしゃぶ、イセエビのしゃぶしゃぶなどです。


生のイセエビをしゃぶしゃぶに!


珍しいイセエビのしゃぶしゃぶの写真

 

なぜ、このメニューを採用することにしたのかについても教えていただきました。

「海外のお客様からおすすめされたのがきっかけですが、実際に作って食べてみたら美味しいんです。今では、日本のお客様にも愛されるメニューになりました。」

外国人観光客の食文化に合わせた料理というだけでなはなく、日本人からも人気のメニューが新たに生まれうるという実例です。

 

〇メニュー以外の外国人観光客向けの取り組み
「魚料理遠州屋」では、メニュー以外にもたくさんの取り組みをしており、とにかく出来ることは何でも取り組んでいるそう。

代表的な情報収集の取り組み一覧
●メニューの多言語化
●観光会社のバスガイドさんからの情報収集
●ネットで観光客の食事動向をチェック
●東京都が作成している観光客受け入れマニュアルのチェック
など…

こうした取り組みを続けることで従業員の方にも変化があり、全員が一丸となって海外から来たお客様をおもてなししようという姿勢を見せるようになったそう。

例えば「メニューの多言語化」も従業員からの発案でつくられました。多言語メニューを従業員中心に作成し、笑顔で簡単な英単語などでコミュニケーションを取るようになったそうです。

多言語対応したランチメニューの写真

多言語対応したディナーメニューの写真


笑顔の絶えない「魚料理遠州屋」の従業員

〇独自性を忘れず柔軟性も忘れない
これまで、海外の食文化や食べ方に合わせたメニューについて紹介しました。しかし老舗魚料理屋としては、海外のお客様に合わせて変化ばかり続けているとお店の歴史や伝統、本来の持ち味を守るのが難しくなるのではないかという疑問がわいてきました。

私たちの質問に安喰さんは、他国の食文化を理解しつつ、日本の食べ方を強制するのではなく「提案する」形でおすすめすることで、どちらの良さも共有できるようにするのがベストだと教えてくれました。

「確かに相手に合わせているだけでは独自性が薄くなってしまいます。お店の歴史や伝統を守ることは大切ですので、海外の食べ方に合わせるのではなく、提案という形で日本の食べ方も知ってもらうことがポイントだと思っています。」

海外から来たお客さんの自国で慣れ親しんだ食事の方法を尊重する一方で、お店側から提案する日本の食べ方を知ることでの驚きや喜びも、感じて帰ってもらう。相手の文化を柔軟に取り入れたり、こちらの文化を提案したりしながら、独自の日本食を提供していく絶妙なバランスが、遠州屋の存在感を際立たせているのでしょう。

「まずは観光客に日本の文化を知ってもらうことが大切だと思います。食は文化の中でも一番大事なものだと思うんです。服や物はいろんな国に同じようなものがあるかもしれませんが、食文化はその国でしか体験できないものなのです。日本食を知ってもらい、その後日本を好きになってもらう。そんな未来を願っています。」


 

〇最後に…
食をきっかけに日本の文化を知ってもらい、日本を好きになってもらいたい。そんな主人・安喰さんの想いに私たちはとても共感しました。「訪れた誰もが食事を楽しめる飲食店のダイバーシティの作り方」がこれからますます重要になる中で、遠州屋のように日本の食文化の発信基地となるような飲食店が増えていけばいいなと思いました。


協力・「遠州屋」店主 安喰伸明さん(左から2番目)
文・cococolor学生ライター 若林陸(右から2番目)/松本玲夢(右)/松藤沙季
編集・cococolor編集部 阿佐見綾香(左)

取材・文: 阿佐見綾香
Reporting and Statement: ayacandy-asamiayaka

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