I HAVE PRIDE -東京レインボープライド2019- レポート③
- メディアプランナー
- 八木まどか
レポート第1弾、第2弾に引き続き、TRP2019に出展していた企業ブースの模様をレポートします。 今年も初出展や初めての試みをした企業がいくつも見られ、そのブースは常連企業とはまた違ったアプローチがあり、新鮮でした。
モビリティの自由と多様性をかけあわせて
全日本空輸株式会社は、「ANAでもっとつながる」をテーマに、今回初めてブースを出展しました。社内では、人事や営業、客室・空港担当、宣伝などいろいろな部署を巻き込んで組織横断的なLGBTプロジェクトチームで、これまで2年間、どういうことをしたらLGBTのお客様にも喜んでいただけるかを検討してきました。TRPではパレードに過去2年間参加してきましたが、様々なニーズを聞く中で、実際にお客様と触れ合えることの重要性を感じ、今年はブース出展。出展された感想は、「新しい取り組みですが朝から多くの方がANAブースにお立ち寄りくださり嬉しいです」と、松井規代さん(CEマネジメント室CE戦略部ブランド推進チーム マネージャー)は話しました。
ブースの目玉の一つは【ANA AVATAR】での瞬間移動体験。遠隔地にあるアバター(分身ロボット)を操作し、飛行機に乗らなくても旅行の疑似体験ができるANA AVATER。近い将来にはサービス化するそうです。また、これまでANAが実施してきた取り組みとして、同性パートナーもファミリーマイルを共有できる施策や、国内空港の自社ラウンジ内多目的トイレ表記の改善などをパネルで紹介していました。
今後も、これまで実施してきたことを地道に続けていくことが大事だと考えているそうです。新しく入社する社員にもしっかり学んでもらい、いずれは「性の多様性が自然に受け入れられる社会にANAも貢献できるよう、教育を行き届けさせたい」と松井さんは語りました。
仲間づくりが得意!
今年で2回目の出展となる株式会社ビズリーチは、来場者が自分の色を目いっぱい表現できるようにと「COLORS by BIZREACH」をテーマとし大型ブースを展開。
昨年の初出展からみんなで作り上げる参加型を大切にしており、ブースの壁は多くの来場者のメッセージステッカーで彩られていました。一方ブースの中は、ビズリーチの想いに共感した6つの企業が、それぞれDiversity & Inclusionに関してどのような取り組みをしているか紹介。また、プロのアーティストによるフェイスペイントも実施しており、常に長蛇の列ができていました。
自社のブースで他社の取り組みを紹介した意図は、人材やM&A等のプラットフォームを提供している会社だからこそ、想いに共感した他の企業とのつなぎ役になりたいと考えたから。企画に際し各社を回られたところ、「多くの企業がダイバーシティへの同じ興味関心を持ち、共通テーマとして抱えていると感じました」と酒井陽夏さん(ビジネスパートナー室 リーダー)は語りました。
昨年の初出展を経て、今年のブース運営のボランティアを募ったところ、60人ほどの方がすぐに手を挙げてくれたことから、社内でのLGBTリテラシーの高まりを実感していると酒井さんは言います。それは同社の学ぶ意欲の高さや、変化に対して前向きに考える風土も生かされているようです。また、同社のトップである南壮一郎さんも社内の自発的な動きに心を動かされたとSNSで投稿。トップが現場の意見を尊重し、トップも現場も変わっていく姿が印象的でした。
自分らしくいられる居場所を、一緒に探そう
初出展ながら大型ブースを展開したAirbnbJapan株式会社(※昨年はパレードのみ参加)。同社は旅の新しい形を世界191ヶ国以上、5億人以上に提供しており、その社のビジョンは「Belong Anywhere」。「誰でもどこでも居場所が見つかる世界へ」がミッションです。今回のブースはそれを表現する内容でした。
ブースは主に2つの要素で展開。【LGBTQコミュニティへのサポート表明】として、撮影コーナーで同社のロゴをレインボーにしたアイテムを持って写真撮影ができ、「#エアビー」または「#BelongAnywhere」をつけてSNSに投稿すると、オリジナルクッキーなどがもらえました。また、水で流せるタトゥーの体験もでき、実際にTRP会場内で多くの人の顔や手などに同社のカラフルなロゴを見つけました。
【Airbnbコミュニティの多様性紹介】のパネルコーナーでは、LGBTQ当事者であることを公表してホスト(家を貸す側の人)をしている人や、アライを表明しながらホストをしている人へのインタビューなどが展示されていました。ホストを始めた理由や、ゲストとの交流エピソードなどを交えた、かなり読み応えのある内容になっており、立ち止まってじっくり読んでいく人が何人もいました。
取材時にちょうど、インタビューに応じたホストであるジョンさんが来場。ジョンさんが自分のセクシュアリティを公表してホストになった理由は「家とは自分らしくいる場所だから」とのこと。また、様々なゲストとの交流を通して自分の考えもより広がっていくと語りました。
「誰でもどこでも居場所が見つかる世界を作る」ために、社内外で様々な取り組みをしてきた同社。どんなセクシュアリティをもつ人も個性として受け入れ、LGBTQのクラブやサポートグループなどでの交流も盛んとのこと。社内からは「ありのままの自分を受け入れてくれ、(社会での不平等に対して)一緒に戦ってくれる会社」だとよく言われるそうです。
また、利用するホストとゲストは、すべての人を平等に仲間として受け入れる同意が前提です。だからAirbnbコミュニティは誰もが自分らしくいられる場所となっているのです。
そのため、今まで世界各地のプライドパレードには、参加するだけでなく、スポンサーとしてボランティアの派遣などもしてきました。
今回の出展では「『Airbnbが出展していて嬉しい』というお声を多くいただき、またLGBTQの方々だけでなく様々な方が来場していたので、スタッフとしても知見を広げるよい機会になりました」と藤谷真弓さん(PRマネージャー)は語りました。
よりハッピーな仕事をめざし事業転換!
最後にご紹介するのは、初出展にして大型ブースを展開したBOTCHAN(株式会社アンド・コスメ)。実は私は初めて知ったブランドでしたが、「企業コンセプトもブースも興味深い」と何人にも勧められ、行ってみました。
同社は【「男らしく」を脱け出そう。】というコンセプトのメンズコスメブランドですが、ジェンダーに捉われず、誰でも自分らしく使えるような商品づくりをしています。今は化粧水や洗顔料、練り香水、毛穴のカバークリームなどを展開していますが、テクスチャーだけでなくパッケージにもこだわり、ジェンダーに関係なく、誰でも手に取りやすいカラフルなものになっています。また家族やパートナーで同じものを使ってもらうことも想定しています。
今回のブースでは商品の体験会やコンセプト冊子とともに商品もサンプリングをしていました。
「BOTCHAN」を販売する株式会社アンド・コスメは、実は墓石メーカーが立ち上げたブランドです。墓石市場は人口構造的に今後縮小していく業界であることと、墓石から連想される暗いイメージから転換し、ハッピーな仕事をしたいという長年の思いがあり、3代目の加登隆太氏が化粧品の開発に踏み切りました。「実際に来場者に商品を使ってもらったら、皆さんが化粧品の悩みを語ってくれ、自社商品がそれに合っていることも再確認できました」と現場の中心スタッフの三浦まゆみさんは語りました。
BOTCHANはオンラインストアでの販売をメインにしつつ、百貨店などのポップアップショップでの販売もしています。TRPは、商品とその開発の思いを知ってもらうよい機会と考え出展を決めました。
ちなみに、ブランド名「BOTCHAN」は夏目漱石の小説『坊ちゃん』がもとになっています。「坊ちゃんは時代の中でどう自分を生かすか模索した人物でしたが、今の時代は、いろんなものをカスタマイズして自分らしさを表現できます。坊ちゃんが今の時代をどう生きるかということに思いを巡らせ、このブランド名にしました」とディレクションを担当した福岡英一さんは語りました。急速に注目されている同社の取り組みは今後も楽しみです。
アプローチのしかたも多様化し、今後の可能性が広がる
出展回数に関わらず、ユニークなブースが出展されるTRPは、各社のダイバーシティ&インクルージョンの最新情報を発見する場になると感じました。つまり、TRPは様々な出会いの場です。来場者どうしの交流だけでなく、多くの企業・団体も情報交換ができ、今後新たな取り組みに繋がっていくかもしれません。
また、2020年とその先に向け、東京だけでなく、他の地域でもレインボーアクションが一歩ずつ進んでいます。ぜひ今後も注目してください!
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