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Jul.

2020

interview
3 Mar. 2020

がんノート代表岸田徹さんに聞く、がんの情報発信における多様性の大切さ

石田温香
デジタルプランナー
石田温香

2人に1人はがんになる時代。

自分自身にがん経験がなくても、家族や知り合いにがん経験者がいらっしゃる方は多いと思います。『「あなた」か「わたし」のがんの話をしよう』をコンセプトに、がん経験者の方のインタビューをインターネットで掲載・配信している団体、“がんノート”の代表理事 岸田徹さんにお話を伺いました。

岸田さんご自身も25歳で胎児性がんが発覚。抗がん剤治療や手術を受け、その時にがんに罹患したことがある方にしかわからないような情報を得る機会が少なかったと感じ、その自身の経験からがんノートの活動を始められました。

 

 

「あなた」か「わたし」のがんの話をしよう

「がんノートを始めた頃は1人の人に情報がしっかり届いて、その人のプラスになったり、明るい気持ちになったりしてもらい、笑顔になってほしいという思いが強かった」

しかし、がんノートは、情報を発信するメディア。

有名人に出てもらって色々な人に見てもらったほうがいいのではないか?メディアの規模をもっと大きくするべきなのか?と考えを巡らせ、がんノートの方針・役割については悩むこともあったと言います。

「色々悩んだ結果、今は、メディアの規模を大きくすることを追うのではなく、がんノートの役割として、患者さんの経験談のニュアンスや温度感を変えない状態で多様なお話を発信することが重要だと考えています。そして当初目標だった100回目を超えた後に、がんノートのコンセプトを『「あなた」か「わたし」のがんの話をしよう』にしました」

がんを取り巻く環境の変化も良く知っている岸田さんだからこそ、今の私達にとってがんに関する課題は、生きていく上で切り離せないものと捉え、患者さんだけの課題ではなく、周囲の人々や社会を意識したコンセプトに変えたそうです。

 

がんノートで可視化する、がんの多様性

同じ「がん」と呼ばれる病気でも、がん種の違いに加えて、治療内容やその症状や副作用については、なかなか同じ人は存在しません。また、医療的な課題以外にも、その人の職業や居住地、生活スタイルによって抱えている課題は異なります。

「がんノートで取材を行い、その内容が可視化されることで、がん患者さんが自分では認識していなかった課題に気付くこともありました。自分自身もそういうことがありました。隠し事ではないけれど自分からはあえて話すことでもなかったことを聞かれて答えるという経験です。これは、僕にとっても大きな発見でした。がん患者さんにとって、感覚的な情報は得にくい一方で、最も知りたい情報のひとつであることが多いため、隠してはいないけど自分からは言わないことも、がんノートでは引き出せるように工夫をしています。

また、都市部と地方の間に存在する情報格差をなくしていきたいです」

 

いつも笑顔でいることを大切にしている理由

インタビュー中もユーモアを交えてお話してくださった岸田さん。ご自身の経験が不特定多数の人に伝わる立場であるからこそ、いつも笑顔でいることを心がけているそうです。がんノートを始めたときから笑いをコンセプトの一つとされていました。さらに、がんノートの活動でのある出会いで、岸田さんは笑顔の大切さを再確認することになります。

「がんの治療をされている22歳の女性にインタビューを行いました。彼女は放送時に余命宣告も受けていて、良い状況と言える状態ではありませんでした。しかし、その状況下でも彼女はとても明るい人でした。彼女はインタビューの中で『幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せです』とお話しされました。その一言を聞いてから、僕は、がんというセンシティブで重くなりがちな話題だからこそ、笑顔を大切に、ユーモアを持って向き合うことをよりいっそう心掛けています」

がんノートでインタビューを受けている患者さんの中には、明るくポジティブな方も多くいらっしゃいます。病気への向き合い方は、人それぞれですが、がんという病気だからこそ、笑顔の力で少しでも前向きになるのではないかと感じました。

笑顔の岸田さん

たくさんの活動、そして夢に向かって

岸田さんは、がんノートの活動と並行して、国立がん研究センターで広報のお仕事や、がんに関連する学会への出席、小中高学生へのがん教育、厚生労働省でのがん関連の委員のお仕事など様々な場所でご活躍されています。

そして、今年から関連する学会の運営への参加や東京にある大学医学部の客員講師としてより活躍の場を広げられます。

 

海外にも足を延ばし、もっと多くのがん情報を

活動の幅が広がる中でも、岸田さんは夢に向かって歩んでいます。

「子供の時から『海外を旅しながら仕事をしたい』と思っています。小さい時に地球儀を回してブータンの部分で止める遊びを1人でひたすらしたり(笑)大学4年生の時には、海外で働く日本人にインタビューをしながら世界一周をしました」

子供の頃から世界に興味津々だった岸田さん。がんを経験してから、世界との繋がりや語学の重要性をより感じる出来事も。

「がんに関する情報を探していて、日本語で検索しても見つからない情報が、海外では既に論文になっているということがありました。日本のがん患者に対して、十分な情報が伝わらない原因の一つになっているため、海外の情報をお伝えできたらと考えています」

岸田さんの2020は世界進出の年になりそうです。

「今年はアメリカやヨーロッパのがん関連の学会やロンドンで開催されるAYA世代のがん学会に参加する予定です。また、アメリカのAYA世代のがんの支援団体である”Stupid Cancer”の話も聞いてみたいと考えています。がんを暗く捉えることなく、明るく啓発もされていている団体なので、日本でもそういった考え方を取り入れられたら良いなと思っています」

 

がんノート以外にも領域を広げてご活動されている岸田さん。

記事に書ききれないほどたくさんお話していただきました。岸田さんのもとに人やお仕事が集まるのは、岸田さんの持つポジティブな考え方や笑顔がきっかけであると強く感じ、がん経験者ではなくとも、笑顔を忘れずに過ごすことは大切であると再認識させられる時間でした。

岸田さん、ありがとうございました。

 

cococolorでは引き続きがんに関する課題やAYA世代の方特有の課題について考える取り組みを行っていきます。

 

※AYA世代: 15歳-30代の人を指す言葉。がんの分野ではその年齢にがんを発症した方を指す場合が多い。

取材・文: 石田温香
Reporting and Statement: harukaishida

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