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Sep.

2021

interview
29 Jan. 2021

【しつけって必要?お受験は?】子育ての不安を読み解く!保育士おとーちゃん須賀義一先生にきいた「現代の子育てのあり方」vol.2

國富友希愛
コミュニケーション・プランナー
國富友希愛

こどもプロジェクトでは保育士おとーちゃんこと須賀義一先生に子育てについてのインタビューをさせていただき、現代の子育てを支えるメンタリティや方法論を教えて頂きました。子育て中の方にも、これから子育てと向き合おうとしている方にもぜひ多くの方に読んでいただきたいです。全2回でお送りします。

▼前篇はこちら

https://cococolor.jp/hoikushioto-chan.vol1

 

■子育ての三本の柱をもつ

(須賀先生)子育ての不安の本質は「先が見えない不安」ですよね。先の見えなさを解決するときに、子どもに到達点をもたせることでその不安がやわらぐことがあります。その到達点というのはお受験だったり、早期教育だったりします。そこで得たいのは、子どものより良い将来のために、というのもありますが、親の不安を解消したいという気持ちではないでしょうか。もしも不安を和らげる援助があれば、この選択肢しかないという視野狭窄が減り、不安や心配を解消することができると思っています。先ほども述べましたが、その不安を解消できる人が保育士です。保育士は親のケアと子育て支援をメインストリームとして継続的に行うことができます。現代の子育てをする人は、子育てが密室化しているがゆえに不安心配が大きくなると思うのです。不安をこれ以上大きくしないためには視野を広げる必要があると思います。視野を広げ子育てに対する不安を和らげる手段とは【子育ての3本の柱】をもつことです。多くの方がご自身が子どもにアプローチする【親から子へのベクトル】が子育てだと思っています。「私がこどもに~する」「私が子どもを~する」という子育ては実は子育てのひと柱、一部分にすぎません。子育てにはそのベクトルだけでなく他にも2つの心強い味方がついています。 

二つ目の柱は【時間】です。時間は、親→子のアプローチと同じか以上の大きな力をもっています。子どもたちは放っておけば今できないことも加齢とともにできるようになるという事実があります。 

三つ目の柱は【環境】です。環境というのは人的環境や物的環境による経験も含みます。お友達が食べているのをみて自分も食べてみる。お友達がトイレに行っているのをみて行ってみたいと思う。親がそれを見せて行うのとは別の意味があります。親だと信頼関係・依存関係の上でやることになりますが、社会性の中でそれを経験することは同じことでも別の力があります。時間と環境によって子どもは成長します。自分が何かを直接施さなくても時間と環境によって子どもは伸びていけますつまり親であるあなただけが頑張らなくても良いということです。 

お子さんが外ではできることが家ではできないというご相談を受けることがありますが、家庭という安心した環境で、そこではやらなくていいという素の自分幼い自分を出せるというのはとても良いことです。その場合は、外でできている到達点に達しているので何も心配いらないとお伝えしています。さらに、今できなくても発達の個性がそれぞれあるのでできることが全てではありません。何かができるという到達点で子育ての不安を解消しようとする日本の子育ては、多くの場合「できる」に支配されているのかもしれません。できなくたっていいんだよという言葉は文言としてはあるけれど、子どもに関わる職業のプロフェッショナルでも実践の中でできている人はそう多くないんです。というのも、日本の子育ての形がそうなっているからなのです。できるに振り回される形の子育ては「私が、子どもの姿をつくるんだ、正しくするんだ」として捉えられます。一般に躾というものが、子育てだと考えられていますが「躾ける」というのは他動詞ですので、大人がこどもをあるべき姿にする、というのが躾の本質的な意味合いです。これでは大人に責任がかかってきます。【時間】や【環境】が手助けする子どもの素の成長ではなく、責任者である大人がこどもに対してどうアプローチするのかを問うのが躾です。 
 
■現在の「躾」の姿 とは

【あなたが あなたの責任で 今すぐ 子どもを 正しい姿にしなさい】 

これをワンフレーズごとに、指をつきつけるように自分に向かって言われるのが躾の本質ではないでしょうか。 躾には二つの方向があり、子どもと正しくするという方向と子どもの責任者に対して、たいていの場合親、しかもお母さんにその責任を問うような方向です。他罰的、強迫的な子育ての在り方が躾なのです。躾がもたらす誰かから後ろ指さされるのではという不安感から解放しないと、子育ては安定しにくいです。先ほどのフレーズの「今すぐ」が曲者です。子どもの成長において「今すぐ」は無理なのです。今すぐ結果を出さないといけないとなったら、色々なイレギュラーな方法を使わざるをえない。極端なのが体罰です。今すぐ子どもを正しい姿にしなければならないとプレッシャーをかけられた大人はそれをするために、ありとあらゆる方法を試すものの、結局は体罰を使わざるを得ない。体罰はよくないという価値観が浸透しているので、減りつつありますが、本質的には変わらないことが行われています。それは、叱る・怒る・注意するという否定のアプローチです。しかもかなり強い否定のアプローチです。これが自己肯定感を下げるのはある種必然なのだと思います。少しやさしくしたバージョンが、ごまかすことです。ごまかしには

・~したら、~してあげるよ。(買ってあげるよ、連れて行ってあげるよ) 

・~しないなら、~しないよ。(買ってあげないよ、連れて行ってあげないよ) 

というような、してあげるというバージョンと、してあげないというバージョンがあります。 叩いていなくても、子どもに強い条件つきの否定を投げかけることで、正しい姿を作り出そうというイレギュラーなアプローチは疎外のアプローチです。これは、人が嫌がることをつきつけて思い通りにしようとする行為です。つまりハラスメントなのです。日本の社会でハラスメントが山ほどあるのも、子育てと不可分、地続きなのかもしれません。当たり前に子育てだと思ってハラスメント行為をやってしまう躾の構造は、悪循環を生んでしまいます。躾という名のもとにそれがハラスメント行為になってしまえばそれは子どもの成長や家庭的な幸福を阻んでいるだけでなく、ゆくゆくは社会的なネガティブさをもたらしてしまいます。これをなんとかパラダイム転換したいな、というのは僕の目標です。 

 

■子育て×NOの言えなさ 

僕の著書では、子どもに否定を積み重ねない子育ての方法論をお伝えしています。叱らずに育てたいという気持ちは多くの人が持っているものの、現実で難しい理由の一つにNOの言えなさがあると思います。これが子育てのしんどさにもなります。他者にNOを言ってはいけないのではないかという現代人の特徴を、特に女性は強く持っています。女性が文化的なバイアスが相まって、NOを言わせてもらえないことが背景にあります。自分の意見や否定に類することを表明してはいけないという感覚は、我が子に対するときにも表れます。NOを言えないことは、子どものためにもなっていません。例えば、自分が疲れているとき、子どもにはそう言ってはいけないのではと思って、しんどいの我慢して子どもの相手をする。それで子どもが満足するかというと、そうそう満足しません。親の気持ちに敏感な子どもは、親が、我慢やうんざりした気持ちを隠して尽くすように相手をしても満たされないのです。子どもからすると、大好きなお母さんは不機嫌そうだ、肯定的な関わり方をしてほしいのに。という気持ちがダダをこねる行為で表現されます。堂々と、私は今日疲れています。私はその遊びは苦手です。と言っていいのです。ネガティブなスタンスの自己開示が現代の人は下手なのかもしれませんが、それによって信頼関係は壊れません。同時にポジティブな自己開示もしましょう。これ美味しいね。私はこれが好き。私はこう思う。といったポジティブな自己開示と共に、必要なときにはネガティブな自己開示をして、NOが出せるようになると、子どものNOが怖くなくなります。イヤイヤ期という言葉がありますが、子どもにNOを言われたときにどうしようという親のおろおろ感が子育ての難しさの一因です。先ほど、ごまかしの話をしましたが、ここでも下手からでてNOを言わせないように「NOを言わなかったらアイスを買ってあげる」とごまかし、ごねの表面的なところで解決して本質的には解決しませんときには子どもが、自分が出した要求が叶えられないという葛藤を経験すること必要です。子ども成長のために葛藤を経験して、それを乗り越えていくプロセスを経験できないと依存が強くなってしまい、子どもが大きくなるにつれてしんどさが増してしまいます。適切な葛藤を必要な分だけすることが大切で“私が葛藤をさせる”とかではなくて、大人が正直な気持ちや恐れずにNOを出していれば学べます。NOは言っていいのです。NOを出してみて、うまくいかないこともあるでしょう。そのときはそこで考えればいい。解決法は【NOの上に対話を積み重ねる】ことで見つけられます。 NOを言うことが難しいという方は、子育てを頑張らなくてはと思う前に、くつろぐことから始めてみるといいです。くつろぐとは、つまり無理のない自分の姿を取り戻すことです。それは同時に、小さいかもしれないけれど、ある種の自己実現になっています。例えば歌を歌うささやかですが自己表現です。だまされたと思ってやってみてください。子どもの姿が変わっていきます。くつろぐことと自己表現によって、べき論でない子育て、無理のない方法を模索していきたいです。自己実現や自己表現をできる大人を見て育つ子どもは、今よりも生きやすい大人になるのではないでしょうか。 

(國富)正直な姿で関わり、子どもと対立することを恐れないで、対話することを疎かにしないようにしたいと思います。 

(須賀先生)世の中には、マクロなところから社会を変えられる人もいるし、ミクロなところから社会や生活をよくする人もいますよね。たとえば、我が子でもいいんです。人を差別しないということを教えるとか、ジェンダー観をアップデートしていくとか、自己実現の追求と対話の積み重ねによって、子育てが、よりよい社会構築につながっていくのではないかと思います。 

 

■子育て×SNS 

(國富)SNSや子育てをググること、スマホを子どもに与えることは、子育てに良いと思いますか? 

(須賀先生)現代の子育てのネックになっているのは孤立です。孤立を防ぐのがとっても重要で、そのためには人が関わるしかない。さまざまな状況下でリアルな人とは関わりにくいのでSNSで人との関わりがもてることはすごく力になると思います。SNSはプラスになっていると思います。TwitterなどのSNSがあることで、子育てで行き詰ったときに救われている方がいると思います。一方で情、報過多になってしまいますよね。たくさんの情報を得て混乱したりより不安が大きくなってしまうというのは大きな問題だと思います。解決策があるわけではありませんが、しんどいときは見ないで離れることが必要かもしれません。子どもに対してスマホを持たせるか否かという問題は遥か昔から形を変えてずっと議論されてきました。テレビが家庭に入ってきたときから、テレビ育児はいいのか?ビデオ育児はいいのか?DVD育児はいいのか?モバイル育児はいいのか?と大きくなっています。よくないことだから見せてはいけないというスタンスは、私はとっていません。なぜなら子育ての状況は人それぞれだからです。仮に動画をずっと見させ続けることで子どもにネガティブな影響がでることがあるとしても、子育てが密室状態で行われるときに、それしかとる手段がない状況下でスマホはダメ、というは苦しんでいる人に鞭打つようなことかもしれません。一般論としては過剰に頼ってはいけない、と思いつつも、個別には一息つけるのであれば必要なことだからそれで乗り切ってしまうことも良いと思うとお伝えしています。子育てが密室化している状況は、有史が始まって以来のことなのではないでしょうか。たったひとりの人がワンオペで育児していることは、昔はなかったのではないでしょうか。これまでにない形の子育ての状況に現代の人々は置かれています。こうした中でSNSやスマホを利用するのは必然的なことかと思います。親は~をするべき、~しないべきという情報がたくさんありますが、子どもは、あるべき母親、あるべき父親、あるべき家族といった理想像ではなくて、身近な信頼する大人をみています。それがどんな形であれ、子どもは親が大好きで、常に親を肯定したいと思っています。べき論を子どもはそもそも持っていません。親が持っているだけなのです。繰り返しますが、育児に大切なものは親も子どもも同時に自己実現していくことです。僕はいい学校に子どもを行かせる方法は知りませんが、子どもを幸せにする方法は、知っています。それは自己実現をしている幸せな人を見て育つことです。家庭って居心地がいいなあ、安心できるなあ、ここにいるとくつろげるなあ、子ども自身がそれを幼少期に経験すること、家庭的な幸福感を子どもが経験することや、自己実現している親を見て適切な自他境界を持ち、わたしも自己実現、あなたも自己実現というスタンスを身に着けることが大切です。これからも、ひとりひとりの保護者の方と対話をしながら、ミクロな方法で、世の中とつながっていきたいと思っています。 

 

 

須賀先生、ありがとうございました。自分自身の経験や子育ての不安をずばり言い当てられ、その不安を解決する方法論やお言葉に、インタビュー中にも拘わらず感激し涙がでてしまいました。これからも子育てをする中で、先生の言葉をときおり思い出し、自分を見つめながら子育てを楽しみたいと思います。

 

■須賀義一氏プロフィール

子育てアドバイザー/保育士。大学時代はドイツ哲学を専攻。人間に携わる仕事を志し保育士になる。
子育てのポイントや育児相談。保育士としての知識、主夫として子育てした経験を綴ったブログ『保育士おとーちゃんの子育て日記』が人気を博す。
著書に『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』『保育士おとーちゃんの「心がラクになる子育て」』(PHP研究所)がある。現在は子育て講演や座談会、保育研修・監修、コラム執筆等をしている。個別の育児相談や講演依頼はブログ内リンク先のホームページより受付。

ブログ:http://hoikushipapa.jp/

ホームページ: https://hoikushioto-chan.jimdofree.com/

Twitter :@hoikushioto

 

取材・文: 國富友希愛
Reporting and Statement: yukiekunitomi

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