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Apr.

2024

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20 Aug. 2021

「後悔のない自分らしい人生の築き方」~今どき高校生の想いに迫る~

中曽根彩華
統合マーケティングプロデューサー
中曽根彩華

日本には小学校6年生~高校1年生までの女子を対象に、子宮頸がんの予防としてHPV(ヒト・パピローマウイルス)ワクチンを無料で接種できる制度が整っている。

しかし、2013年に制度が整っているが、副作用の可能性が報道された影響でワクチン接種は『積極的勧奨中止』となった。

あれから8年。ワクチンと副反応の関係は否定されているが、世間のイメージが変わった様子は見られない。

そんな中、子宮頸がんの予防と早期発見のため活動をしている

品川女子学院「Lumiere」(遠藤咲幸さん、工藤真菜さん、齊藤凜さん、森田朱音さん)に活動の想いを伺った。

 

■「Lumiere」誕生~子宮頸がんとの出会い~

【身近な社会課題を取り上げ、解決策まで考案する】課題解決型学習で、リーダーの遠藤さんを中心に4人は出会った。

社会課題のテーマの決め手となったのは工藤さんの実体験だ。

学校の出来事について会話していた母の言葉。

 

「そういえば、悩んでいるうちに無料接種期間が過ぎあなたにワクチンを打たせ損ねてしまった」

 

彼女は子宮頸がんも、子宮頸がんを予防できるワクチンがあることもここではじめて知った。

メンバーに話すと子宮頸がんをメンバーの3/4は知らなかった。

自分たちが無料接種対象であるにも関わらず、

「予防できる選択」を知らずに接種対象年齢を過ぎたことに強い違和感と後悔を覚えた。

 

自分たちにとって身近ながんであり、同様に「知らずに過ごしている中高生がいるのでは」と課題意識を持った。

そこで、当事者として「正しい情報が必要な人に届いていない」子宮頸がんと向き合うことに決めた。

 

■大人から教えられるのを待つのではなく私たちが伝えていく

世界の中でも、日本は子宮頸がんに対する意識が低い。

 出典:みんパピ!

彼女たちはこの原因を

①そもそも子宮頸がんを知らない

②国が接種を推奨していない 

※参考子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/pdf/leaflet_h25_6_01.pdf

③危険性が特に印象に残る形で報道されてしまった

この3点から、子宮頸がんの情報が隔たり、正しい知識が浸透していないと考えた。

 

まず、現状分析のために「校内の生徒(中学2年生~高校2年生)」「保護者」「医療関係者」「子宮頸がん罹患経験者」などにインタビューを行った。

そこで、子宮頸がんについて中高生のイメージが「怖い」からそもそも「知らない」に変化していることに気が付いた。

加えて、専門家から【中高生に伝える機会がない】と伝えられた。

 

この時、彼女たちの気持ちは確信へと変わった。

 

大人から教えられるのを待つのではなく、私たちが直接伝えていく』

 

「知った上で受けない」と「知らないで受けられなかった」では同じ“受けない”でも全く異なる。

子宮頸がんを自分事ととらえ、自分で接種を決断できる女子中高生を増やすために、「選択できるだけの知識を持つ」手段を考えた。

 

■「子宮頸がんかるた」の開発。~知識を平等に~

子宮頸がんについて同年代の中高生に知ってほしい。

そこで、授業用教材「子宮頸がんかるた」の開発に至った。

かるたであれば、誰もが楽しみながら平等に知識を得られる。

間違った情報にならないよう、医師にも監修してもらい修正を重ねた。

さらに、先生が授業に取り入れやすいよう授業キットも作成。

読み札に合わせ、授業で使える説明用スライドや詳細情報が載っているサイトへのQRコードの用意まで揃っている。

この教材を実際に品川女子学院の保健の授業で使用し、女子中高生が子宮頸がんについて考えるきっかけを作った。

女子中高生は、接種するには親の同意が必要である。

受けるか受けないか親と相談しやすいようリーフレットの作成も行い、

副作用などの報道から判断を恐れている「怖い」意識を持っている親に自分たちの選択が理解してもらえる環境作りにまで配慮している。

 

■【知らないを理由に後悔する社会をなくす】

彼女たちはワクチンの接種を推奨しているわけでは決してない。

予防を可能にするHPVワクチンのメリットデメリットを知った上で、当事者である自分たちが選択できる環境の創出を目指している。

そんな彼女たちに、この活動を通じて感じている将来像を聞いた。

 

  • 遠藤さん:この活動を通じ、社会問題の正誤がわからない中で、情報を見極める力を育むことができました。

また自分にとって医療分野は興味深く、意義あるものだと再認識したため将来は医療関係の職に就きたいと考えています。

この培った力を活用し正しい情報をもって、患者さんを支えていける人として活躍していきたいです。

 

  • 齊藤さん:この活動でワクチンについて知りました。

予防できることを知らずにがんになってしまったら、自分で選んだ道ではないため誰かを恨んでしまうかもしれません。だから自分で選択して生きていきたいと感じました。

大学では情報分析を学びたいと考えています。

多様な情報にあふれる情報を分析し、必要な人に届けることで「知らないで後悔する」を減らしていきたいです。

 

  • 森田さん:子宮頸がんについて調べ続けていく中で、

自分が興味を持ったものを調べる抜くことは楽しいと気が付きました。

将来やりたいことはまだ明確ではありませんが、伝え方には配慮しながら調べ抜いて「自分が信じたこと」を「自分の言葉」で発信し続けていきたいです。

 

  • 工藤さん:多様な意見がある中で、これは正しくてこれは間違っていると決めつけることはよくないと感じました。

進路(生物・物理)選択で時間をかけて悩んで、生物選択を決断した経験があります。

自分で悩んで選択したことなので物理に未練がないわけではないけれど、この選択に全く後悔はないです。

何より生物の勉強が本当に楽しくて。自分で決めるってことが、自分の人生においてすごく大切なことなんだと感じています。

 

人生は、計画通りにはいかないもの。

それを変化の激しい時代が加速させた。

現代の中高生が未来を生き抜き自分らしい人生を送れる大人へ成長するためには、

正しいとは限らない大人たちの偏見や独断で、彼女たちへ情報が閉ざされることがあってはならない。

大切な存在を守る行動が、不幸にすることに繋がっているかもしれないのだ。

 

何事も当事者とともに考え一緒に結論出していくコミュニケーションがこれからの社会では求められるのではないだろうか。

【知らないをなくし、自分で決断する】機会を提供することが、「後悔なく自分らしく楽しむ人生」に繋がる。

そんなことを彼女たちは教えてくれた。

 

これからの彼女たちの活躍に期待が止まらない。

    

取材・文: 中曽根彩華
Reporting and Statement: saikanakasone

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