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Sep.

2020

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7 Aug. 2020

「医療との偶然の出会いをデザイン|守本陽一氏」

川口真実
アソシエイト・メディア・プランナー
川口真実

街を歩いていたら屋台に遭遇。屋台ではコーヒーを配っていて、お話をしてみると、実は屋台をやっているのは医療従事者だった。

こんな、日常生活の中で医療との偶然の出会いをデザインしている医師がいます。守本陽一氏です。

「フラットな関係での対話」

 

先生と生徒、上司と部下、先輩と後輩…

何かの立場の上でコミュニケーションが行われていることがあります。

「立場があると、立場を気にして本音で話すことができない。」

「特に自分が弱い立場だとなおさら発言しにくい。」など感じたことはありませんか?

 

医療者と非医療者でもフラットな関係で対話ができないと感じている方も中にはいると思います。

しかし、その立場を一旦置いておいて、誰もがフラットに対話ができる関係をデザインしている守本氏にインタビューします。

 

 

 

――まず、どんな活動をしているか教えてください。

屋台を中心に広がる人の輪

 

 

月に1~2回くらい医療関係者が医療関係者であるということを出さずに移動式屋台を用いて、地域住民と即興的な対話を行う活動です。

例えば、商店街の道とかに屋台を出して、「なんなんだこの屋台…!この人たちは誰なんだ!」と興味をもって近寄って来てくれた人たちに、カフェとしてコーヒーを提供しつつ、お話するんです。

接点の始まりがコーヒーなので、フラットな関係の中で医療やその他のことも対話することができます。

 

 

 

――はじめての人とどうやって対話に繋がるのですか?

ドリッパーでコーヒーを淹れる時間を作っていて、その時間で「いまどこに向かうところだったんですか~?」とか、「いつやってるんですか?」とか質問してきてくれるので、そこから対話がはじまります。

ドリッパーで”コーヒーを淹れる時間”をあえてつくる

 

 

――それをやっていく中で健康のヒントとかもお伝えするんですか?

健康のヒントもお伝えすることもあります

お伝えすることもあるけど、主目的ではないです。ただコーヒー飲んでいくだけの人も大勢います。

 

――確かに街中に屋台があったら絶対気になりますね。先生が活動されている兵庫県豊岡市はどんなところなんですか?

どちらかといえば、地域コミュニティは希薄化しているし、マイノリティの方の受け皿も都会より多様ではないかなと思います。

マイノリティ!ダイバーシティ!というものを掲げて活動しているわけではないのですが、結果として、役に立ってるなぁと思うときがあります。

 

――この屋台はいつから取り組まれているんですか?

まだ大学生だった時に、クラウドファンディングでお金を集めてモバイル屋台を作りました。路上で作ることで地域の方も手伝ってくれたりしました。

そしてこの屋台で街中を練り歩いています。

屋台で街を練り歩く姿は人々の目を引く

 

 

コーヒーは物々交換で提供することが多いです。

その人っぽいものをもらえることで、会話のきっかけにもなります。

 

――あなたはどんな人?と聞かれても、なかなか、ありのままの自分を言葉だけで表現することは難しいなと日々感じています。物々交換からその人を紐解いていくことで、理解が深まっていくというのはコミュニケーションの新たな手法なのではないでしょうか。


――地域コミュニティづくりで意識していることは何ですか

 

地域のみなさんとつながることができる楽しい機会を作ることでしょうか。

季節にあった取り組みを行っています。春にはお花見会をしたり、お正月には路上で書初めをしたり、冬はこたつを路上に置いてみたりと、地域の方々との多様な接点をデザインしています。

みんなが楽しめることを第一優先で考えています。楽しいコミュニティじゃないと続かないと思います。続けるためにも楽しくをモットーにしています。

四季折々のシーンに溶け込む屋台

屋台では書き初めも!

 

――モバイル屋台の活動を通じて何か手ごたえを感じることはありますか?

モバイル屋台で地域の方と関わることによって、これまで病院の中にいた遠い存在の、医師や医療という存在が身近になっているのではないかなと感じています。

あとは、屋台がある意味「たまり場」になっていて、たまり場があることで人が集まってパブリックスペースができる。そこに医師や医療者がいることでマイノリティの方も安心して遊びに来てもらえていてよかったなと思っています。

※屋台を中心に、たまり場ができている

 

――これからやりたいことは何ですか

屋台でやっていることを、長期的に常設できる場を作ることができたら面白いかなって思っています。

 

――最後にひとことお願い致します。

最近の人は、みんな頑張っちゃう。頑張った自分はすごいんだけど、頑張ってない自分を受け入れてくれる場所があったらいいなと思います。例えば自分が認知症になったとしても、自分が認知症であることを隠しながら一生懸命やってる方もいらっしゃると思いますが、「認知症で忘れちゃうことも多いけど、この人のこうゆうところはいいよね!」とか「認知症になったからこそ、この人もっと面白くなったよね」とか。ありのままの自分を受け入れてくれる場所があると絶対楽だなと思いますし、僕自身もそんなコミュニティに救われてきたりしました。

一度決めたから、やり続けなければならないなんてことはないし、がんばり続けないといけないということもないです。がんばってても、がんばってなくても、いつでも受け入れてくれる仲間がいるといいですね。

守本氏(左)と筆者。過去のツーショットです!

 

――がんばり続けないといけないと、思い込んでいたため、守本氏の言葉に救われました。今日はお話を聞かせてくださりありがとうございました。

 

 

守本陽一氏

公立豊岡病院組合立出石医療センター総合診療科 医員 YATAI CAFE 店長

1993年、神奈川県生まれ、兵庫県出身。2018年医学部卒業後、公立豊岡病院での初期研修を経て、2020年より現職。総合診療専門研修プログラム専攻医。学生時代から医療者が屋台を引いて街中を練り歩くYATAI CAFE(モバイル屋台de健康カフェ)や地域診断といったケアとまちづくりに関する活動を兵庫県但馬地域で行う。現在も専門研修の傍ら、活動を継続中。また地域活動を行う医療者とまちづくり関係者をつなぐケアとまちづくり未来会議でも活動している。日本学生支援機構優秀学生顕彰優秀賞、ソトノバアワード2019審査員特別賞受賞。共著に「社会的処方 孤立という病を地域のつながりで治す方法」「ケアとまちづくり、ときどきアート」。

 

書籍紹介

「ケアとまちづくり、ときどきアート」

西智弘  著 / 守本陽一 著 / 藤岡聡子 著

http://www.chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=3236

取材・文: 川口真実
Reporting and Statement: mamikawaguchi

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