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Apr.

2024

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5 Sep. 2019

親とこどもと会社をつなぐ、[かいしゃぱーく・しおどめ」3年目

海東彩加
ソリューション・プランナー
海東彩加

いつも静かな電通ホールも、この日だけは違う。

入口の前を通るとキャッキャとにぎやかな声が聞こえ、一歩足を踏み入れるとホールの中をこどもたちが縦横無尽に走り回る姿が目に入る。

普段とは違う電通ホールでの様子にとまどいながらも、キラキラと目を輝かせながら遊びまわるこども達にみんな笑顔になっていた。

 

電通ホールで遊びまわるこどもたち

 

「かいしゃぱーく・しおどめ」は、夏休み中のこどもたちを会社に招き、朝から夕方まで、趣向を凝らした複数のワークショップを受けられるイベントだ。

子育てをしながら働くお父さんお母さん達がもっと働きやすくなるように、もっと育てやすくなるように。社員一人ひとりがもつ趣味や特技を活かせる場となるように。そしてこのイベントがなければ出会う事のなかった人が出会い、新たなイノベーションが起こせる場となるように。そして何よりも、電通で働く社員のこども達自身が育つこと、「子育て」をサポートできる会社になれるように。

そんなたくさんの思いを込めて、「かいしゃぱーく・しおどめ」は今年で3年目を迎えた。

 

働く親とそのこども達にとって、夏休みには悩みもある。親にはこどもと過ごせない罪悪感があるかもしれないし、こどもには親と一緒に過ごせない寂しさがあるかもしれない。

そんな夏休み期間中に親子で一緒に会社に行き、夏の思い出をつくれることは、親にとってもこどもにとっても大切な機会だ。

 

ワークを一緒に行う様子

 

親とこどもをつなぐことはもちろんのこと、電通らしい多種多様なワークショップを通してこどもたちに刺激的な育ちの機会が提供されるのも「かいしゃぱーく・しおどめ」の魅力の一つ。3回目となる今年も、様々な社員の協力を得て、9つの刺激的なプログラムが用意された。普段、学校や学童保育、習い事でも教えてもらえないような個性的なプログラムの数々に、こども達は常に全力で楽しみながら臨んでいた。

 

 

ワールドカップを楽しもう!「ラグビー体験」

個性豊かなプログラムの一部をご紹介しましょう。

今年はラグビーワルドカップの年。日頃触れる機会の少ないラグビーのルールを知り、実際に体験して、よりワールドカップを楽しんでもらえるようにと今年は電通ラグビー部によるラグビー体験を行った。こども達はこの時間を心待ちにしていたようで、始まる前から大はしゃぎ。初めて体験するものを前向きに楽しむこどもの能力は計り知れない。

チームに分かれてのキャッチボールではボールを落としたら罰ゲームがあったが、こども達は罰ゲームをも楽しんでいた。会社を遊び場にできるこどもたちにとって、罰ゲームを楽しむことは簡単なことなのかもしれない。

 

ラグビーボールをもって駆け回る!

罰ゲームのスタージャンプも楽しそう

チームでのキャッチボール

 

自分について考えて、深く知る「自分研究」

電通では近年、社員が自分の得意とすること、苦手とすることと向き合い、今後のキャリアをどうしていくか、など深く考える研修が導入されている。キャリアを考えるにはまず、長所や短所、大事に考えているものがなんなのか?など自分の感情や気持ち を十分理解し、表現することが大切だが、自分一人で考えていくのは難しい。

そんな経験を大人とこどもが一緒にできるようにと、日本マンパワーさんと電通のキャリア・デザイン局が手を組んで企画した、学校では教えてくれない“自分がどうしたいか”について考えるプログラムが「自分研究」だ。

今回は自分がどうしたいかを知るための一歩として、本当の自分を知るうえで必要なことのひとつ“自分の感情や気持ち“を知るためのワークを行った。

今回は「怒り」の感情がテーマ。3年生以上の高学年グループは、大人とこどもがペアになり、いつどんなときに怒りを感じたか、怒りを感じてどんな行動をとったか、何を大切にしたくて怒ってしまったのかをペアで話し合いながら、自分の感情と向き合っていく。

 

「怒り」を感じた瞬間について話している様子

怒りの奥にある自分が「大切にしたい想い」を言葉にしていく

低学年チームは感情を表現するグリッターボトルを作った

 

印象的だったのは、こどもに勉強を教えているといつも同じ間違いをされ、怒ってしまうというお父さん。初めのうちは怒る理由として教えていることを理解してもらいたい、そこから成長してほしいからと考えていたが、参加者と共に自分研究を深めていく中で、「同じ間違いをする」ことに怒りの反応が起きてもう1つの大切にしたいことである 「楽しみながら勉強をしたい」を見失っていたことに気づいたとのこと。

大人とこどもが対等に話し、自分の感情を知り、お互いの感情を知ることで親子の理解を深めることにつながったようだ。

 

ファミリーコンパス代表・渋谷聡子さんのファシリテーションで、どうしたら怒らずに勉強ができるか親子で話し合う

 

“こわい”の正体を暴く「こども哲学」

正解のない問いをみんなで考えるこども哲学。今回は「こわい」の正体はなんだろうというテーマだ。「こわい」の正体を考えるために、少しだけこわいアニメをみんなで観ることに。いままでの騒がしさが嘘のように、真剣にこわいアニメをみいっていた。

 

こわいアニメを真剣に観るこどもたち

 

ワークでは学年ごとに分かれて、こわいと思うものをカードに書き出してみる。お化け、殺人犯などというカードが増えていく中、自然災害や身近な人の死、AIと書かれたカードも置かれていた。

学年ごとにレベルは違っているものの、一人一人が「こわい」の正体を真剣に考えて、言語化している姿に、お父さんお母さんたちも感心していた。

 

こわいと思うものを書き出す

おばけやひぐまに並んで、ねんざというカードも

“こわい“ものについて楽しそうに話している

 

点字と手話は“たのしむもの”

来年のパラリンピックに向けて、ダイバーシティの理解を深め、コミュニケーションについて考えるために行われた新しい点字・手話のワークショップ。

点字を解読するクイズに、点字名刺づくり、手話での自己紹介などを行った。

真剣に、そしてとても楽しそうに点字を解読し、手話で伝えようとしているこども達。こども達にとって点字や手話は学ばなければいけないもの、知っておかなければいけないものではなく、楽しいもの、面白い秘密の暗号のひとつなのかもしれない。

 

点字名刺を作る様子

オリジナルのワニの点字イラストを作成!

手話で自己紹介をする様子

 

 

学生の皆さんにとっての、新しい「かいしゃ」訪問

 

第1回からこの「かいしゃぱーく・しおどめ」をサポートして頂き、もはやその存在なしでは実施が成り立たないほどの活躍をしていただいているのが、家族留学を事業展開している学生企業「manma」の皆さんとそのメンバーの大学生のみなさん。

今年も20名ほどの学生の皆さんが、2日間で述べ100人余りの元気いっぱいのこども達と一緒になって「かいしゃぱーく・しおどめ」に参加してくれ、頼れるお兄さん、お姉さんとしてこども達の面倒を見て頂きながら、「かいしゃぱーく・しおどめ」を楽しんで頂いた。

 

この取り組みは、核家族化が進み、働きながら子どもを育てるということのイメージを持つことが難しい学生の皆さんにとって、それをリアルに感じられる新たな会社見学の場としても機能しており、そしてそれは、企業としても真の姿を見て頂くことのできる他にない機会となっているのだ。

 

実際に、参加頂いた学生の皆さんとはこども達の面倒を見て頂く傍ら、社員を集めての座談会を実施している。

電通という企業に対する質問だけでなく、就職活動の仕方や、企業の見方選び方、これからの働き方や家族や家庭と仕事についての考え方に至るまで、社員とのざっくばらんな座談会は毎回盛り上がりを見せている。

こうしたWIN-WINの施策として機能させることによって、毎年多くの学生の皆さんにご協力いただくことが出来ている。

 

 

パパの会社ってかっこいいね!

 

今回「かいしゃぱーく・しおどめ」に参加して、目的である「育てる」と「働く」を近づけることはお父さんお母さんだけでなく、こども達にとってもいいことなのかもしれないと感じた。いつも自分を置いて会社に出かけて行って、帰ってきたら疲れた様子をみているこどもからしたら、会社は悪の組織そのものなのかもしれない。実際にお父さんお母さんの会社に一緒に行くことで、こどもと会社の距離も大きく近づいたように思う。

 

電通ホールを後にしようと外に出ると、「パパの会社ってかっこいいね~!」という声が聞こえた。こども達にとって、いつもお父さんお母さんを奪っていく悪の組織“かいしゃ”が、今回のイベントを機にかっこいい場所になったのかもしれない。

 

お父さんと過ごせる時間に嬉しそうにしている

 

いち新入社員の私としては、いつもバリバリ働く先輩社員がこどもに向ける優しい笑顔や育児に悩んでいる姿を見られることが新鮮だった。そしてこれからの人生で働きながら育てることに対するイメージも少し湧いたように思う。親とこどものためだけではなく、若手社員や祖父母社員、他の会社の人や地域の人まで。これからもっとあらゆる立場の人たちが関わっていくような企画になっていったらいいなと思う。

取材・文: 海東彩加
Reporting and Statement: ayakakaito

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